[2024.2.9]東京ドームでTaylor Swift「THE ERAS TOUR」を観た
はじめに
突出して好きな曲が数曲あるものの、絶対にライブに行きたい!というほど好きなわけではない。昨年末までのTaylor Swiftに対する感情は、そんな感じだった。
それが、今回のERAS TOURを収めた映画で圧倒されてひっくり返った。4回も映画を観た。隙あらばERAS TOURのセットリストを聴いている。
そんな状態で、映画の感想文を2回も書いた。
だから、東京ドームで実際に観たライブについては、映画とは違ったハイライト部分だけを切り抜いて書き記そう。そう思って書き始めた。はずだった。
「ハイライト:最も光が当たって明るく見える部分、または、見せ場・見せどころ・強調部分・名場面」とのことだ。意味は正しく理解していたはずなのに、ハイライトとして書いた項目に披露されたほとんどの曲が含まれ、最終的に2万字を超えてしまった。映画感想2本文より多い。
書き始めた時には、あの感動を!少しでも多くの人と共有したい!まだあまり興味のない人が、せめて映画を観るきっかけになってほしい!みたいなことを思っていたはずだが、とてもじゃないけどそんなものには向いていない、自分専用ぶん殴り書き長文になってしまった。
とは言えあの時、自分と同じくらい、いや自分より圧倒的な熱量で感動、興奮、熱狂していたSwiftiesは推定27999人はいたと思うので、一人でも多くの27999人に届いて、いつかあの日の思い出を語り語り尽くしたり、まだ自分の知らないTaylor Swiftの魅力を教えてもらえるきっかけになったりしたらいいな。と思う。日々の隙間でずーっと感想を書き連ねていたら、あれからもう1ヶ月も経ってしまった。それでもまだ、数分前のことのように蘇る、あの、Enchantedでwonder-struckでsparklingでflawlessでEverything will be alright if we just keep dancing like we're 22!な夜の思い出日記です。
1月
今年に入ってから、東京ドーム公演のリセールが始まっていることを知り、日夜リセールのページにアクセスしては、出品されるそばから取引中の表示がついた画面を、ただただ眺めていた。
そんな折、母が緊急搬送された。今週中には死ぬと言われたのだが、わりと死なずにその週を乗り切った。父の時と全く同じだ。父は、いつ死んでもおかしくない。と言われてからなんと3年以上も生きた。でも、生きてはいた、だけだ。母も同じになるのかな。
なんてゴタゴタの間に、再販もスタートしていた。もちろんそれも、気づいた時には完売になっていた。あんなに毎日サイトもチェックしてたのに。なんで今なんだよ母、と思った。
周りにTaylor Swift好きな人なんて全然いないんだけど。逆に、え、みんなそんな好きだったの?ってくらいBruno Marsは周りの人行ってんだけど。と疑問を感じざるを得ないほど、とにかくチケットが取れない。母は死にそう。チケットは取れない。病院は片道3時間。チケットは取れない。仕事も家事も滞りまくり。チケットが取れない!
2月5日
そんな窒息しそうな年の始まりを経て、チケットが取れないまま、今年のグラミー賞を観た。
Taylorは、ポップ部門のスピーチで突如ニューアルバムの告知をした。ものすごく既視感のある場違い感。
あれだ!紅白で卒業発表した時の大島優子だ!みんながみんなあなたのファンであるワケではないよ、という場所で、自分の応援している人がズレた行為をするのを見るのは、一緒に歩いてる友人が、他の通行人の邪魔になってしまっている時のような気まずさがある。
そんな、ちょっとだけ興を削がれた状況で、「Midnights」ではAlbum of the Yearを受賞。Taylor Swiftは4回目の同賞受賞で、Beyoncéは0回。
そりゃJAY-Zもあのスピーチするし、それを眺めるBeyoncéもあの顔になるよねと思ったり、同じくAlbum of the Yearのノミニーで受賞を逃したてのLana Del Reyを一緒に壇上に連れて行ったり、仲間と喜び盛り上がるあまりプレゼンターのCeline Dionになんか失礼な感じがしたり、なんとなくあの日のTaylor Swiftは空回りしてるように思えた。
だが、Album of the Yearのスピーチで東京ドーム公演について触れてくれて、いや確かに明日、Taylorは日本に来るけど、自分チケットないから関係ないしな。と、思って気づいた。
