続・SNSネイティブと非ネイティブからみた「SNSでつくるモメンタム」をひも解いてみた
現代のビジネスにおいてSNSの活用は不可欠とされています(そう思っていないヒトも多数存在します)。その理解度や活用方法には大きな断層が存在します。今回は、意外とググってもSNS利用の主観的な体験談が多かったので、「モメンタムってどうすればいいいのか?」をもう少し「生のモメンタム論」を更に深堀りして「SNSネイティブ」と「非ネイティブ」の両視点から、日本のスタートアップ界隈で話される「SNSでのモメンタム」についてひも解きたいと思います。約5,000字。興味がある方はどうぞお付き合いください。
※前回noteから、「SNSでどうモメンタムつくるのか?」について個別のメッセージが来ました。ので詳細・深堀り版を書くことにしました。
第1章:SNSを取り巻く現状
1-1. 二つの世界が示す本質的な断層
現代のビジネスシーンでは、SNSに対する理解と活用方法において、明確な二極化が起きていると思います。
SNSネイティブ(Aタイプ)の世界観
SNSネイティブにとって、SNSは単なるツールではありません。それは「Give & Take」の世界観の中で、まず自らが価値を提供することから始まるコミュニケーションの場となっています。
◆特徴的な思考様式は以下の3つです
1. 「Give」を基本思想とする姿勢
価値提供を第一に考えて、その結果としてのリターンを期待する考え方です。これは従来の広告的な「押し付け」とは全く異なるアプローチ。コミュニティへの貢献を通じて、自然な形で関係性を構築していきます。
2. 明確なペルソナ設定による情報アウトプット
漠然とした「誰か」ではなく、具体的な顔の見える相手を想定した発信。課題と解決策を明確に示し共感を呼ぶコンテンツ設計をします。
3. 反応を重視した情報発信
そもそも反応と意見は違うものですが、この場合、受け手の反応を常に意識します。エンゲージメントを重視し、双方向のコミュニケーションを通じて関係性を深めていきます。
非ネイティブ(Bタイプ)の世界観
一方SNS非ネイティブにとってのSNSは、まだまだ違和感の残る存在です。その背景には以下のような要因があります。これは世代にかかわらず存在します。
1. 従来型メディアの価値観
速報性や拡散力においては既存メディアがSNSの後追いとなるのは理解しているものの、なんだかんだ、既存メディアの権威や信頼性に重きを置く考え方。実は既存メディア自体がSNSに振り回される構造に変化しているのに、思考様式が権威思考です。
2. 集合知としてのSNSの価値
SNSが持つ分散型の情報源としての価値や、リアルタイムのフィードバック機能、コアファンとの関係構築など、従来のメディアにはない特性の理解がない。この理解がないと、SNSを単なる情報発信の場としか捉えられず、その真価を活かせません。
3. 新しい情報環境への適応の課題
マスメディアの影響力低下や、ニッチ市場の重要性の増大、デジタルとリアルの融合など、情報環境の大きな変化へ対応できない。同じ渋谷の街を歩いていても、SNSを活用している人とそうでない人では、見えている景色が全く異なりますが、目に見えないので気がついてません。
1-2. (A・Bタイプ)両者の認識ギャップが示すもの
この二つの世界の間には、単なるツールの使い方以上の深い溝が存在します。それは
①:コミュニケーションの本質的な捉え方の違い
②:情報の価値や信頼性に対する考え方の違い
③:ビジネスにおける関係構築の方法論の違い
といった、もはや「基本OS」のレベルでの違いと言えるでしょう。
第2章:SNSネイティブのための具体策
2-1. プラットフォーム別の効果的活用法
各SNSプラットフォームには、それぞれ特有の特性があります。これらを理解し、適切に活用することが重要です。
◆X(旧Twitter)の活用
即時性と拡散力に特徴
①:タイミングを見極めた投稿
(ペルソナの受容時間にアップ)
②:ハッシュタグの戦略的活用
(発見性・共有性)
③:同時刻でのリツイートを通じた情報の連鎖的拡散
(アルゴリズムのハック)
といった要素が重要になってきます。特に業界トレンドや時事的な話題との関連付けが高い効果を生み出すことがあります。
