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(22)営業生産性をベンチマークし限界突破をする(レーター期)

スタートアップ「レーター期」の3番目の記事です。
※レーター期:一般的には「事業が安定し継続成長が実現しIPOが視野に入る段階」を意味します。

今回の記事は、課題(22)「営業生産性を業界他社とベンチマークし、限界突破をする」です。

課題22営業生産性をベンチマークし限界突破する


①営業生産性の社内常識

当社のレーター期においては「営業生産性の向上」が大テーマでした。
そのためにまず行ったことは、現状把握と目指すべき水準の明確化です。
果たして現在の自社の生産性は高いのか低いのか?伸ばせる余地があるのか?
業界他社とのベンチマーキングを行うことで、目指すべき水準を設定しにいきました。

アルー株式会社は、企業研修サービス業界において最後発の一社です。
企業研修サービス業界は、業界トップ企業の90年以上の歴史を筆頭に、古くからの実績を持った企業が多く存在します。先行企業と比較すれば、当社の営業生産性には改善の余地が多くありそうでした。

スタートアップ企業で仕事に追われる多忙な日々を過ごしていると、自社の中の観点で物事を考えがちです。社内の都合で、社内の常識が、市場の常識と考えてしまいがちです。

当社においても、2013年当時、いくつかの社内常識がありました。
1つ目は「営業一人当たりの売上は100(仮)が限界」というものでした。
※「100」は基準値です。実際の数字ではありません。

年間100の受注は、確かに企業研修サービス業界において、それなりに高いものです。100の受注をするということは、100の仕事(研修サービス)をお客様に納品する必要があります。その納品工数は相応に発生します。納品業務に仕事が追われてしまい、それ以上の受注活動をすることが難しくなってくるのは、自然と言えば自然でした。

当時の営業部にあったのは「年間100も受注するともうそれ以上はできない」という暗黙の雰囲気がありました。

2つ目の社内常識としては「年間受注50(仮)が平均値。この水準で一人前」というものでした。
※「50」についても仮置きの数値です。実際の数字ではありません。


しかし会社を成長させていくためには、この「年間最大受注限界100」「50が平均で一人前」という社内常識を変えることが必要でした。


②トップ競合企業とのベンチマーキング

ベンチマーキングは、自社と近しい領域で活動する、自社よりも大きく優れる企業を比較対象とします。優良企業を比較対象として「井の中の蛙」になることを避けなければなりません。

当社がベンチマーキングをした企業は、顧客の新入社員研修案件のコンペティションでよく当たる業界トップクラスの2社を対象としました。
この2社は、社歴・売上・従業員数とも当社を大きく上回る企業です。

色々な情報ルートにあたり、ベンチマーキング対象企業の営業生産性情報を収集しました。私達が得ることができたのは、完全に正確な情報ではありませんでしたが、組織改革目標を設定するには十分なレベルの情報でした。

特に以下の項目を比較対象として設定しました。
●営業メンバー一人当たり平均売上高
●トップ営業一人当たりの売上高

結果として分かったことは・・・・
●営業メンバー一人当たりの平均売上
・アルー:50(仮)
・2社:75(仮)
→約1.5倍の開きがありました。

●トップ営業一人当たりの売上高
・アルー:100(仮)
・2社:250~400(仮)
→約2.5倍~4倍弱の差がありました。

特にトップ営業一人当たりの売上高の差については、衝撃的でした。
当社内の常識を遥かに上回る水準です。

平均売上の差で組織的にレベルの違いが存在することがわかります。
さらに業績を引き上げる大きな要素として、トップ営業メンバーの売上金額の差だけで大きな差がついています。
当社にとって生産性向上余地があることが認識できました。


前提として、企業研修サービス、新入社員研修提案企業、という似た企業を対象としていますが、営業活動のスタイルは各社様々です。
例えば、アルーは、自社コンテンツ(例:ロジカルシンキング100本ノック)を持ちながら、顧客に合わせてカスタマイズ提案を行います。受注後カスタマイズの実業務を担当するのは、ソリューション部門が担当します。
一方で、上記の比較他社ではない別の会社では、教材カスタマイズを行わないと決めていたりする会社もあれば、教材カスタマイズ自体を営業担当者自らが担当する組織設計にしている会社もあります。

こうした「生産性の差を生む前提の差」を検討し、自社に取り入れることを考えていくことがその後の施策として必要になっていきます。

その後も、当社では他社をベンチマークすることで、自社の生産性に向上の余地があることを明確にする取組みを続けています。


③組織の納得のためには限界突破実績が重要

ベンチマーク企業との差が明らかになりましたが、それだけでは組織は動きませんでした。

トップ企業2社との差がそんなにあるということですが、その情報正しいのですか?実現不可能な水準ではないですか?
確かにあの2社はすごいですよ。うちの商品やブランドでは無理ですよ