あ、今、生活がしんどい上に、もうあさってから始まる日本公演にどうしたって行けないから、いじけてるだけだ。なんか意地悪になってるな。空回りは自分だ。と反省した。
2月6日
出張。帰りの新幹線で眺めていたX(旧Twitter)に、mu-moで追加販売来てますよ。というポストを見つけた。ステージサイド席だから全然見えないだろうけど構うものかと、すぐさま震える手で購入を押した。買えた。嘘だろ。あれだけ毎日、数分置きにチェックしていたリセールでは全く買えず、映画で十分堪能したし、今は病院もあってそれどころじゃないし、と、日が経つに連れ、自分を騙し続けた日々がバカみたいにあっさり取れた。
明日!Taylor Swiftのライブに!俺は行く!新幹線の中でちょっとだけ声に出して、うひょ!って言った。ちょっと泣いた。
2月7日
今出来得るいちばん派手でオシャレな服装で着飾って、早めの時間に到着した東京ドーム前は、まだ公演数時間前なのに完全に「祝祭」の場と化していた。
音楽の「フェス」が大好きなのだが、その最も大きい理由は、
フェス=祝祭=日常とまったく違う祭りの場、であって、それを作るのは何より観客の主体性に依るところだ。
ここが、ド派手なステージ演出やファンサービスで、ヒット曲連発の大物アーティストやアイドルの大型ライブとは全く違う点で、二つの楽しみ方には大きな隔たりがある。
で、当然後者寄りだと思っていたTaylor Swiftのライブ会場は、びっくりするほどフェス寄りの楽しさで溢れていた。
まず何より楽しかったのが、人種の坩堝だったこと。中国、韓国の人が多めに見えたけど、東南アジアや白人の人もかなりいた。少数だが黒人の人もいた。おそらく日本人は50%くらいだったのではないだろうか。こんなに日本人が少なく、多種多様な人種が一堂に会するライブ会場に、日本では初めて出くわした。チケットが取れなかった理由がわかった気がした。
そして、老若様々な年齢の人がいた。全盛期、ミニモニ。が絶好調の頃のハロプロみたいだった。
あの頃のハロプロライブに、ミニモニ。の扮装をした子どものお客さんがたくさんいたように、Taylor Swiftのステージ衣装を模したドレスを着た子どもがたくさんいた。
そしてやはり、あの頃「矢口命」みたいな文字が刺繍された特攻服みたいなのを着ていた人がたくさんいたのだが、それを彷彿とさせる、蛇とかアルバム名が刺繍された、黒いガウンを着ている人もたくさんいた。
ステージ衣装を模した服装をしているのは子どもだけではない。いや、むしろ大人の方が多かった。女性はもちろん、少なからず男性も、みなそれぞれに、クオリティの高い衣装を作成して着飾って、メイクやネイルも特別なもので、お互いに写真を撮りあっていた。
そしてみんながみんな、腕に浜田雅功くらい、いやそれ以上にたくさんの腕輪をつけていた。
どうやらFriendship Braceletというもので、みんな手作りで持ち寄り、ライブ会場で交換することで交流のきっかけにするようだ。そんなことも知らない自分のようなニワカファンでも、このライブを、自ら楽しい空間へと作り上げることに全力で挑んでいる各国のファン「Swifties」の間を練り歩くだけで気分が高揚した。
高揚しすぎて、普段ほとんど興味のないグッズ購入の列にも並びかけたが、誇張なしで1万人は並んでいるように見えたのでやめた。今まで肉眼で見た人間のかたまりで、一番巨大だったように思う。
そうして入場したステージサイド席は、ステージの真横よりさらに裏、ステージ裏で何が起きているのかが、かなり良く見える席だった。
これはこれで、嫌いじゃない。そしてどうやら、他の席では見えづらいバンドチームがすぐそばで見られそうだで楽しみだ、と、半ば自分を鼓舞するかのように言い聞かせるものの、こんなにも、最初から最後まで曲順だけじゃなく何が起こるかもわかっている状態で観るライブは初めてだ。その上、映画で堪能した、あの素晴らしいセットや、メガサイズのスクリーンに映る映像は、この席の角度からは一切観られない。あと、東京ドームってこんなに広いのに、客席狭すぎない!隣の人と密着しすぎなんだけど!あとあと、入口でペットボトル取られたからすごい長い時間並んで飲み物買ったけど蓋くれないから不安…あれ蓋してる人もいるな、どうなってんの?とか、気になることは色々あった。あったがもう、カウントダウンの時計が表示されたその瞬間からライブ終了まで、本気で体感10秒くらいだった。もちろん盛りすぎだ。そんなわけない。10秒じゃ一曲のイントロすら聴き終えない。けれど振り返ると本当に一瞬だった。一度も座ることも、飲み物を飲むこともなく、ただ固唾を飲み、歌い叫び、泣きじゃくり、ヘラヘラ笑っていた。酒とか薬で気持ちよくなる感じ、きっとこんななんだろうなと思う。曲順通りの感想は、映画で書いたこっちに詳しく書いたこととほとんど変わらない。ただとにかく、映画観たからそれでいいや、というわけではないかけがえのない体験となった。
