プール注水の止め忘れ (第4回) 起こった際への備えは「教職員賠償責任保険」が有効
2015年に千葉市で起こったプール注水の止め忘れ(以下、プール溢水といいます)では、水道代438万円を教諭、教頭、校長が3分の1ずつ弁済したそうです。ひとり146万円の重い負担、私は保険で対応したのでは?と思いました。
教職員賠償責任保険(以下、教職員賠責)は、業務に起因した事故により教職員が法律上の損害賠償責任を負担する場合に保険金が支払われます。東京都教職員組合の例(*1)では、損害賠償金および争訟費用の上限が1億円で、年間掛金(保険料)は年間6,300円です。1か月あたり525円、1日あたり約17円です。これで完璧と思われる対策を実行しても、事故をなくすことはできません。
リスクマネジメントの観点からは、プール溢水のリスクは「事故頻度は低く、予想損害額は大きい」に分類され、「リスクの転嫁」で対応するのがセオリーです。この場合の「リスクの転嫁」は教職員が保険に加入する、業務を外部発注する、などが考えられます。一番現実的な対応は、教職員賠責への加入でしょう。
プール溢水に限らず、教職員には過失による賠償リスクがあります。生徒にけがをさせてしまったり、卒業アルバムの校正ミスによる再印刷費用がかかったり。学校(自治体)が費用を負担するケースもあるでしょうが、「私たちの税金を使うのか」との市民の声もあります。教職員賠責は、教職員が安心して働くのに有効な保険です。
教職員に教職員賠責への加入を強制することはできませんが、学校は教職員個人に賠償リスクがあることを周知して教職員賠責への加入を勧奨すること、加入しない場合は確認書を取る、という対応が考えられます。
プール溢水事故が無くなるといいのですが、起こってしまい教職員個人が水道代を請求された際には保険でスムーズに対応できるようになることを願っています。
*1 東京都教職員組合 教職員賠償責任保険 https://bit.ly/4cwcmIm
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