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イタリアの報道が一番伝えたかった事

2021年3月17日(水)にラジオで話した内容の記録

新型コロナウイルスの状況

毎回、イタリアから中継する際に、
イタリアにおける、「新型コロナウイルスの状況」を説明している。
隔月で行っている中継で、よくこうも状況が変わるもんだと思う。

一日の感染者数について
2月の時点では1万人程度の横ばいだったが、
3月中旬の放送時には、連日2万人を越すまでに上昇した。
死亡者の数も、毎日400人以上に昇り、再び恐怖が襲ってくる。

そして、放送直前の日曜日から、
地域ごとに段階的に敷いている規制を、グッと厳しく引き揚げた。
イタリア全土の飲食店で、持ち帰りと宅配のみのサービスに。
ショッピングモールの生活用品以外の封鎖や、
学校もオンラインに切り替えるなどの対応に急変した。


そして、4月上旬の「復活祭(パスクア)」には、
全土で一斉に一番厳しい規制を行うことを発表。
家族の中で、大人2人の移動が一日に一回のみ可能。
朝5時から夜10時まで外出することができる。
基本的には、必要なければ外出はしない。
パーティもイベントも粛粛と家族のみですることになる。

パスクアは、イタリアの春の節目を表す宗教行事。
翌日も祝日になり、外でピクニックを行う習慣がある。
今年はそれもできない。
春の日差しを、家の窓から眺めながら、
屋内でピクニック気分を味わうしかない。


10年後の大震災報道

3月の忘れられない記憶と言えば、
3.11 東日本大震災。

今年は、10年という節目の年である。
イタリアでは、報道されるのか?どのように伝えられるのか?
気になったために、当日、テレビをつけてみた。


報道されるのだろうか?

大手テレビ局では、ニュース番組内の、
「海外ニュース」の、一つとして取り上げていた。

そりゃそうだ、世界的な大地震を伝えないなんて、
ジャーナリズムとしてありえない。

もう一つ、
イタリアの地上波のチャンネル数は、選びきれないほど多く、
あらゆるジャンルの専門チャンネルが揃っている。
その中に、「ニュース専門チャンネル」があり、
自分の好きなタイミングで、主要な出来事をチェックできる。

お昼に、このチャンネルを見てみると、
「トップ扱い」だった。

何を伝えたのか?

まず、追悼式が行われたことを、映像と交えて語られた。
菅総理や天皇皇后両陛下などが出席したこと、
一分間の黙祷を行ったことが主だった。
そして、被害者数や未だ福島第一原発の処理が
終わっていないことなどが報道された。

新聞各社の報道は?

ネットで、新聞各社の記事を片っ端から読んだ。
どれも、地震や津波の被害や追悼式について伝えた。

しかし、残念ながら、どの記事も、
被害者の現在の状況や復興については伝えなかった。

彼らの一番の関心は、
「福島第一原発の今」
だったのである。


地震が原因で、どのように事故に至ったのか、
どのように処理をしたのか、今、行っている作業など、
まだまだ時間がかかることを綴っていた。

極東の地で起こった、地震と津波と原発事故は、
まるで、日本全土が被害にあったかのような、
偏った捉え方をしているのが現実。


10年前のイタリア

イタリアでも、連日津波の悲惨なニュースは流れた。
それから、原発の事故についても伝えられ、
彼らは、再び襲ってくる、放射線に怯えたようだ。
1986年の、チェルノブイリ原発事故で、
イタリアにも風に乗ってやってくることが恐れられた。

それと同じように、
10年前の大地震で、1万キロも離れた日本から、
放射線を含んだ風が到達すると言われた。
この時、「Fukushima」と何度も報じられ、
10年経っても忘れられない名前となってしまった。


2012年のイタリアの実態
私がイタリア留学に来たのが、2012年の晩夏。
震災から一年以上が経っていたが、
日本人というだけで、知らない人からよく質問された。

「日本の家族は大丈夫なのか?」
「原発から遠いのか?」「私は日本の食材は買わない」
などということを何度となく聞かれたし耳にした。

彼らにとっては、
日本の国土や人口が、イタリアよりも倍以上あると
知っている人は少ないのかもしれない。
それは、地球を楕円形で表現した、「モルワイデ図法」の影響で、
日本が小さくなったことが原因の一つと言えるだろう。
しかし、彼らにとって、そんなことはどっちでもいい。
何より、自分自身の安全が一番なんだと感じた。
その分、日本はいかに思慮深い民族だということを実感した。


また彼らの根底に、こんなことがある。

原子力反対運動やチェルノブイリ事故の影響を受け、1987年11月に
原子力発電所の建設・運転に関する法律の廃止を求めた国民投票が行われ、
その結果、1990年までに核燃料サイクル関連施設を含む全ての
原子力施設が閉鎖された。
              (イタリアの原子力事情と原子力開発より)

持たないことを決めたイタリアだから、抱いた感情かもしれない。


勇敢なイタリア人ジャーナリスト

マイナスなことだけではない。
イタリアー日本間のニュースや海外の出来事は、
アメリカのAP通信やフランスのAFP通信などの
大手通信社の記者が取材したものが、翻訳して入ってくる。

そんな中、
イタリア人記者が福島で、自らの足で取材してきた内容を
イタリアのTVニュース専門チャンネルのサイトで見つけた。

その記者の名前は、ピオ・デミリア
彼についての記事があった。
30年以上日本に住み活動している超ベテラン。


2011年秋には、東日本大震災に関する本を出版
政治にも関心が深く、切り込んでいくような、根っからのジャーナリスト。
2020年、新型コロナウイルスにより大きな被害が出た、
ダイアモンドプリンセス号についての取材も行い、
常に、日本の "今” を切り取りながら、発信していたことが伺える。


取材Vで名前を言う

取材のVTRを見て驚いた。
足を運んだ福島で、インタビューに応えた人の名前を、
ひとりひとり紹介しながら、内容を端的に語っていた。

ココに、イタリア人らしい情の深さや、人懐っこさを感じた。

わざわざ取材に応えてくれた、大勢の人の名前を紹介するのは、
今までに見聞きしたことがない。
しかも、イタリア人に向かって日本人の名前を伝えても、
ほとんど訳が分からないだろう。


それでも、削らなかった理由は・・・


いかに、彼らと近い距離にいたか、懐に入り込み
語りきれない想いを受け取ったのでは
ないだろうか。


この他、未だ帰還困難区域があることや放射線量の多い様子、
ひっそりとした街の風景を映し、
最後に本人がマスク姿で重々しく語る。


外国の記者が取材したものを、翻訳するのと、
イタリア人が、イタリア語でリポートすることは、
説得力と言うか、熱量と言うか、感じ方が異なる。

日本から、発信しているジャーナリストが存在すること、
また、真実の核に突き進む人がいること事態が
何より嬉しい発見だった。


今回の放送の大テーマ

実は、ここまで書いておきながら、
OAより少し加筆している。
本番では、伝えたいことを全て言うことはできない。
しかし、生の醍醐味がそこにあるから、
瞬時の判断は、大きな刺激になっている。


さて、今回の中継で強く伝えたかったことがある。
それが、「選択的夫婦別姓制度」

3.11の前日に、政府はこれに関する話題を出した。
炎上しないように狙ってか、3月10日に発表したことからして、
気に食わないし、卑怯だと思う。

長らくイタリアから発信したかった内容だったので、
時間をたっぷり取ってもらった。

だが、ここには書かない。
もう2800文字を超えて、あなたも疲れているだろう。
時間と心に余裕がある時に読んで欲しい。

渾身の記事

では、Ciao ciao‼︎


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