東京ドームを後にして、混雑を避けてうす暗い裏道を歩きながら、この感情の昂りを、一方的に数人の友人に送りつけつつ、
これは、毎日行かねばならないやつではないのか。いや、この世にそんなものはないのだが、そして病院と出張があるから木曜と土曜は行けないのだが、金曜は休みだな。病院の後に行けるぞ。ステージサイド席くらいの値段ならもう一回くらい行ってもバチは当たらない。なんて思って覗いたチケット販売サイトで、なんとVIP席が再販されていた。わかりやすく眼をこすってもう一度見たが、やはり買えそうだ。
混乱と動揺で動悸が激しくなり、水道橋と御茶ノ水のちょうど中間あたりの路肩にうずくまり、ブルブル震える手で一番高いチケットを購入画面まで進める。あんなに取れなかったプレミアチケットが、取れてしまう?本当に?だけどこれ取ったら生活が破綻するぞ。あと、親の死に目にTaylor週二はさすがにやりすぎでは?などなど、興奮と緊迫がないまぜになったまま、あとは決済画面というところまで行けてしまい、恐ろしくなって画面右上のバツを押す。そうして引き続き友人に感想を送り続ける。いろんな国の人が楽しそう!すごすぎるドラムがずっと観られた!後ろでストレッチや準備してるダンサーが見えて、こっちに手を振ってくれる!サイドにもビジョンがあるから全然楽しめた!センターステージはむしろ正規のスタンド席よりTaylorに近かった!などなど、友人に感想を送るふりをして、もうこれで十分満足だと、とにかく自分に言い聞かせていた。
2月9日
そうして迎えた2月9日金曜日、私は、東京ドームにいた。自分との戦いに負けたのだ。ぼうっとした頭で、だがしかし、しっかりと水曜日よりはるかに早い時間に着いていた。
前日はずっと落ち込んでいた。というか当日現地に着いて、祝祭ムードのSwiftiesに囲まれてなお、気持ちは沈んだままだった。とんでもない金を使ってしまった。人生最高額の買い物とまでは言わない。パソコンやスマートフォン、引越しだとか。あとそもそも毎月の家賃とか、介護費用とか。それよりかかってるものはたくさんある。あるにはある。けれどその場で見聞きしたら終わるもの、の1時間あたりの額で言ったらぶっちぎりだ。しかも絶対今じゃない。これからまた介護費用だの葬式だの墓だの色々考えなければいけないし、引っ越しもしなきゃいけないし、フジロックとサマソニの発売が間近に来ている。電動自転車だって買えただろう。そんな時に映画を含めたらすでに5回も体験しているショウに、とんでもない金を払ってしまった。遥かに好きで遥かに安い、JanetとTLCを金銭的な理由で諦めたばかりなのにだ。
あともうひとつ、5回も体験済みのショウにこの額を出せるなら今やるべきことはもっと他にあるのでは…みたいなことを頭の中の天使が語りかけてくる。いやけどさ、国境なき医師団にも毎月そこそこの額募金してるし、ユニセフにも募金したし、伊藤忠のデモも行ったし、不買運動もしてるし、と言い訳悪魔が反撃するも、いやだとしてもだよ、この額出すなら、何泊も被災地ボランティア行くとか、まあそんな社会貢献的なことは置いといたとしても、免許取るとか、親の病院近くに移すとか、引っ越し資金貯めるとか、犬猫にもっといいアイテム買ってやるとか、韓国行くとか台湾行くとか有意義な使い道いくらでもあったっしょ。と正論天使が詰めてくる。言い訳悪魔、秒で惨敗。
惨めな気持ちのまま一昨日とは違うVIP専用ゲートに辿り着く。と、一昨日ペットボトル持ち込めなかったからと、自信満々でたっぷりのお茶を淹れて持ってきた、お気に入りのコバルトブルーの水筒を取り上げられる。
え!ペットボトルNGって、今流行りのSDG’s的な観点の、Billie Eilishとかもやってたあれじゃないの?単純に商売的なそれ?と、さらに凹んで、もはやHP0の状態で、またしても長蛇の列に並んで蓋なしのドデカウーロン茶を買う。
入り口で渡されたドデカVIPボックスと、蓋なしヘナヘナ紙コップに入ったドデカウーロン茶を抱えながら、何度も携帯のロックを解除してはスタッフに座席確認をして、うなだれながら、ちょっとずつお茶こぼして手びしょびしょになりながら、ようやく自席に辿り着いた。
こんなに高いのに変な席だったらもう立ち上がれないかもしれないと、事前に確認せずにいたその席は
E9ブロックの内側よりのいちばんうしろ!
