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”紅く”長く”甘い”くちづけ”とPLASTIC LOVE #金曜トワイライト

”燃えるような恋”とは、強く生きた"生身"が残した”生命”のような気がします。

昭和の残り香があった平成はじめの頃。”紅く”硬く”冷たい” 罪なき恋”は、都会のコンクリートとプラスティックのすき間にありました。

※藤井風と書いてふじい・かぜ。オリコン・Billboardアルバム1位。期待の22歳。

平日と休日の境い目。金曜日の夕暮れは一瞬で終わりますが、少しだけお付き合いください。

#金曜トワイライト

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あなたの夢を見ました。カッコいいオトナの背中は、白くてサラリと綺麗でした。僕は優しさを知らなかった。恥ずかしかった。ちっぽけで何にもなくて小さかったけど、つま先立ちで背伸びばかりしていた。

ねぇ飛びこもうよ。

お台場が13号埋立地と呼ばれていた頃。レインボーブリッジはまだ建設中だった。東京湾は屋形船であふれてました。外に出てナルちゃんと一緒に花火を見ました。高層ビルの光が反射する雲を見上げると、生温い風が通り抜けていきました。

ナルちゃん覚えてますか。よく一緒に呑んだナルちゃん。何してるかわからないけどいつもカッコよかった。平成のはじめはそんな人がまだいましたね。ANAのCMにパイロット役で出てた白髪のナルちゃん。映画ラストエンペラージョン・ローンに似ていたナルちゃん。”ナルシスト”だからナルちゃん。ナルちゃんの一人娘が亡くなったあの夜、僕たちは一緒に泣きましたね。

誰かわからないけど、東京タワーを借り切ってくれて、ロールスロイスが迎えにくる。あなたの28歳の誕生日をお祝いした頃、僕はまだ22歳でした。あなたには”華”がありました。白金の坂の途中にある小さくて9人しか入らないバーのような店。一見さんでは入り難い雰囲気なのにいつも満員でしたね。今となってはあんな店はもうありません。あなたのような人に出会う事もなくなりました。人気者のあなたの警備隊。ナルちゃんと僕がいつも最後までいました。そのナルちゃんも亡くなってしまいました。


気がつくとあなたは何処かへ消えて”芝浦のゴールド”に置き去りにされた夜。愛に傷ついたあなたは冷たかった。あなたは孤独の友達だったのでしょうか。それとも全てがイヤになってしまったのでしょうか。あの頃わざわざ聞くような事はしなかった。その理由も今となっては知る由もありません。

本気じゃないから愛してるとか言わないでね。

深夜の西麻布を飲み歩いて、酔いつぶれたあの日。2階のあなたの部屋まで背負った日を忘れません。

ベッドに寝かすとき、ショートヘアで痩せっぽちのあなたは、バンザイをしたら、服がスポッと脱げてキューピーちゃんみたいでした。すべすべした白い肌に紅い華が咲いているように見えた。そっと首筋にくちびるを這わせると、小刻みに震えるあなたはぎゅっと抱きついてきた。あの時はじめて”可愛いな”と感じたのです。

昼すぎに起きて、口移しで水をのませてくれた。丁寧にごはんを作ってくれた。ひざまくらをしてくれた。大事にしてくれた。あなたの優しさは、どこからきたのでしょう。あなたは、カッコよくて、潔くて、優しかった。

雨のように通り過ぎる恋かと思っていましたが、凍えた心が溶けていきました。僕は冷たかった。恥ずかしかったのではありません。優しさに触れて自分の冷たさに情けなくなったのです。

ねぇおわりにしない。キリがないから。

僕は自分のことで精一杯で必死でした。会社に行きたい日は1日もありませんでした。翌日も泊まってベッドから見た臨時ニュースは”尾崎豊”の訃報でした。僕は優しさに飢えて、冷たくて、情けなくて、小さかった。PLASTIC LOVEは、優しく温かく柔らかかった。

令和のコンクリートとプラスティックのすき間に、屋形船の空は紅く染まっていくけど、あの夏とは違う。マジックアワーをあなたはどんな風に見ていたのでしょう。船にぶらさがる赤い提灯が灯って、みんながミスチルを謳う頃、ぼくは屋形船のうしろの方で眺めながら”優しくなりたい”と思いました。

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本気じゃないからスキ。大好きだから。

そっと胸の奥にしまった、紅く硬く冷たい”罪なき恋”は戻ってきません。だけど、それは一度きりだからいい。一度きりだから。あなたの”凛”とした孤高な姿のように。

いまなら僕は”柔らかく”甘く”優しく”できるかもしれない。”大きく”強く”抱きしめれる”かもしれない。だから屋形船に乗りましょう。そして”潔く”カッコいい”あなたと、”熱く”長く”甘い”くちづけをしよう。

遠く早すぎた空にいるあなたには届かないだろうけど。


#金曜トワイライト

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”恋い焦がれる”気持ちは数字では表せないように、なまめかしい”苦い恋”も文章には書けません。だから、焚火で燃やす ”枯れ木”のような” 甘く乾いた恋” だけが ”文章” にできるのかもしれません。共感はいつまでたっても書けそうにありません。あの海に見えた水平線の光りは見えるのでしょうか。

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これは「とある手紙」。手紙とは、特定の相手に対して情報を伝達するための文書のこと。それ以上でも、それ以下でもありません。誰が誰に出したのでしょうか。

あなたのnoteも読みたいです。ハッシュタグは #金曜トワイライト でお待ちしています。また来週・金曜日のトワイライトタイムにnoteでお会いしましょう。


ふじいかぜ”さん。スキにならないのが難しい。最後の青いハートに、このnoteを捧げます。


金曜トワイライト (10)


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Jun Ikematsu / 池松潤
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