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『LOVE LETTERS』って何??③

息切れカメレオン #4 リーディング公演『ラヴ・レターズ』の上演に先駆け、本公演で演出を務める井藤秀哉による作品解説を3日連続でお届けします💌


『LOVE LETTERS』って何??③(時代背景) 

物語概要や作者の情報などは正直な話、現代文明の発明であるネットにカタカタ打ち込めばいくらでも出てきます。せっかくこのノートを第3弾まで見てくださっている方の体験価値を下げないためにも、ここから先は2人が生きた時代や背景を少し説明しようと思います。決して知らなければ物語を理解できないわけではありません。しかし、皆さんにより『LOVE LETTERS』の言葉が届く一助となるかもしれません。 


 今回は、劇中でも少しだけ触れられWASP(ワスプ)について説明したいと思います。 

 WASPというのはホワイト・アングロ=サクソン・プロテスタント(White Angro-Saxon Protestant)のことです。

 なんのことやら?という感じだと思います。
簡単にいうと、アメリカにいるイギリス系の白人の人たちのことです。大事なことはこの人たちの先祖が17世紀にアメリカに移住し、その後白人優位の国家を作り上げ、上流階級となった人々だということです。

 いろーんなことをすっ飛ばすと、彼らはヨーロッパ(特にイギリス)を追われて、新たな自分たちの国を作ろうとしました。現在のアメリカ北東部に着き、そこを拠点に原住民を追いやり、居住区をどんどん広げていきました。そうして、白人が原住民や黒人奴隷を治める、白人国家を建国しようとしたのです。 (劇中に出てくるほとんどの地名が北部の都市の名前で、WASPという一つの属性が物語全体に影響を与えていることが見て取れます。作者のA.R.ガーニーは他にもこのWASPの暮らしに関する作品が多くあります) 
 
 WASPは人種や民族、宗教ではありません。例えばユダヤ教やイスラム教といった特定の種族ではないのです。(元を辿ると宗教であり民族ですが、ここでは詳細を割愛します) 白人の国家を作ろうと、段々と品行方正が整い、一つの民族のような振る舞いをしています。

 だから、統一的な教典や教えのようなものはないものの、名のつくまでのグループになったわけです。アンディとメリッサにその様子は良く表れています。2人は同じWASPであり、上流階級でありながら、その性格はもちろん、実際の行動までまさに異なる。個性や性格は往々にして個人差が出るというものですが、実はそれでは説明しきれない大きな価値観の差があります。
 
 しかし、過度な説明は己の墓穴を掘るだけ、あとは本作を見て楽しんでいただきたいです。知識でなくとも、見て感じていただく2人の違いこそが、お互いを想う言葉の数々に繋がると思っています。


 『LOVE LETTERS』について、3回に渡り作品紹介や公演の特徴をお届けいたしました。ここまで冗長な筆者の拙文をお読みいただき、誠にありがとうございました。
 
 幾度となく述べていますが、公演にて皆様に手紙だから感じられる大切な言葉の数々を届けられる日を、待ち遠しく思います。
 皆様のご来場をお待ちしております。


※今回説明したアメリカの歴史的背景や時代、価値観は筆者の裁量で定めた範囲での記述であり、学問的な正しさを保証するものではなく、また様々な仮説を否定するものでもありません。

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