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ネットメディア時代の「全方位型クリエイター」誕生とその意味 ―Re:Hack-リハック・髙橋さんとメモ少年・篠田さんをひも解いてみた

2024年テレビなどの旧来メディアは歴史的な構造変革期を迎えているように思えます。兵庫県知事選でのSNSの影響は「旧来メディアの報道の敗北」とまで論ずる意見もあります。

何をいまさらと言う方もいらっしゃるでしょうが、テレビは、「視聴者数」/「広告売上」/「報道ニュース」という3つの大きな部分で、ネットメディアと完全に主客逆転したのだと感じます。ご興味があれば下記YouTubeをご覧ください。

これは「資本主義のアップデート」にも繋がるテーマではないでしょうか。「知る」とは、資本主義の根本だからです。

この転換点において、二人のクリエイターの存在が際立ったように感じます。Re:Hack-リハックの高橋弘樹さん(43歳)と、メ~テレ・メモ少年こと篠田プロデューサー(28歳)です。このお二人は新しいコンテンツ・クリエイターの在り方を示しているのではないでしょうか。髙橋さんはテレビ東京での豊富な経験を活かし新しいビジネスメディアの形を模索し、一方メ~テレのメモ少年こと篠田さんは、Z世代の感性で従来の枠組みを超えた表現に挑戦しているように見えます。

なぜこの二人なのか?
ネットメディアを賑わすキーマンは多数いらっしゃいますが、番組作りへの向き合い方が違います。たとえばPIVOTの佐々木さんはMCで登場しますが、資金調達や上場を目標とする姿は経営者ですし、元テレ東の佐久間さんは芸人さんとの絡み方を見るとタレント的だと感じます。

ネットメディア時代の「全方位型クリエイター」
しかしこのお二人は、ネットメディア時代の「全方位型クリエイター」として動画コンテンツを作り続けています。このことに気がついたのは、私が8月に篠田さんの対談インタビュー記事を婦人公論.jpに書いたときからです。

篠田直哉(メモ少年)「小学校時代、ロバートのおっかけから始まった夢を〈就職〉で現実に。〈バズるコンテンツ〉は逆算して作る!」 #Yahooニュース

熱量高めの約6,000字。興味のある方はどうぞお付き合いください。

池松潤/Jun Ikematsu
コミュニケーションデザイン/事業計画/エクイティストーリー/エンタープライズ営業コンテンツ/マーケティング/コンテンツなど。スタートアップCEOの壁打ち相手。慶応義塾大学卒/博報堂を経てスタートアップの若手と世代間常識を埋める現役58歳。ときどき婦人公論.jpにコラムなど。 ⇒ https://lit.link/junikematsu




1:ネットメディア時代の 「全方位型クリエイター」の誕生とその意味

分業構造からの脱却がもたらす本質的変化

従来のテレビ業界では、番組編成、企画・制作、撮影、編集、広報は分業されています。これは単なる業務効率の問題ではなく、コンテンツの本質に影響を与えてきました。YouTubeやSNSが視聴率に影響するようになってくると分業しない方向が大事なことが分かってきています。特に「テレビ局がYouTubeを上手に使いこなしているか」という問題は、この分業構造に起因する部分が大きい。

高橋さんと篠田さんに共通するのは、これらの領域を横断的に担う「全方位型クリエイター」としてのスタイルに見受けられます。これは単なる「多能工化」ではありません。コンテンツ制作における、企画からPRまで「出口から制作内容を逆算」するという一気通貫する「クリエイティブ」を発揮することで、視聴者との直接的な関係を構築しています。ネットメディア(特にYouTube)へより深い理解と表現で再生回数を伸ばしているのです。

この状況を言語化した記事は、ディープでニッチなので、検索しても見ることがありません。だからこの記事を書いています。

新しい時代の「思慮深さ」と「その人らしさの本質」の体現

髙橋さんや篠田さんの現場の実践で特に注目すべきなのは、「思慮深さ」「その人らしさの本質」だと思います。「思慮深さ」は単なる「慎重さ」とは異なり「その人らしさの本質」として、高橋さんは経済コンテンツに対して「誰にもわかりやすい情報を」というスタイルや、篠田さんは「推し」への誠実な姿勢が、新しい時代における「その人らしさの本質」の実践例といえるのではないでしょうか。

これは、視聴者を単なる「情報の受け手」から「共感者」へと変えていく変化なのかもしれません。

2:Re:Hack-リハック 髙橋さんが切り拓いてきた道

◆Re:Hack-リハック・高橋弘樹さんプロフィール
株式会社tonari CEO・経済メディア「ReHacQ」プロデューサー。テレビ東京入社後、テレビでは『家、ついて行ってイイですか?』など企画・演出。同番組でギャラクシー賞、民放連賞。2023年3月に独立。新メディア『ReHacQ』を立ち上げる。YouTubeチャンネル登録数は現在・120万人を超える。