メインステージの巨大ビジョンに映し出される映像も、各ERAで現れる数々の豪華なセットも、花道やセンターステージでのダンスや演奏も、ライブの全体像がまるっと体験できる席!
しかも「22」でTaylorが子ども客にハットをかぶせるシーンがバッチリ真横から見える!花道の天板に映る映像とか、ドラムの演奏とか、上から見ないとわからないものは見えないけど、それは水曜に堪能しまくった!
この値段出したならもっと前でもいいだろ!という気もしないではないが、「より近くで観る」よりも「あの映画で観た素晴らしいショウ全体を味わう」が自分にとっての最優先事項だったので、大満足。しかもブロックの一番後ろだから、後ろの人を気にせず立ったり動いたり撮影したりできる!
一昨日のステージサイドはevermoreとfolkroeでほとんどの人が座る中、ずっと立ち尽くして見惚れていたので、見惚れてはいたのだがやはり、座れよ見えねえよって後ろの人に言われないか気になっていたので、今日はそんなこと気にせずに見惚れまくれるぞ!と一気に機嫌が良くなる。最高の席だ!
開演までの2時間で「みどりいせき」を読み進める。音楽聴いてるみたいに文章が頭に入って来て気持ち良い。と、思いながら、子どもの頃から食べられないあんこを克服したいと最近色々挑戦しているので、パン屋で買って来たあんバターサンドを、ちょびっとずつ、まさに苦虫を噛むように食べる。あん以外全部最高に美味い。あんさえなければ…と思うが、途中からあんとバターが混ざった時に、とても美味いさつまいもみたいな感覚を味わえるようになる。行けるかも。と思いつつ半分でとりあえずし仕舞う。
なんて感じで過ごしていると、目の前で歓声が上がる。目を上げると、Taylorのツアークルー、緑色のでっかいヘッドホンをつけた長髪の髭の人が、客席にいる恋人にプロポーズをしていた。なにそれすごい。OKもらって周りから拍手喝采。この頃にはお金遣いすぎストレスからすっかり解放されてウッキウキのヘラヘラ。
そうして始まった2回目の生で観るTaylor Swiftの完璧に美しいショウの細かい感想は、やっぱりほぼこれと同じではあるのだが
やはり生で、正面から、3時間半、本気のSwifties多めの客席で浴びたTaylor Swiftは本当にすごすぎた。筆舌に尽くしがたい。ってなんて便利な表現!だけどいくら舌が足らずともまだまだ語り尽くしたい。映画の感想と被らない部分で、生で見た感動のハイライト場面を書き出して行こう。(と、書き始めた時は思っていた…)
ハイライト1
冒頭のカウントダウン。
2分もある。長すぎて間延び、なんてまったくしない。好き度で言えば何億倍も好きであろう安室奈美恵の「25th ANNIVERSARY LIVE in OKINAWA」での、デビューまでを振り返って遡る、あのカウントダウン演出に匹敵する興奮度で、2分間ドキドキしっぱなし。時計が進んでるだけなのに。残り30秒くらいからはもう正気保つので精一杯。なんでかって言うともう、周りのSwiftiesが幸せそうすぎるから。件のプロポーズを受けた人とその友達たちやら、中華系のお爺さんとその孫(男子)、すぐ後ろの高校生と思しき男女、そして数々のTaylorと同じ衣装を纏ったキラキラの人たち。その人らの興奮にアテられて、こちらのボルテージも上がりまくる。どうしようライブまだ始まってないのにすでに300字くらい語ってる。このままじゃ終わらないしあと、あの安室奈美恵ライブ2017年なの!7年前!?光陰矢の如しって言うけど実際矢なんてそんな速くないから、ことわざそろそろ更新してもいいんじゃない?と思ったら矢って時速200km超えるらしい。チーターより速いし普通の電車よりも速い。新幹線よりは遅い。じゃあまあいいか。
