事故に遭いました いい人で本当に良かった
うちの父は自営業。家に帰れば、絶対にいる。何か言われる前に、こっちから言っておこう。家まで残り15mのところで、イメトレをした。
そして、お父さんを見るなり、
「お父さん、事故りました。ごめんなさい。」
私は、開口一番、謝った。
父は、私の前歯が折れて、チャリがキーキー鳴るのを見て、察したようだった。
「どこで?」
「安藤さん(駄菓子屋さん)のところで、曲がったらぶつかってた。」
「相手は?」
「軽トラックのお兄さんで、いい人だった。」
「いい人なら、一緒に来るか連絡くれるはずだからな。他にはわからないのか?」
「…忘れた。」
「メモは?」
「塾に行くつもりだったから、メモろうとも思わなかった。」
「…わかった。まずは休みなさい。」
父は、キレたり、興奮することなく、淡々と会話をした。私は、ただ怒られずに済んだと、ホッとした。
本来なら、やらなくちゃいけないことがたくさんあるはずなのに、放棄してきてしまった娘を、咎めるところだろうけど、パニックになっている頭を、何事も無かったようにしている娘の姿が、あまりに痛々しかったんだろう。
父は、そこで感情的になっても仕方ないと、判断したんだと思う。そう、今なら、わかる。
2時間後、お兄さんがうちに来てくれた。お兄さんは、私が踵を返したところも見ていて、家の確認していたそうだ。しかも、うちは何度か注文もしているお客さんだそうだ。そこから、警察やその他の対応をした上で、わざわざお見舞いに来てくれたのだった。
ほらね、やっぱりいい人だった。いや、ただただ、私があまりに不甲斐なさすぎる。
お兄さんが、そこまでしてくれたから良かったものの、そうでなければ何一ついいことなんてない。
今思い出しても、私の至らなさがこっぱずかしい。
ぶつかりに行ってしまっただけでなく、その後の処理も放棄してしまった。
お兄さんのおかげで、事故に遭った時の対応を学びました。そして、我が子たちにも教えました。もちろん、事故に遭わないことが大前提ですが。