素晴らしい歌姫に出会った #手紙小説
これはある日ふっと消えてしまった友達への手紙。そして才能あふれるミュージシャンのお話し。あの日の記憶から今日までを綴っておきたい。
#手紙小説
君が消えてしまってから10数年経った。君は優しくて、Jazzが好きで、僕より背が高かった。そしてイケメンだった。
ある日、君のかけたアルバムがよかった。凄くよかった。すぐにitune-musicで購入した。僕にしては珍しかった。
いろんな場所を走った。パンクを治してあげたり、大きな風車から夕日をながめたり。ロードバイクに乗りたいって言っても有言実行する人はすくない。実行するヒトは居ないんだ。だけど君はちがった。翌週に君は僕と一緒に走っていた。僕は本当に嬉しかった。あの頃の僕は、失意に満ちていて人生のすべてに失望していた。乾いていたのかもしれない。それを聞かずに一緒に走っていてくれた頃が懐かしい。
君は「才能は買えない、手放すと二度と手に入らない」と言ってたね。僕は文学で受賞したことがないし、広告の世界でも代表作を残せなかった。だから君がグローバル・カクテルコンペティションを逃したときの悔しさが少ししか解らなかった。わかった気がしただけだった。だから慰めもしなかった。それが礼儀だと思ったんだ。
あれからしばらくして忽然と居なくなったとき、またいずれどこかで出会えると思っていた。店の張り紙はやがて雨風で破れてなくなった。そして新しい店ができた。新しい店は場違いな店だった。
あれから10数年。僕はきみの言ってた才能に出会った。聞かせてくれたあのCD。覚えてるかな。
ライブに行ったらこぢんまりとした箱だった。そこには細くて抱きしめたら折れそうなほど華奢な女性が歌っていた。
あの日聴いたCD💿と同じで素晴らしい声だった。きみに聞かせたかったよ。曲の間のトークからも地頭の良さが伝わってきたし、もしきみが一緒だったらどれだけよかっただろう。新しい若い友達と古く長い友達を誘った。どの曲もステキで言葉にならない。
7年ぶりの復帰だとyoutubeで知ったとき。以前noteに書いたジェイコブ・コーラー氏だったから喜びが倍になった。
僕は「推し」って感覚が馴染めない。「才能に惚れる」ことはあっても「憧れ」という感覚はないから。生きてる時間は短い。だから悔いのない時間を過ごしたいと思う。7年の氷が解けて透きとおった碧い水に戻ったように、ヒトは新しい水にバージョンアップできるのだから。それを君につたえられたら良いのだけど。
そういえば。ライブの帰りの道で、新旧友人と夜中の蕎麦を食べながら気がついたことがある。僕らの時代には多様性なんてなかった。仕事しかなかった。生き残るのに必死だった。それもやがて才能がある若手に追い抜かれて山をよけて走るようになった。それも今では懐かしい思い出だけど。
きみは元気にしているかい。もしいつか街で見かけることがあれば、笑って手をふってすれ違いましょう。そして気が向いたら朝まで酒を酌み交わそう。あのミュージシャンがどれだけ素晴らしいか伝えるから。あれから時代はずいぶん変わった。It's time to let go. 積もるハナシを語りあおう。
ではまた。
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