ハイライト2
オープニング
Miss Americana & The Heartbreak Princeに乗せて、あのふわふわの羽軍団が登場。かっこいい。美しい。ダメだ言葉を知らなすぎる。あの時の気持ちはもっとこう、こんな言葉じゃ全然足りない感情なんだ。不安とか疲れとか後悔とか不満とか、あの人嫌いとか、そういう体の中に残ってる、嫌な、aikoが「体にある余計な水分が邪魔で不快だ」と歌うようなもの、それらが全てじゅわーっと涙として溢れ出して蒸発して、楽しい気分に塗り替えられていくような。そんな感じ。ずいぶん長くかかってしまったけど、ここはあなたと私だけの世界。ここは好きなように楽しんでいいセーフスペースだと宣言してくれる歌詞に、すでにすすり泣き。
そうしてステージ中央で折り重なったふわふわからTaylorが現れた瞬間、映画含めて都合6回、すべて泣いちゃったわけだけれども。
やはり生で、わりと近い距離で拝んだそれはもう。これまた手垢のついた表現しかできなくて悔しいのだが、覇王色の覇気って現実にあるよねえ。という、それそのものだった。なんで泣いてるかって感動とかそんなことより、そこにTaylor Swiftが立って、”Hi!”と言った、ただそれだけのことでドームの隅々まで立ち込める、覇気にアテられて泣いているのだと思う。
これアレだな、書けば書くほどもう、大ファンの盲信的な文章だと思われて、ちょっと気になってる人とかが万が一読んでくれたら、逆に引いて終わるだけだな。でも改めて、自分はTaylor Swiftそこまで好きではないのだ。
この日いた何万人かのうち、なんか、パパ活?みたいな、明らかに金だけある人とそのツレ、みたいな、好きでもなんでもなくてプレミアチケットだから、とか、なんかコネがあるから、みたいなことでVIP席を取ったと思われる、全く似合わないハイブランド着たような客もパラパラ見受けられ、さすがにその人らよりは好きだけど、合唱できてる具合とかから見ても、自分なんて会場内Taylor好き度ランキングで言ったら28000位くらいじゃないだろうか。その状態で、このありさまなのだ。自分より上、27999人は確実にもっとすごい興奮状態でライブを堪能していたと思う。
ハイライト3
Cruel Summerのブリッジ大合唱。
最高。幸せと聞かないで嘘つくのは上手じゃない的な聖子性も、私の泣いた顔はブスそれを見る困った顔もかっこいいな的なaiko性もはらんだ、絶対一緒にいても互いに幸せになれないであろう関係性、だがどうしても会いに行ってしまう。そんな相手に対して、「言ったところで意味ないけどあなたを愛してる!どうだ!あなたが今まで人生で聞いたセリフで最悪の言葉だろ!って叫んでやった!そしたらあいつは、悪魔みたいにこっちを見上げた!マジ無理やっぱり全然大丈夫じゃない!」っていう歌詞を何万人と大合唱。誰しもが、どうしようもなくだらしない人間であっていいんだよ、って認め合うみたいな、最高の体験すぎる時間。号泣。ところでTaylorしょっちゅう庭から好きな人の家に侵入している気がする。
ハイライト4
The Man~You Need To Calm Down
The Manの巨大オフィスセットでの男性ダンサーたち、特にJanさん!のマジでムカつく表情ダンスからの、最高なバンドアレンジで演奏されるYou Need to Calm Downで
“shade never made anybody less gay!!!!”