営業組織が納得をして動くためには、データを示すだけでは不足です。
自社において限界を突破する実績が必要なのです。

2012年末に中途でアルーに入社をしたSさん(後の営業部長の一人、2018年にご退職。現在はデジタルサイネージ関連の会社で営業担当取締役をされています)は、大手証券会社出身で営業のプロフェッショナルです。素敵なお人柄でチームのムードを高め、高い営業目標に向かって粘り強く取り組まれる方でした。

Sさんが当時担当をされていた大手情報通信会社様は、当社の古くからの顧客でしたが、なかなか深掘り取引が進まない会社でもありました。Sさんが担当されてから、この企業様との新しい案件が増加してきました。そして約1年が経過しようとする2013年末頃、Sさんはこの企業様から大型案件を受注されました。

1社あたりの累積取引でいえば、200(仮)を超えていました。
一つの企業からこれだけの金額を1年間で受注したことは、当社として初めての経験でした。
またSさんは他の担当顧客もありましたので、2013年のSさんの年間個人売上は250(仮)に近い水準となりました。

このSさんの大活躍により、それまでの社内常識であった「トップ営業1名あたりの最大年間売上金額は100(仮)である」という限界や、ベンチマーク企業の水準が実現しうるものである、ということが納得感をもって伝わりました。

Sさん個人の努力、営業力が素晴らしかったことは言うまでもありませんが、Sさんの実績ができたことで、他の営業メンバーの方もそれまでの限界値を突破する方が出てきたのです。

ノミの天井」という逸話があります。
虫のノミは、高いジャンプ力を持ちます。
そのノミを、ガラスのコップをひっくり返してその中に入れて飼育をすると、当然ノミのジャンプ力からすればコップの底(≒天井)にぶつかってしまいます。
何度もコップの天井にぶつかる中で、ノミはそこまでしか飛ばないようになります。
コップを外したとしても、コップの高さに天井があると認識し、そこまでしか飛べなくなるという話です。

この経験を通じて、営業組織も同じと考えました。
ベンチマークで目指す水準を見つけ、誰かが組織内の常識である「ノミの天井」を突き抜けることで、組織としてもっと高く飛べるということを認識できるようになるのです。


④№1戦略の議論

さて、本記事の主題とは少し異なりますが、この2013年頃の時期に私達が取り組んだ重要な出来事がありました。

それは「新入社員研修№1を目指す」という目標を設定したことでした。

株式会社エデュ・ファクトリーは、「ロジカルシンキング100本ノック」研修に代表される思考系ビジネススキルの研修の開発・販売からスタートしました。

その後、2006年・2007年頃に、企業の新卒採用人数の増加トレンドをチャンスととらえ、「プロフェッショナルスタンス100本ノック」に代表される新入社員研修向けのサービスを強化しました。

2010年頃からは、グローバル人材育成サービスをスタートし、その後語学研修「ALUGO」事業等への展開を行いました。

そうした中において、2013年当時の市場開拓戦略としては「脱新入社員研修」ということを掲げて、積極的に管理職層向けの研修や、OJTリーダー層向けの研修等新分野のサービス開発・営業活動を行っていました。

しかしサービス領域の拡張は、リソースの分散を招き、商材の多品種化を招きます。限られたリソースで経営をしているため、個別の商材についての改善が回らず、結果として市場から敗退していくということは、戦略論のセオリーでもあります。

こうした状況において、改めて経営陣で市場開拓戦略について議論を行い、結果としてその時点で強みがあった「新入社員研修」(そしてグローバル人材育成分野でも)において、まず市場シェア№1を実現するという意思決定を行いました。

この意思決定の数年後、当社は実際に両市場において№1を実現することになります(当社調べ)。この議論の経緯・意思決定・その後については、別の記事において別途ご紹介をしたいと考えています。


本記事のまとめ

◆業界他社とのベンチマーキングを行うことで、目指すべき水準を設定する
◆色々な情報ルートにあたり、ベンチマーキング対象企業の営業生産性情報を収集する
◆営業組織が納得をして動くためには、データを示すだけでは不足。自社において限界を突破する実績が必要である


次回の記事は・・・・

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本記事を含む「レーター期」の全体像を解説した記事はこちらになります。
レーター期のスタート時点・主たる活動・到達地点について解説しています。よろしければぜひご覧ください。

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