DXへの挑戦が、IKEUCHI ORGANICの未来を切り拓く
IKEUCHI ORGANIC代表の池内です。
IKEUCHI ORGANICでは「最大限の安全と最小限の環境負荷」という企業理念のもと、ものづくりにおいてIKEUCHI式ORGANICの精度を更に高める努力をしてきました。
私たちの商品は、風合いというアイデアと職人技の集合体のようなアナログ手法で実現しており、コストと手間をかけ放題というイメージで見られがちです。ですが、ものづくりのあらゆる情報をデジタル化・リアルタイム化することにより、スピーデイかつ効率的に業務改善しようと挑戦しています。
ビッグデータや最新のデジタル技術を活用して業務プロセスを変革し、新たな価値を創出していくこと。これがDX(デジタル・トランスフォーメーション)の意味するところですが、弊社では2024年2月に「DX宣言」を行い、積極的にDXに取り組むことを発表しました。
新しいことへの挑戦はIKEUCHI ORGANICのDNAみたいなもので、弊社の歴史を振り返ると様々な挑戦を重ねてきました。
ISO-14001の取得、風力発電の導入、直営店のオープン、ISO-22000の取得、トレーサビリティシステムの運用開始。どれもが現在のIKEUCHI ORGANICを形づくる上で欠かせないものです。今回のDXへの取り組みは、これらの取り組みと並ぶほど重要であり、IKEUCHI ORGANICの未来を左右する分岐点になると考えています。
今回のnoteでは、どのようなビジョンを持ってDXに取り組むのか、そして具体的にどのような取り組みを進めていくのかをご紹介します。
過剰生産を防ぐ、在庫確認のリアルタイム化
ものづくりにおいて、なぜ廃棄が生まれてしまうのか。その理由のひとつは過剰生産の問題です。
ものづくりにおいて需要予測は非常に難しい課題です。市場のトレンドや消費者の好みは常に変化し、それを正確に見極めることは困難です。特にアパレル業界では、シーズンごとに流行が変わるため、需要予測が外れることが少なくありません。
そのため、企業は機会ロスを避けるために過剰生産を行う傾向があります。機会ロスとは、需要に対して供給が不足することで売上機会を失うことを意味します。これを避けるために、企業は多めに生産して在庫を確保し、売れ残りのリスクを負ってでも販売機会を最大化しようとします。
しかし、この過剰生産が原因で、結果的に廃棄される製品が増えてしまいます。売れ残った衣服や製品は廃棄処分されることが多く、これが環境負荷を高める一因となります。大量の廃棄物は処理にエネルギーを要し、また廃棄されるまでに使われた資源や労力も無駄になります。こうして、過剰生産と廃棄の問題が悪循環を生み出してしまうのです。
IKEUCHI ORGANICの場合、そのシーズンだけの販売を狙った商品はなく、永久定番となるような商品しか作っていないため、在庫として残っても、廃棄に至ることはありません。とはいえ、在庫の保管には限りがあるため、在庫量を調整する必要があります。
ただ、過剰在庫を恐れて生産量を減らしすぎると、品切れ等を起こし、お客様に不便をおかけすることになりかねません。適度に在庫を持ちながら、過剰生産を行わない。これが重要なのですが、「言うは易く行うは難し」で簡単に実現できることではありません。
そうしたなかで必要となってくるのが、商品在庫の状況をリアルタイムに把握できるシステムです。今治本社工場と各ストアの在庫状況をリアルタイムに把握し、その動向を見ながら、生産計画を随時修正していく。このような柔軟かつ効率的な体制を構築することが求められます。
これまで在庫確認は、スタッフの目視によって行われていました。しかし、2022年からは定番商品のすべてにRFID(Radio Frequency Identification)タグを添付し、在庫をリアルタイムで把握する取り組みを開始しています。
RFIDとは、無線通信を利用して物品を識別・追跡する技術です。RFIDタグには小型のチップとアンテナが内蔵されており、リーダーが送信する電波を受信して情報を返します。この技術を用いることで、在庫や商品を迅速かつ正確に管理することが可能になります。
ただ、RFIDタグを用いた在庫管理は非常に便利ですが、いくつかの課題も伴います。例えば、周辺に存在する金属製品の影響や、タグの貼り方によっては、うまく読み取れない問題が発生することがあるのです。弊社でもこの課題を完全に解決できておらず、目視による在庫確認も並行して行っている状態です。
こうした問題を解決するために、現在、さまざまな試行錯誤を行っています。タグの位置や角度を工夫し、リーダーの配置を最適化することで、読み取り精度を向上させる取り組みを進めています。