の絶叫大合唱。号泣。
Miss AmericanaもYou Need to Calm Downも、別に戦争とかじゃなくてもっと身近な、SNSだったり一対一のコミュニケーションの話ではあるけど、戦う必要はない。よくわからない相手を悪く言うな。ということを歌っていて、そう言う曲を、世界中を周る、今一番巨大なエンターテイナーのツアーの冒頭に持って来てくれるのはありがたい。ありがたくはあるのだが、できれば本当は、堂々と意思表示してほしかった気持ちはある。もう、この世のあらゆるものが、そしてそれが楽しければ楽しいほど、より濃く心に影を落とすようになってしまった。
ハイライト5
LOVERのチークダンス。性別の種類を超えたマッチングで踊っているのは映画時点で確認できていたんだが、ここまで情熱的に官能的に踊ってただなんて。どのペアのダンスも見逃せず、一組ずつチッケムほしかった。
そして、キラキラのギターを爪弾くTaylorの周りに座って歌うコーラスの美しさ。贅沢な時間だった。
ハイライト6
The Archer
近くであることにはそんなに興味がない。ステージ全体が見回せることこそが至高。なんて全部嘘。詭弁。かっこつけ。この日最初の、自分のブロックに再接近してくれた曲で、しっかり写真におさめてるけど記憶はほとんどない。失神してたのかも。映画では聴けなかったこの曲。後半に向けて盛り上がるハウスみたいな曲に乗せて、素晴らしくかっこよい衣装の細部まで肉眼で確認できる近さに来てくれた。
ハイライト7
各ERAの切り替えの演出。
映画では、そしてステージサイド席では観られなかったERAの切り替え時の演出がとにかくすごかった。映画時点では、曲の切り替えで突如現れては消える巨大セットに豆鉄砲食らいまくり。ていうか豆鉄砲って何?と思って調べたら文字通り、豆を弾にして撃つおもちゃだった。ダメだろう鳩を豆鉄砲で撃っちゃ!と思ったが、エサになり得る豆を鉄砲で撃って驚く様を楽しんで慣用句にまでする愛憎の交じり方すごいな。
とにかくまず、映画で面食らった切り替え演出と、VIP席からじっくり眺めることができた演出は、どちらも方向性のまったく違う素晴らしいものだった。この日最初のLOVERからFearlessへの切り替えはこんな感じ。
ハイライト8
Fearless ERA
まったく聴いたことのなかったアルバムなので映画鑑賞の時点では、若干小休憩タイムになっていたが、この数ヶ月で完璧にシンガロングできるくらい好きになった3曲を、センターステージまで出て来たバンドと一緒に披露するここのパートは心の底から楽しかった。この日、あまりにも楽しい気持ちで最高の演奏と歌声に合わせてたくさんシンガロングしたので、もう普通のカラオケじゃ満足できない気がする。
Love Storyでプロポーズする人もしない人も、プロポーズするの最高って人も、Taylor観に来てんだから鬱陶しいことすんなって人も、全員いていいと思うんだけど、自分は大賛成。
ハイライト9
evermore ERAのセット切り替え
スクリーンに映し出される鬱蒼とした森だけでも十分な見応えなのに、ステージ上にも何本もの大木がニョキニョキと生えてくる。ステージ下からせり上がっているんだということはもちろんわかっているんだけど、雪解けと共に森の木々が育っていく様が巨大スクリーンでも映し出されるのと同時にステージに現れる大木は、本当に生えているような錯覚すら覚える。
ハイライト10
willow~marjorie~champagne problemsの清廉かつ神秘的なステージ。Fearlessパートの幸せに満ちた空間が嘘みたいな空気。やはり音楽性の好みとしては断然こっち。
Love Storyの対極みたいなプロポーズ失敗ソングのchampagne problemsに続く、ちあきなおみ「ねえあんた」のTaylor版、tolerate itだけは、ずっとアップでTaylorとダンサーRaphaelさんの細かな表情動きが終える映画版に軍配。
ハイライト11
Reputation ERA
ここがハイライトオブハイライト。他のERAよりも明らかに野太く歌う歌声も、赤と黒の蛇がモチーフのRoberto Cavalliのスパンコール衣装も、エレキギターと耳障りなくらい響くベース、ドラムが響くロックアレンジの演奏も、このライブを通して圧倒的に好きで、興奮が頂点に達するReputarion ERA。ライブがこの4曲だけで終わったって文句なしの大満足。当時全く良いと思わなかっReputationにこんなに夢中になるだなんて。Taylor’s Version待ってます
ハイライト12
Speak Now ERA
