業界としての粗利の考え方〜EC業界では粗利の概念がバラバラなので俺が規格を作ってみた〜
どうも、EC業界歴10年以上のいけぞーです。
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「うちは粗利率○%あるんで余裕っすよ!」とか、「粗利が思ったより伸びない…」なんて話、みなさん一度は聞いたことありますよね。でも実は、EC業界って“粗利”の定義がバラバラなんですよ。仕入れコストだけ引いた数字を「粗利」って呼んでる人もいれば、配送費や手数料を込み込みで考えてる人もいる。すると、比べようとしても「どっちが正しいの?」ってなるじゃないですか。
そこで今日は、「EC業界での粗利はこう定義しよう!」という俺なりの規格を作ってみました。
年商1〜5億円くらいで「もうそろそろちゃんと経営学んだ方がいいかな」と思い始めてる社長さんたちに向けて、ざっくり解説していくんで、ぜひ参考にしてみてください。
1. そもそも粗利ってなんだ?
まずは基本的な話から。
「粗利(売上総利益)」といったら、「売上高 − 売上原価」のことです。原価というのは、商品の仕入れ価格とか製造コストなど、要は「商品を売るために直接かかった費用」。でもECの場合、ここに「送料」とか「決済手数料」、「プラットフォーム使用料」なんかも絡んでくるからややこしい。
仕入れだけを引いた数字を“粗利”と呼ぶ人
仕入れ+外注費(FBA代行とか)+配送コストを引いた数字を“粗利”と呼ぶ人
決済手数料は含む? 含まない?
これを各社バラバラでやってるから、「うち粗利高いっすよ」→「なんでそんなに高いの?」→「あれ、計算方式違うじゃん…」って話が結構多いんですよね。
2. EC業界の“粗利バラバラ問題”とその影響
2-1. 比較ができない
たとえば、A社とB社が同じ商材を売っていて、「うちは粗利率30%、うちは40%」って言ってても、計算方法が違うかもしれない。
A社は「仕入れ価格だけを売上から引いてる」
B社は「仕入れ+配送料+梱包資材+決済手数料」を引いてる
そりゃパッと見の数字は違ってきますよね。すると、業界の平均がどうとか、同業他社との比較がどうとか、指標としての信頼性が下がるわけです。
2-2. 経営判断を誤りやすい
「粗利が高いからまだ余裕あるな」と思ってガンガン広告費を投下したら、実は配送費や手数料がかさんで本当の利益はスレスレだった…なんてことも。
ECって、商品が売れるほど物流コストや広告費が増える側面があるから、“実質的な”粗利率をつかめてないと、あっという間に資金繰りが苦しくなるかもしれません。
この実質的な粗利率をつかむためにも管理会計を導入しましょう。
関連記事>管理会計とは?
3. 俺が提案する“ECの粗利規格”
というわけで、俺なりに「これを“粗利”と呼ぼう!」という指標を作ってみました。
大前提として、どんな費用を「売上原価」と捉えるかをハッキリさせようということです。
3-1. 絶対に含めたいコスト
仕入れコスト(商品そのものの価格)
仕入れに付随する費用(関税、日本に入れる輸送費など)
外部物流費(FBAや外部倉庫へ支払う入出荷コスト)
梱包資材費(資材の棚卸もしてかかったコスト算出)
配送費(自社発送の送料や宅配業者への支払い、FBAやRSL料金)
決済手数料(クレカ、コンビニ払い、各種決済手数料)
プラットフォーム手数料(モール出店料、システム利用料など)
広告費(アフィリエイトなどの成果が直結や予算されているもの)
3-2. いったん計算式
つまり、
粗利 = 売上 ー 売上原価
↓
粗利 = 売上 ー (仕入れコスト+仕入れに付随する費用+外部物流費用+梱包資材費+配送費+決済手数料+プラットフォーム手数料+広告費)
となる。
3-3.わかりやすくします
まずは3つの分類項目の言葉の意味を明確にしましょう。
商品原価→商品をお客様へ販売できる状態にするまでの費用
配送料→商品をお客様のところに安全に届けるための費用
手数料→商品を販売するために利用した外部サービスの費用
これをもとにさらにかみ砕いていきます。
【商品原価】の解説
仕入れコスト(商品そのものの価格)
↓
ここは明確ですね。仕入れた金額を入力しましょう。
仕入れに付随する費用(関税、日本に入れる輸送費など)
↓
仕入れたときに送料がかかっていたら当然そこも追加します。
中国輸入などで仕入れたタイミングで関税、消費税も支払うのでそこも原価に追加していきます。
商品を化粧箱に入れたり説明書を入れる、シュリンクラップするなどの費用もここに入れるべきです。
【配送料】の解説
外部物流費(FBA含む外部倉庫へ支払う入出荷、送料コスト)
↓
外部に委託している場合には追加しましょう。
梱包資材費(資材の棚卸もしてかかったコスト算出)
↓
厳密にやるなら棚卸をしてから費用に入れたほうが良いです。
配送費(自社発送の送料や宅配業者への支払い)
↓
FBAへの納品時の送料や自己配のときの送料を入れ込みます。
関連記事>棚卸
【手数料】の解説
決済手数料(クレカ、コンビニ払い、各種決済手数料)
↓
Amazonなどのプラットフォームだけで販売している人には出てこないかも
プラットフォーム手数料(モール出店料、システム利用料など)
↓
Amazon、楽天などの販売手数料、出店料、強制的に付けられる手数料など
広告費(アフィリエイトなどの成果が直結や予算されているもの)
