福井の猫寺に行ったのに大阪で猫をもらってきた話
福井県越前市庄田町にある御誕生寺。
ここでは数十匹の捨て猫や傷病猫を保護され飼育されていて北陸の猫好きの中では有名な寺だった。
https://youtu.be/iCXUcphWeuE
多いときは80匹今でも数十匹が生活していて、猫の保護・飼育は住職や修行僧の尽力、檀家や猫愛好家などの参拝者の篤志等で賄われています。
この寺のすごいところは、数十匹の捨てられた猫たちに新しい家族と縁を繋いだ、本当の意味での縁寺だったことです。
どうしても一度は尋ねてみたかったので一泊二日で友人と参拝に行くことに。
おりしも台風21号が迫りくる中、台風に向かってドライブする我々に「正気か? 台風に向かっていくんだぞ?」と何度も止めるそれぞの家族たち。
なんとかなるだろうと横殴りの風が吹く中、福井県へ向かう無謀な私たち。
幸いなことに寺にたどり着いた時、風も雨も小康状態だった。
ちょうどご飯時だったらしく、雨樋をうまく使った容器にざらざらとキャットフードが注がれていく。
わらわらと寄ってくる猫達。
ちゃんと整列して食べる行儀の良さ
すると、一匹ひょいと抱かれてどこかへ連れていかれる。
この寺で今も残っているのは病気などで治療を受けている保護猫達でご飯時になると集まるので順次捕まってはお薬を投与されていた。
「うまいこと考えたな」
思わず感心する。
ご飯を食べる黒猫を見て思い出す。
「そういえば、次男が黒い猫飼いたいね。っていうんだよねー」
何気に言った私の一言に、友人はまるで準備していたかのようにスマホを取り出す。
「そういえばりかさん。黒いスコティッシュフォールドが里親募集に出てて」
ペットのおうちサイトを初めて見る私。
そこにはピンボケなのか黒い猫だからなのか、さっぱりよくわからない黒い塊の画像が。
「黒猫って写真写り悪いんですよ~。実物きっとかわいいですよ! 大阪ですし、ここからなら近いですよ? せっかくだから見ていきましょうよ??」
「まて。ここは福井で大阪は近くない」
止める私。行かねばならんと引き下がらない友人。
「りかさんっ! 見るだけです!!」
怪しい。この見るだけは絶対に怪しい。
絶対やばいやつだ。
しかも、自分で飼うわけではない。
明らかに私に飼わせる気だ!
案の定、夜になっても大阪へ行こう、行かないの攻防戦。
この友人一度言い出したら絶対引き下がらない。
10年ほどの付き合いで、私もそれをよく知っていた。
横目でニュースを盗み見る。激しい豪風で高速道路は規制中。
いくら何でも、この豪風の中で大阪へいくとは言うまい。
「わかった。見るだけだよ。でも、台風で道路規制されてるから、もし解除されなかったら帰ろう」と説き伏せた。
台風21号 災害状況
死者8名、負傷者215名
住家全壊5棟、半壊15棟、一部損壊630棟
床上浸水2,456棟、床下浸水3,426棟など
(消防白書より)
早朝のニュースでは高速道路は全面通行止め。
しめしめ、これであきらめるだろう。
そんな私の思惑なんて、この友人に通じるわけがなかった。
スマホで交通情報を収集する友人。
「あ、りかさん。米原まで開通してます! とりあえず行きましょう」
いそいそと支度を始める。
そうこうしているうちに高速道路は全面開通し、大阪への道筋は確保されてしまう。
困ったな。
確かに保護猫を引き取ろうとは常々家族と話していた。
我が家には既に2匹の保護猫がいて3匹目は自分の年齢的にも最後の保護猫になるだろうと慎重に選んでいたのだ。
スコティッシュはかわいい。
私でなくても他に引く手あまただから、うちは雑種でいい。そう思っていた私の意向は全部無視してどんどん押し進めていく友人。
大阪で落ちあい、初めて見る黒い小さな子猫
「きゃー。この子白ビキニですよ、りかさん!」
歓声を上げる友人。
「結膜炎で両目空いてなかったんです。目はもしかしたらだめかもしれないって諦めてたんですけど、パッチリおめめになって~」
説明してくれる保護団体さん。
いろいろ聞いていくうちに、これは商品にならないとブリーダーさんが判断したってことだよな。
そうなると結構医療費なんかかかるだろうな・・・。
うちは夫はお家猫には大変甘い。溺愛型夫。
多少猫にお金がかかっても、文句を言うどころかお金を用意してくる。家のことはさっぱりしないがそこだけは理解のある夫だった。
純血種は飼わない予定だったけど引き取ろうか。
今思い返せば、大した意気込みもなくしかも遠方からきた得体のしれない二人組。
「福井まで来てたから足伸ばしてきたんです~」
なんて頭の悪い発言でしょう・・・・。
こんなバカげた発言が飛びかうなか得体の知れない私に大事に看病して育てた子を、よく譲渡してくださったと思います。
「良いんですか私みたいなので? スコティッシュならもっといい里親さんが見つかると思うんですが?」
この時保護団体さんの言われた言葉を今でも忘れません。
「一番かわいいときに一番いい里親さんを見つけてあげるのが私たちの仕事なんです」
一番かわいいときに手放す気持ちは計り知れません。
我が家にやってきたこの黒い小さな生き物。
オトナ猫は戸惑い遠巻きに。
本人も戸惑い、テーブルの下に隠れて出てこない。
帰宅した夫。
家のどこかで「キッ」「キッ」と何の生き物かわからいが明らかに鳴き声が。
探し回るが隠れていて見つからない。
カーテンを引き、固まる。
黒い、ね・・・こ・・・・・のような生き物?
明らかになにが目の前にいるのかわからない様子。
とりあえず助け舟を出してみる。
「あ〜。大阪でさぁ、猫引き取ってきちゃった」
「お・お・さ・か・・・・・・?」
記憶を辿るように考える
「おまえ、福井行ったんじゃなかったんかい?」
「諸事情で、大阪にいったんよ」
どうしても理解できないと言うふうに夫は尋ねる。
「福井行かずに大阪行ったのか?」
いえいえ、福井へいって大阪に行ったんですよ。
「福井で猫を貰ってくるならわかる。なぜ大阪?」
夫の疑問は最もだ。
こうして我が家に初めての黒猫がやってきたのだ。
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