今回のセットリストで最も馴染みのないアルバムSpeak Nowだが、このライブ随一の裾が広がった美しいドレスで歌うEnchantedの「This Night is Sparkling Don’t You Let It Go」て歌詞や、続くLong Liveの「私たちが壊してきた壁に、私たちの王国に、私たちが産んだ魔法に祝福を!いつの日か私達は歴史に刻まれる!」って歌詞は、今まさに、Taylorとツアークルーと観客で作るこの時間を祝福してくれるようで感涙。
ハイライト13
22でのハット贈呈
これが間近で観られたのもこの日のハイライトオブハイライト。
観客の中から選ばれた子どもの客にTaylorがかぶっていたハットをあげる。ただそれだけのことがなんでこんなにも美しく胸を打つのだろう。映画でも、SNSで流れてくる海外公演の様子でも、毎回必ず泣いてしまうこの場面。思えば、日本公演初日にハットを受け取った子の、震えながら涙する姿を見た時に、いくら出そうともこのステージを生で、正面からもう一度観たいと決心した気がする。
幸せで自由で混乱していて孤独で悲惨で、あなたのことはよく知らないし私のこともよく知らないけど、とにかく今夜は一緒に踊りまくろう。そうしたら大丈夫!22歳って気分!と歌うこの曲の歌詞、本当に元気が出る。
ハイライト14
REDのヒットパレード
日本で一番人気であろう「私たちは絶対に絶対にヨリを戻したりしない」と、I Knew You Were Troubleの大合唱。そしてAll Too Well(10minutes version)。
22でのハット贈呈もらい泣きからの、この3曲では楽しすぎて頭おかしくなりそう泣き。ドーパミンだかセロトニンだからオキシトシンだかその全部だか全然違う何かだかわからないけど、全身が気持ち良くなる成分大分泌。わかりやすく俯きがちに歩きながら小石蹴っちゃうほど後悔で落ち込むくらい金払ってようやく得られた、このたった一度の気持ちよさが、手軽に手近で味わえるんだとしたら、今のところ一切興味ない酒やドラッグにもうっかり手を出してしまいそう。そう思うほどとにかく気持ちよかった。
ハイライト15
folklore ERAのすべて
思い返せば学生の時、マーカーで教科書に線を引いて上から赤い下敷き被せるとマーカー引いたところが見えなくなるから、なんで書いてあるか考える勉強法が苦手だった。全部大事そうに思えてほとんどマーカー引いちゃうから、下敷き被せたらそもそも文章として成り立たないし、本当に大事なところもボヤけちゃう。
この感想文ももはやそんな感じ。何がハイライトかわからないくらいほぼ全曲の感想を、ここがハイライトだ!って書き連ねてる。
けれどやっぱりなんと言っても、folklore新規で最も好きなアルバムであるこのERAの全てを、特になんと言ってもthe last great american dynastyのその全貌を、正面から堪能できたのは忘れられない体験。目に、脳に、タトゥーみたいに刻み込んだ。地味なパートで周りもかなり座ってくれたから視界も良好で最高だった。
ハイライト16
引き続きfolklore ERAから、10代の三角関係シリーズ。
betty、august、illicit affairs、そして映画では聴けなかったcardiganの4曲は、同じ登場人物がそれぞれの目線から各々の恋愛を歌うシリーズ。曲は全て最高だけど、歌詞には全然ピンと来てなかった。けれど4曲とも最高のパフォーマンスで披露されて大好きになってしまう。このライブで披露されて、全然好きじゃない。から、マジで大好きすぎる!に変わってしまった曲、たくさんある。本当に素晴らしいライブ。
ハイライト17
1989ERAのヒットパレード
1989というアルバムの異常な売れ方を認識しつつ、さっきのREDでコカインだかLSDだかってこんな感じ?ってくらいアッパーな状態になったにも関わらず、それよりもさらに強い刺激がやって来て、もう社会生活に戻れないんじゃないかというくらい興奮してしまう。
Style最高6位100位内32週
Blank Space1位7週100位内38週
Shake It Off1位4週100位内50週
Widest Dreams最高5位100位内27週
Bad Blood1位1週100位内25週
と、輝かしいBillboardの成績を収めた曲群が連発。当然全曲知ってるし、その全てが曲調こそ違えど、いろんなバリエーションのアッパーさ。
その前のfolklore ERAが、作り込まれた世界観をじっくり鑑賞する、と言った趣きのパートだったため、そこからの感情の揺さぶられ方も相俟って尋常じゃない会場の盛り上がり。
ハイライト18
サプライズソング。