◆instagram活用のポイント
視覚的な訴求力が特徴のInstagramでは
①:世界観を視覚的に表現
(シズル感)
②:ストーリーズを活用した日常的なコミュニケーション
(instagramメイン派に対応)
③:リール機能による動画コンテンツの展開
(縦型動画の活用)
が重要です。特に企業カルチャーや、プロダクトの利用シーンなど、視覚的に魅力的なコンテンツ制作(シズル感)が効果的です。そのための写真や動画素材を日頃から撮りためておく必要があります。もはや片手間の個人技では難しく、映画のように制作チームが必要です。
◆noteの戦略的活用
noteは深い洞察や解説を共有するのに適したプラットフォーム
①:専門的な知見の体系的な共有
②:シリーズ化による読者との継続的な関係構築
③:X(Twitter)との連携による相乗効果の創出
特に重要なのは、独自の視点や深い考察を織り交ぜた価値が提供できます。5,000字以上の価値ある情報を提供できることが重要で、文章を読める知力のあるヒトと繋がれることが特徴です。
◆Podcastの活用
音声メディアとしてのPodcastは情報発信コスパに優れる
①:専門的な対話の展開
・業界キーパーソンとの対談
・技術や知見の深掘り
・リスナーとの質疑応答セッション
②:シリーズ化によるファン基盤の構築
・コンテンツ編成を考えた定期的な配信
・テーマ別のシリーズ展開
・リスナー・コミュニティとの継続的な対話
③:他メディアとの相乗効果
・他SNSでの告知シェア
・視聴者参加型の企画との連携
・文字起こしコンテンツの展開
特にPodcastは、通勤時間や作業中など、他のメディアでは届きにくい時間帯にリーチできる特性があるのと、情報アウトプットのコストパフォーマンスに優れています。最初から文章を書くのは大変ですが、Podocast対談を文字起こしコンテンツの展開としてnoteコンテンツにすることが可能です。
2-2. 効果的な運用テクニック
時間効率を考慮した運用設計
SNS運用にはそれ相応の時間投資が必要
①:コンテンツ企画の準備と、コンテンツ編成など計画的な配信
(編集力と編成力が必要)
②:ツールを活用した効率的な運用
(新しい便利ツールの活用)
③:重要度に応じた対応の優先順位付け
(プロジェクト管理)
プロフィール設計の重要性
第一印象を決めるプロフィールは、想像以上に重要な要素です
①:信頼感を醸成する適切な顔写真の選択
(顔出しを嫌がるヒトが多いですが重要な要素です)
②:専門性と人格のバランスの取れた自己紹介
(時短時代のつかみの提供)
③:一貫したイメージの構築
(人格設定)
実は、多くの失敗はこの基本的な部分の軽視から始まっているように感じます。
2-3. 効果的なコンテンツ戦略
成功体験の共有という価値提供
手の届く成功体験の共有は、単なる自慢話とは一線を画す必要があります
①:具体的で再現可能な手の届きそうな成功プロセスをシェア
(手が届かない情報には反応が薄く、手が届きそうな情報に反応が集まる)
②:失敗から学んだ教訓をシェア
(成功方法より失敗しない情報に反応が集まる場合も)
③:受け手が活用できる実践的なインサイトをシェア
(再現性のある具体的な方法に反応が集まる)
※ここで重要なのは「意見」より「反応」に重きを置く情報発信の方が数字が伴う場合が多いことです。
組織文化の可視化
組織の価値観や文化を効果的に伝えることで、採用活動に良い影響をもたらします
①:チームメンバーの成長ストーリー
(採用に効果的。キャリアステップが伝わります)
②:日常的な業務風景の共有
(組織カルチャーや雰囲気が伝わりやすくなります)
③:組織としての価値観の表現
(カルチャーFitの事前準備につながります)
※採用活動への効果が一番最初に見えやすいと思います。
第3章:非ネイティブのための本質的理解のススメ
3-1. SNSの基本的な仕組みと特性
SNSの本質を理解するためには、以下の点が重要です
アルゴリズムの基本的な理解(がない)
①・投稿のアップのタイミングた拡散の仕組みの理解
(受け手を考えたアルゴリズムの理解)
②:エンゲージメントが果たす役割の理解