テレビ東京時代からの軌跡(2005-2024)

3:メモ少年・篠田さんが示す新しい可能性

◆「メモ少年」篠田直哉さん・プロフィール
メ~テレ(名古屋テレビ放送)コンテンツビジネス局 副主事。28歳。
1996年大阪府生まれ。小学生の頃からお笑いグループ・ロバートの熱狂的なファンで、ライブでメモを取り続けたことから「メモ少年」と呼ばれるようになる。より近づくために東京の法政大学に進み、学園祭の実行委員として3,000人以上を動員するロバートの学園祭ライブを成功させる。その後、メ~テレ(名古屋テレビ放送)に入社し、念願のロバート・秋山氏との番組制作やメ~テレ60周年記念番組『秋山歌謡祭』を実現。テレビ番組『激レアさんを連れてきた。』に出演したことがきっかけで、書籍『ロバートの元ストーカーがテレビ局員になる。~メモ少年~』を出版。さらに『秋山歌謡祭2024』で社長賞を受賞した。秋元康や女優・杏も注目するZ世代のコンテンツ・クリエイターとして活躍中。テレビ局の公式SNSアカウントは番組名で発信されるのが一般的だが、メ~テレは「メモ少年」名義でYouTubeチャンネルを展開。累積1,500万回再生を超える。

「推し活」から始まった物語(2018-2024)


4:二人のクリエイター/共通点と相違点

◆髙橋氏の追求する普遍性

・社会性と娯楽性の両立
・経済コンテンツの大衆化
・プラットフォームを超えた展開
「視聴者が理解しやすい内容を提供することを重視し、経済に興味がない人でも楽しめるコンテンツ作りを目指しています」

◆メモ少年が示す新しい感性

・演者への深い愛情
・全工程への徹底的な関与
・新しい時代の表現方法
「自分が担当する番組に関しては、出演する演者さんや、ゲストのことを一回とことんスキ!になって調べます」

◆異なるアプローチ

・髙橋さん:豊富な経験に基づく普遍的な価値の追求
・篠田さん:若い感性を活かした新しい表現の開拓

◆共通する『新しいコンテンツ作りの作法』

コンテンツへの深い愛情という点で共通するものがあります。『全工程に関わることで見えてくる本質』があることを示しています。得てして「メディアの民主化」や「新旧メディアの対立」という文脈で語られがちですが、本質はそこではありません。むしろテクノロジーの進化によって可能になった『新しいコンテンツ作りの作法』を示しているように思えてなりません。


5:「全方位型クリエイター」を生み出した「メディアの構造」の変化を数字で辿る

2024年は「視聴者、広告費、報道」3つのポイントからメディア構造が変化しました。テレビからyoutubeへ、プラットフォームがシフトした象徴的な年なのではないでしょうか。数字で追ってみましょう。

◆「メディアの構造」/視聴者の変化

テレビとYouTubeの視聴動向(2014-2024)

2010年から2024年にかけてのテレビとYouTubeの視聴動向は、特に若年層を中心に大きな変化を見せています。 ※コネクテッドTV白書2024より作図

◆YouTube視聴動向
視聴時間の増加:
YouTubeは特にスマートフォンでの視聴が多く、コネクテッドTVでの視聴時間も増加。2024年にはYouTubeがコネクテッドTVでの視聴時間で地上波放送に次ぐ位置を占めています。

◆テレビ視聴動向
視聴時間の減少:
近年、特に若年層(10代・20代)のテレビ視聴時間が大幅に減少しています。例えば、10代では2009年の140分から2021年には83分に減少し、20代でも同様の傾向が見られます。


◆「メディアの構造」/広告費の変化

◆テレビ広告費の推移

・2014年:1兆9,564億円
・2019年:1兆7,880億円
・2024年:1兆4,750億円

◆インターネット広告費

・2014年:1兆519億円
・2019年:2兆1,048億円
・2024年:3兆5,000億円
※YouTubeの広告収入は全体の約20%を占める

日テレ系列4社が経営統合へ
 札幌・中京・読売・福岡、持ち株会社

日本テレビホールディングス(HD)は29日、同社系列の札幌テレビ放送(札幌市)、中京テレビ放送(名古屋市)、読売テレビ放送(大阪市)、福岡放送(福岡市)の4社が経営統合し、認定放送持ち株会社「読売中京FSホールディングス」(FYCS)を来年4月1日付で設立すると発表した。

地方テレビ局の衰退は地方銀行の統合にならうのか。それとも準キー局を統合して攻めにでるのか。いずれにしてもネットメディアへのシフトは変わらない。


◆「メディアの構造」/報道・ニュースの変化

兵庫県知事選が象徴的でしたがSNSのPR活用を記したnoteに是非が報道されました。公職選挙法違反の可能性や、「マスメディアvs SNS」から生まれる拒否反応を予測しなかったのはどうかと思いますが、「法的」な問題は司法の判断を待つこととして、2024年は、SNSが選挙戦ニュースの主役に躍り出た象徴的な出来事として記憶に残るのではないでしょうか。