↓
ここは判断が分かれるところですが、
弊社だと「原価広告費」と「販管費広告費」を分けて計上して経営判断の指標として分かりやすくしています。
4. ECの“粗利”を定義したらどう変わる?
4-1. 本当の利益体質が見える
上で定義したように、仕入れ〜配送にかかるコストを全部“売上原価”に入れれば、「実際に1個売れた時にいくら手元に残るか」がより正確に把握できます。そこに販管費(広告費や人件費など)をかけたらどうなるかも、数字で考えやすい。
「なるほど、うちは“商品単価×客数”は悪くないのに、決済手数料と配送料でガッツリ抜かれてたんだな…」って気づけば、広告予算を調整したり、梱包・配送体制を見直すなどの戦略も立てやすくなりますよね。
4-2. 他社比較がしやすくなる
この方式を業界で広めていけば、少なくとも“仕入れと配送周りは原価として必ず入れましょう”というのが共通認識になる。すると、「あの会社は粗利率35%、こっちは28%」みたいに、似た基準で比較できるようになるわけですよ。
もちろん、完全に同じにはならないかもしれないけど、「粗利率が違うのは配送費の設定が違うからか」みたいに、ズレの原因をピンポイントで把握しやすくなるはず。
5. とはいえ、全部を正確に把握するのは大変
ここで正直な話、「じゃあ全部のコストを逐一追っかけられるの?」って疑問が出ますよね。
小規模ECなら手計算やエクセルでも頑張れるかもしれない
SKUが増えたり、モールを複数使ってたりするとめちゃくちゃめんどくさい
でも、大丈夫。最初はざっくりでいいんですよ。
6. 他にも知っておいた方が良いもの
「EC事業者のための月次・四半期決算のポイント」
粗利だけじゃなく、毎月・四半期で数字を振り返ると経営のPDCAが回りやすい。「小さなEC事業者が実践する在庫管理術」
粗利を高めるには、在庫の仕入れや回転率も超重要。在庫がダブつくとコストが上がる一方なので要チェック。
「自己資本比率を高める財務戦略」
粗利を残す→利益を蓄える→自己資本比率が上がる→会社の安全度と攻めの余力UP、という好循環を作れる。「管理会計とは?」
仕入れコストや配送費をどのように商品別・販路別に割り振るか、自由度が高い管理会計の考え方もぜひ合わせて学んでみてください。
7. まとめ:「売上ー(商品原価+配送料+手数料)」でECの粗利を算出する
というわけで、俺が提案する「EC業界の粗利規格」は、ざっくりこんな感じでした。
これをベースにすれば、自分の会社が「本当に儲かっている商品や販路」が見えやすくなるし、数字の比較もしやすくなるはずです。もちろん、事業によって若干違いはあるだろうけど、まずはこの基準を軸に自社の指標を作ってみてください。
もし「うちは物流費や決済手数料がよくわからなくて、どれだけ引くべきかわからない…」とか「粗利率高いと思ってたら実は低かった」みたいな悩みがあれば、当社のコンサルティングや物流代行も検討してみてください。EC物販から物流運用まで幅広くやってるんで、数字を整理して“正しい粗利”を掴むお手伝いができると思います。
ECで稼いでいくうえで、やっぱり“ちゃんとした”粗利の計算ってめちゃ大事。ここがあやふやだと、どれだけ売上が伸びても「え、全然お金が残ってない…」ってなるからね。
ぜひ今日の話をヒントに、自社の数字をもう一度洗い直してみてください!また次回の記事でお会いしましょう。お疲れさまでした!