業界初となる、織機への光センサー設置
また、廃棄ゼロを目指すうえで向き合わないといけない課題のひとつが、残糸(ざんし)の問題です。
これまでのnoteでもお伝えした通り、オーガニックコットンは天然素材であるため、均一な長さや太さではありません。綿密な計算や経験に基づいて糸の量を設定しても、若干の誤差が生じることがあります。
それ故、余裕をもって少し多めに糸を用意するようにしているため、タオルを織る度にどうしても半端な量の糸が残ってしまいます。そうした糸は残糸と呼ばれ、残糸を倉庫に眠らせておくわけにはいかないという想いから、アップサイクルの取り組みを開始しました。
現在、DX推進の柱のひとつとして、残糸を少なくする取り組みにも注力しています。
今年から、今治本社工場において、織機に最新の光センサーを設置し、⽣産状況をリアルタイムに把握する取り組みをはじめています。これはタオル業界において初となる試みだと思われます。
タオルの織機は、経糸(たていと)に横糸を交差させることを繰り返して、生地を生成していきます。一枚のタオル生地を織り上げるまでに横糸を約3,000回ほど入れていきます。
ただ、繰り返しお伝えしているように、コットンは天然素材であるため、マシーンが横糸を通す際にほんの僅かなズレが生まれることがあります。その積み重ねによって、仕上がった生地の長さが計算と違ったり、重量に誤差が出たりすることがあるのです。
であれば、ズレが生じる瞬間をモニタリングし、そのズレを随時修正できるのであれば、糸の量を余分に増やす必要が減ります。また、それはタオル生地の品質精度の向上にも大きく寄与するはずです。
こちらの取り組みも、試行錯誤を繰り返している途中であり、理想とする状態に達するにはまだまだ時間がかかりそうです。ただ、今治オープンハウスの際に、工場にお越しいただいたファンの皆さんに未来のIKEUCHI ORGANICの姿を感じていただけるよう、織機一台くらいは稼働している状態にしたいと思っています。
あえて面倒に挑戦するからこそ、感動が生まれる
現在進行中のDX推進の取り組みを紹介してきましたが、この他にも様々な計画を立てています。
特に大きなところで言うと、社員の誰もがデータを活かせる体制の構築です。
実は7年ほど前から、生産から販売に至るまでのプロセスを全てデータ化する取り組みを開始していました。基幹となるソフトウェアを導入し、社員それぞれがデータを入力することで、部門ごとの収支が一覧で把握できるようになりました。これは阿部社長の発案によるもので、経営者として数字をきっちりと管理するために導入されたものです。
ただ、これは弊社にとってはビッグデータそのもので、経営者だけが活用するのは、非常にもったいないと感じていました。社員それぞれがデータを活用することで、創意工夫が生まれ、新たな価値の創出にもつながるはずです。
同時に、タオル職人の知識や技をデータ化することにも取り組みたいと考えています。
IKEUCHI ORGANICでは、全社員が毎日業務日報を作成し、その内容を社内で共有しています。ものづくりに関わる社員は、作業の手順、結果、学びを詳細に記録しています。この情報は膨大なものとなっており、これらをデータとしてAIに読み込ませることで、職人たちの知識を集約したデータベースを作り上げたいと考えています。
職人としての肌感覚も大切にしてほしいですが、データベースの存在により、知識の属人化を防ぎ、現場全体のレベルアップにつながるはずです。また、数十年先の未来に向けて、自分たちの知見をしっかりと引き継いでいくことも可能になります。
このように、様々な業務プロセスを変革しようとDX推進に取り組んでいますが、DXを成し遂げるには、社内の理解と協力が何よりも重要となります。
新しい仕組みを作っても、社員全員がそれを実行し活用しなければ意味がありません。現場には現場の慣れたやり方があるため、「また代表が面倒なことを始めた」と思っている社員もいるかもしれません。
さらに、織機への光センサー設置などは業界でも初の試みであり、誰も正解を持っていません。そのため、試行錯誤を粘り強く繰り返す必要があります。センサーを設置することで様々な工程に影響が生じ、業務全体の見直しが必要になるかもしれません。
しかし、新しい取り組みを始める時は、いつも最初は困難が伴います。あえて面倒なことに挑戦するからこそ、感動が生まれ、それが企業のブランドストーリーとして紡がれていくのです。
DX推進の達成状況については、今後、様々な形で発信していく予定です。IKEUCHI ORGANICの取り組みに是非ご注目ください。
<編集協力:井手桂司>
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