これを期に「選挙報道・ニュースのあり方」が考え直されたのは事実です。テレビは依然として主要なニュース源ですが、SNS利用が急増して、2024年には42.9%の人々が、SNSを通じてニュース情報を得ています。特に10代から30代のユーザーの約6割がX(旧Twitter)でニュースを収集しています。

ニュースを得ているメディア利用/2024年・モバイル社会研究所調べ

すでに視聴者は、ネットにある大量のコンテンツにアクセスしつつ、なおかつ「ネットメディアからの情報リテラシーを得る機会」を急増したのだと言えます。これは情報の接種スタイルが、全世代にわたり急速にネット空間にシフトしているのは間違いありません。

◆テレビ報道の変化

2024年の選挙では、SNSの影響力が顕著で、テレビ報道は選挙後の疑惑や問題点を十分に取り上げられず、「報道の穴」が指摘されています。放送法や公職選挙法による制約がある中で、テレビは公平な報道が求められますが、新たな情報や疑惑を取り上げることが難しくなっています

◆YouTubeとSNSの影響
YoutubeやSNSは、特に若年層において重要な情報源となっています。2024年の選挙では、SNSを参考にした有権者が30%に達し、これは新聞やテレビを上回りました。斎藤県知事の公式YouTubeチャンネルは約119万回以上再生され、SNSでの情報発信が支持基盤を広げる要因となりました。

兵庫県知事選における「マスメディアがYouTubeに負けた」というのは、メディア構造の変化をこのような「数字」が表しているのではないでしょうか。もし興味があれば下記YouTubeをご覧ください。


7:仮に「2027年から2024年」を振り返ってみる

2027年から見て、変わったもの(予測)
視聴形態の変化
・収益構造の多様化

2027年から見て、変わらなかったもの(予測)
・コンテンツの質/人間ならではの感性と判断力
・視聴者との信頼関係(エンゲージメント)/コミュニティ形成の重要性
・クリエイターの非言語能力/人間理解に基づくストーリーテリング


8:おわりに

2024年のRe:Hack-リハックの高橋さんと、メ~テレ・メモ少年こと篠田さんの「全方位型クリエイター」のスタイルは「メディア構造の変革」の中核なのではないでしょうか。これは、ある意味で「メディアの民主化」や「テレビvs YouTube」という二項対立的な視点を飛び越えて「コンテンツへの深い愛情」という普遍的な価値を体現しているように思えます。

「知る」という情報経済から、「共感する」という価値経済への移行。

2024年の兵庫県知事選での出来事は、単なるプラットフォームの勢力図の変化ではなく、むしろ「情報の届け方」そのものの質的変容を示唆しているのではないでしょうか。

これは「資本主義のアップデート」という文脈にも通じる示唆に富んだ出来事だと感じます。それは、従来の情報経済における「知る」という行為が、より人間的で深い理解を伴う「共感する」という行為に進化していく過程を体現しているからでしょう。この転換点において、高橋さんと篠田さんは新しい価値創造の先駆者として位置づけられるのではないでしょうか。

「共感する」経済効果の指数化が今後の鍵を握る

今後は、「共感する」部分の経済効果の指数を開発していくことが、お二人の活動をより「見える化」させていくのかもしれません。これらの指数はステークホルダーに対して、一層の説得力が増すと思われます。

1:「共感」がもたらす経済価値の数値
・チャンネル登録者の継続率(定着率)
・コメント数やエンゲージメント率と収益の相関関係
・「推し」コンテンツの視聴時間と広告収入の関係性
2:収益構造の変化を示す数値・比較
従来型の広告収入 vs コミュニティでの収入
(メンバーシップ課金など)
・「単発・視聴者」 vs 「コアファンによる収益貢献度」の比較
・コンテンツ1本あたりの制作コストと収益率の推移
3:視聴者行動の変化と経済効果の指標
・視聴時間とコンバージョン率の関係
・コミュニティ参加度とファングッズなど購買行動の相関性
・横のファン同士のつながりや相互作用がもたらす数値的な経済的波及効果

生成AI時代における「人間らしさ」の再定義。

テクノロジーが進化すればするほど、逆説的に「人間への深い理解」と「コンテンツへの愛」という、極めて人間的な要素が重要になる。この洞察は、今後のメディア論において重要な示唆となりそうです。

「人間への深い理解」と「コンテンツへの愛」は、新しい時代においてもクリエイティブの核心であり続けるでしょう。

本当は、この記事を「動画」にしたほうが良かったかもしれません。ディープでニッチなハナシですので検索しても見ることがありませんので速攻で記事を書きました。興味を持っていただいた方のお役に立てれば嬉しいです。

またnoteでお会いしましょう。
では



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Jun Ikematsu / 池松潤
チップありがとうございます! よい日をお過ごしください。