(いいね/シェアがアルゴリズムに及ぼすことの理解)
③:プラットフォームごとの特性の違い
(それぞれアルゴリズムが違う)
情報伝播の新しい形を理解(がない)
①:従来のメディアとの違い
(受け手は「他人の物語」より「自分の物語」へ反応する)
②:バイラル効果の仕組み
(アルゴリズムによる拡散の仕組みを理解する必要がある)
③:共感を基盤としたシェア・拡散
(苦しんでいるヒトへの理解など他者の感情の読み取り)
3-2. 効果的なペルソナ設定とエンゲージメント
ペルソナ設定は、単なる想像上の人物像ではありません
①:具体的なデータに基づく理想的な受け手像を持つ
(受け手の情報Lifeを読み解く)
②:ターゲット層の行動パターンの分析
(何に反応しがちなのかデータ分析)
③:コミュニケーション方針の策定
(どのような発信スタイルにするか人格や方針を決める)
3-3. 質的評価の重要性
数値だけでない、質的な評価の重要性を理解する必要があります
①:エンゲージメントの質的評価
(シェアへの協力などの評価)
②:コミュニティの形成度合い
(数ではなくコアファンの醸成)
③:長期的な関係性の構築
(即物的なメリデメの短期的な関係より長期的な関係)
第4章:「空気を読む」という本質
4-1. SNSにおける適切な振る舞い
SNSでの適切な振る舞いは、リアルな人間関係と本質的に変わりません。
①:距離感が適切な自己開示
②:相手への敬意
③:コミュニティへの貢献
4-2. 効果的なコミュニティ形成
コミュニティ形成には段階的なアプローチが必要です
①・信頼関係の構築
②:継続的な価値提供
③:メンバー間の交流促進
※これらを手短に言うと「片方向のプレゼン状態」ではなく、「コミュニケーションはキャッチボール」であるという点が挙げられます。
第5章:実践のためのロードマップ
この章については、実践的なワークショップやコンサルの場で共有させていただきますが、重要な方向性として以下の3つがあります
①:組織の状況に応じた段階的な導入(ステージ・マネジメント)
②:実施状況のモニタリングと改善(PDCAサイクルをつくる)
③:チーム全体での取り組み(一人に負担を増大させない)
が挙げられます。
まとめ
「SNSでのモメンタム」は、単なる情報発信ではなく、組織の価値観の体現と、関係者との信頼関係、そしてビジネスの持続的成長を実現する重要なツールとなっている状況のことです。これらは具体的な方法を実践することで、人材採用や資金調達まで幅広い効果があります。
しかし「SNSでのモメンタム」が「SNSって無料なんでしょ」という時代と変わらない認識だと、効果を得ることは難しいでしょう。
現実には「モメンタムって無料なんでしょ」という本音が見える経営者も数多くいます。その場合「SNSでのモメンタムを上手くやっといて」という丸投げの状況が発生します。多くの場合は「予算」も「人員」も貧弱なため打つ手が乏しくなります。
何故なら必要な「人員」や「予算」(外部への協力費)の意味と価値を理解している企業にはかなわないからです。「SNSなんて誰でもできる」だから「SNSを上手に使う」のは難しいのです。
経営者が自分でSNS発信を上手に使っているかで変わります。会社は経営者以上の器にはなりません。「SNSでのモメンタム」は経営者の理解度で変わります。
おわりに
重要なことは、Aタイプ:「SNSマーケを理解しているSNSネイティブ」のビジネスマンと、Bタイプ:「非SNSネイティブ」SNSを利用してないビジネスマンを「抽象化」して「俯瞰」してみると、このGAPが日本の社会構造そのものだとわかります。
ですので、Aタイプのビジネスマンは、できる限りBタイプの理解への協力関係を構築することが必要です。がしかし、そこにインセンティブ構造がありません。そのためAタイプとBタイプの溝(格差と言っても過言でない)が広がっているのだと思います。
この溝を一気に飛び越える方法は中々見つかりません。しかしながら、そのための地道な努力も捨ててはならないので、書き記しました。この気持ちと背景をご理解いただければ幸いです。
興味がある方は、前編とあわせて読んで頂ければ嬉しいです。
ではまたnoteでお会いしましょう