日本では4公演やったので全通すれば43曲+8曲も追加で聴ける。自分は2日間行ったので、7日にギター弾き語りのDear Reader(Midnights 3AM edit)とオルガン弾き語りのHoly Ground(RED)。9日にギターでSuperman(Speak Now)、オルガンでThe Outside(Taylor Swift)。
正直ニワカファンのため、ギリギリDear Readerを聴きかじったくらいで、他の曲はこの日が初聴だったけど、すごく良いメロディだなと思ったThe Outsideはデビューアルバムからのセレクト。なんと12歳の時の曲だそうだ。12歳の頃の自分が成し遂げたことなんて、というか今だって、何もない。すごい。
ハイライト19
Midnights ERA
Fearless、RED、1989の特大ヒットエリアは、どちらかと言うとシンプルなステージングでとにかくSwiftiesと合唱しながら会場を盛り上げることに専念していた気がするが、
folklore、evermore、そして最新作Midnightsというコロナ以降に発表した3作は、ステージ演出に圧倒的に力が入っていたように思う。
1989ERAでTaylorもSwiftiesも全力を出し切って、サプライズソングがアンコールで終わり。でも充分なはずなのに。アコースティックセットで、最も会場全体の雰囲気がアットホームになった空気感をわざと切り裂くかのように、サプライズソング終わりでTaylorは、その身を荒波の中に投げ打つのであった。
ハイライト20
エンドロール。
なんて素敵なライブだったんだ。Taylorの圧巻のパフォーマンスはもちろん素晴らしいんだけど、バンド、コーラス、ダンサー、全員の虜だぞ。帰って名前調べるか。と思ってたら流れた全員の写真と名前。ぬかりない。最高。
実際に、生でこの目に焼き付けた、Taylor Swift THE ERAS TOURは、昨年末に4回も観た、このツアーを映像に収めた映画と、見事なまでに完全に、同じだった。
セットも、照明も、特殊効果も、衣装も、バンドも、ダンサーも、コーラスも。あ!あのダンサーのあの振り付け!ここで地面を踏みつけたらこの特殊効果!ここでバンドが前まで出てくる!などなど。すでに知っているあの場面、あの振り付け、あの演出の再確認の連続。そしてそのバンドの演奏も、何より本人の歌声と見た目も、見事に映画そのまんまだった。ひょっとしてこれ、目の前にはTaylor Swiftもバンドもダンサーも実際はいなくて、最新鋭の技術を活かした4DXみたいなもので、あの映画を流しているだけなのでは?とすら思えた。あの映画は、作品として残すにあたりいくつかの会場でのライブから、最高のパフォーマンスを選りすぐっていたと思う。そんな最高の瞬間を切り抜いたはずの映画と、同じ品質のものが、実際に、眼前で、リアルタイムで提供されていた。にわかには信じ難い。そんな素晴らしい瞬間が息つく間もなく続いた。
この感想を、1カ月かけて書き連ねながら、何回も泣いた。文章を書きながらあのかけがえのない素晴らしい時間を思い出して、泣いたのである。泣きすぎて画面が見えないくらい、鼻を垂らしながら泣いている時すらあった。
映画を観た興奮で、バカみたいに長い感想文を2本も書いた時も、こうはならなかった。
つまり、あんなに映画と同じくらい素晴らしいクオリティのライブでありながら、やはり、生で体験したTHE ERAS TOURは、まったく別格の体験であったのだ。
ライブ最後に披露されたKarmaについて「夜中に眠れなくてグルグルといろんなことを考えてしまう時、ポジティブかネガティブに感情が二極化してしまうけど、そういう時に自分自身を責めてばかりもいられない。そこで、思いっきり自分を肯定する曲を制作することになった。」
と、Taylorがインタビューで答えていたようだが、このフィーリングはライブ全体を通して一貫して感じられた。
母が死にそうで、そっちに時間割かれすぎて仕事も滞っていて、世界各地で理不尽な人殺しが起きていて、震災があって、そんな時に自分はこんなに金使って楽しい思いをしていていいのだろうか。そんな後ろめたさと、なんだってこんなに楽しいんだろうという興奮の絶頂が、波のように引いては寄せて、本当に頭おかしくなりそうだったんだけど、最終的にはものすごくポジティブな幸福感、自己肯定感を得て、残りのあんバターサンドを、氷の溶け切った薄いウーロン茶で流し込んだが、これがどちらも、富士山の頂上で食べるおにぎりとみそ汁くらい、感動的にうまく感じた。THE ERAS TOUR、すごいパワーである。後悔など微塵もない、完璧に幸せな気持ちで東京ドームを後にすることができた。
だけどやっぱり、こんなに素晴らしい、幸せに満ちた空間を作れるからこそ、どうか一言だけでも、虐殺に反対だと言ってもらえたら、この最高に幸せな空間を過ごせた気持ちに後ろめたさを残さず、連帯を示す場所になれるのにな。とも、思う。