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(2)最初期は自社ドメインと関係がなくとも、得意分野でマネタイズをする(シード期)

スタートアップ「シード期」の2つ目の記事です。
※シード期:一般的には「アイデアがあるが起業前」または「アイデアはあるが具体的な製品サービスがない段階」を意味します。

今回の記事は、課題(2)「最初期は自社ドメインと関係がなくとも、得意分野でマネタイズをする」です。

課題2自社ドメインと関係ないマネタイズ


①「自社がやりたいこと」でのマネタイズは容易ではない

株式会社エデュ・ファクトリー(アルー)は、創業をした時点では具体的な事業アイデアが固まっていませんでした。

その時点で決まっていたのは「教育関係のビジネスを通じて、社会の問題を解決する」という大まかな事業ドメインに関する方針だけでした。自社プロダクトと呼べる物も存在しておりませんでした。

多くのスタートアップにおいては創業の時点で、プロダクト事業アイデアや、プロトタイプまで開発を進めていることかと思います。しかし、こうした場合でも創業直後の「プロダクトプロタイプ(初期版)」は、顧客の課題解決に役立つレベルのものではないケースの方が多いかと思います。

当社の場合でもそうでしたが、多くのスタートアップのケースでも、創業直後は「自社がやりたいこと」をお客様が評価して買っていただけることはなかなかありません。

そこで多くのスタートアップ企業は、自社ドメインと直接つながらない仕事でマネタイズを行うということが多くあります。


②コンサルティングの下請け案件でお金を稼ぐ

当社の創業メンバー(代表の落合さん、「無敗営業」高橋さん、そして私)は全員、外資系戦略コンサルティングファームに新卒で入社をいたしました。在籍期間は3年弱と短いものでしたが、その間にコンサルタントとしての基本動作を徹底的に叩き込まれました。

若手コンサルタントとしての経験やスキルを評価していただき、コンサルティング会社様や独立個人コンサルタントの方が当社の最初のお客様となっていただきました。

コンサルティング会社様の受託した顧客向け案件の「下請け」として、当社にコンサルティングの仕事をお任せいただきました。

私たちは、独立をして自らコンサルティング会社を立ち上げたかったわけではありません。教育分野の仕事をするために会社を作ったのですが、私たちが取り組みたいと考える教育分野の仕事に対する知識・経験・スキルは一切ありませんでした。

当然、その状態では教育分野のニーズを持っているお客様の期待に応えることができず、仕事をお任せいただくことも出来ない状態でした。

私たちはまずお金を稼ぐために、自社ドメインとは異なるコンサルティングの仕事に取り組みました。


余談ですが、アルー株式会社は現在企業向け研修サービスを提供する中で、プロ講師の方とパートナーシップ関係を構築し、当社が獲得した研修案件に講師として登壇いただいております。

このプロ講師の方の中には、創業間もないスタートアップ起業家の方もいらっしゃいます。私自身が創業当初コンサルティングの仕事でマネタイズをしたのと同様に、研修講師業で創業初期のマネタイズをされているケースも多くあります。


③コンサルティング以外の時間で「本業」に取り組む

当時、創業メンバー全員が大小様々なコンサルティングの仕事を行っていました。コンサルティングの仕事は、企画業務であるため「物理的に」稼働時間が埋まります。

顧客のヒアリング、調査、アウトプット作成を行うだけで、1日の大半の時間が過ぎてしまいます。コンサルタントを本業とするのであればそれでもいいのですが、当社は教育分野のビジネスを立ち上げることを目指していましたので、そちらの仕事を行うことも必要でした。

当時、日中はコンサルティングの仕事、合間を縫って営業アポイントメント取りを行い、夜に事業ディスカッションや翌日の訪問資料作成、自社プロダクトの開発など忙殺される日々を過ごしていました。


④玩具メーカー様へのコンサルティング案件

私自身も複数のコンサルティングの仕事を担当しました。
思い出深いのが某玩具メーカー様向けのコンサルティング案件です。この仕事は、代表の落合さんの前職の同僚の方が、独立してコンサルタントをされており、その方のお手伝いとしてお仕事をいただいた案件でした。

某玩具メーカー様の業務プロセス改善を行うプロジェクトでした。3ヶ月程度の期間で、業務プロセス上の問題を洗い出し、新プロセスを定義するという仕事です。

その案件における元請け=私の上司となったコンサルタントの方が、玩具メーカー様の経営陣をがっちりと握っており、プロジェクト全体をコントロールし、手を動かす作業部分(ヒアリングや報告資料作成等)を私が担当するというものでした。しかし当時社会人3年目と経験も浅く、非常に苦労をした記憶があります。

3ヶ月の期間中、4回の顧客報告会があったのですが、そのうちの1回は前日まで資料が何一つできておらず、お客様やコンサルタントの方にも大変ご迷惑をおかけしてしまいました。今思い出しても深く反省しております。

また、私は創業時より当社の取締役を務めております。某玩具メーカー様の経営陣の方と名刺交換をした際に、自分の名刺に「取締役」とあったことが随分気恥ずかしく感じたことを覚えております。前職では新卒入社で数年しか経験していない私が、いきなり会社役員という名刺で、お客様の経営陣と向かい合っているということに、どうしても慣れませんでした。


⑤コンサルティングの仕事で得られたこと

創業直後にマネタイズをするために、自社ドメインとは異なるコンサルティングの仕事に多く取り組みました。

創業直後からエクイティでの資金調達をして開発に集中するスタートアップもあるかと思います。当社は創業後数年間、自己資金のみでの経営をしてきました。そのためマネタイズをしながら事業立ち上げをしていくことが必要になったのでした。

その後2003年10月の創業から半年を経た2004年4月に当社は、教育分野とは関係のないコンサルティング案件の受託をしないことを意思決定しました。その意思決定については、別の記事で詳しくご説明させていただきます。

コンサルティングの仕事は自社ドメインと関係のない分野での仕事でしたが、そうした仕事を取り組んだことで、非常に多くのものを得ることができたと考えています。

第一に、生き延びるためのキャッシュを獲得することができたこと。

第二に、キャッシュを自らの力で稼ぐことができるという実績と確信

そして第三に、コンサルティングの仕事を通じて出会った方とのご縁でした。これが最も大切なものでした。

その後当社が大変お世話になる、ブルーマーリンパートナーズの山口揚平さんは某コンサルティング案件を通じて出会った方です。教育分野の事業立ち上げにおいて、山口揚平さんと議論をさせていただきました。山口さんに多くのアドバイスや示唆をいただけたことが自社事業づくりにつながっていきました。

苦しい期間ではありましたが、成長に必要なステップであったと考えております。


本記事のまとめ

◆創業直後は、自社ドメインの仕事ですぐにマネタイズをするのは難しいことが多い
◆自分自身の経験・スキルを生かしたマネタイズは短期的に行いやすい
◆コンサルティングの仕事は、稼働の負荷・制約が大きい。本業と並行して行うのは大変である
◆コンサルティングの仕事を通じて得られるものも大きい。キャッシュ、実績のみならず、人とのご縁につながる

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シード期のスタート時点・主たる活動・到達地点について解説しています。よろしければぜひご覧ください。

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本noteでは別途アルーの「研修プログラム開発のストーリーとノウハウ」を公開しています。ぜひご覧ください。

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