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真冬のレモンは小さくて甘く切ない #クリスマス金曜トワイライト ①

1秒が永遠になるような恋を書きたくなりました。じんわり溢れる魔法みたいに。

僕たちは何を失くして、何を得たのだろう。

恋は何歳になってもイイものです。むしろ歳を重ねるごとに純粋になっていくような気がします。そして相変わらずエモい文章は書けません。だけど一生懸命書いてます。平日と週末の境い目。マジックアワーはどんな空でしょう。あなたと一緒に過ごしたい。

※一緒に音楽を聴きながらどうぞ。

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クリスマス・イブは、1983年12月14日に発売された山下達郎の通算12作目シングル。2019年9月23日付でのオリコン週間シングルランキングでのトップ100ランクイン週数は通算150週で、SMAP「世界に一つだけの花」、中島みゆき「地上の星/ヘッドライト・テールライト」、夏川りみ「涙そうそう」に続き歴代4位。いまや国民的ソングに敬意を表したい。


※「クリスマス金曜トワイライト・イベント」とは
「恋愛小説をリライトした作品」をクリスマスシーズンに行う表彰式イベントです。
※恋愛小説・金曜トワイライトとは・・・
池松潤が書き下ろしたオトナの恋愛小説。7月~9月の毎週金曜日に配信されました。その作品をもとに自由にリライトしてもらうという企画です。初回10月の開催では1週間で48件の応募がありました。各参加者のフォロワーによりSNSでシェア&拡散されて、さらにnote公式編集部にピックアップされる等ヒット企画になりました。まったく新しいタイプのイベントです。
※イベント詳細については最下部をご覧ください


#クリスマス金曜トワイライト

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息はすでに切れていた。地下鉄の階段を駆け上がるとJRの改札が見えてくるはずだ。山手線に乗り換えれば15分くらいで着くだろうか。駅のホームまで考えてもギリギリ間に合うかどうかだった。走るのをやめたら楽になれるかもしれない。あきらめれば、もう走らなくて良いのに。

彼女は田舎に帰ると言う。このところ僕たちはいつもすれ違っていた。30歳を目の前にして焦っていた。理想と現実の狭間であがいていた。

僕は彼女からの手紙を握りしめていた。少し時間が欲しいと書いてある。東京の生活に疲れたと。それは僕との付き合いに疲れたと言われているような気がした。手紙の最後には、上野発の特急列車の時間が書かれていた。

何も見えてなかった。自分も彼女のことも。あと少しで手が届きそうな夢を追いかけることで目一杯だった。出世に目がくらんで夢が無い奴らよりも立派だと思っていた。新しいキャンペーンに必死で、結婚や子供のことなんて考えたこともなかった。


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JRの改札を超えると、長い階段を駆けた。電車から降りてくる人たちの波が降りてくる。右に左に波をかき分けていく。肩がぶつかるとチッ!と舌打ちが聞こえてきた。

みんな急いでいる。何かと競っている。負けて流れたらそれっきりで終わってしまう。仕事が終わってから彼女に会うと『なんか顔が険しくてキライ』と言われた。

出会った頃は背負うものなど無かった。採れたてのレモンのようにはじけて軽やかだった。いつからつまらない男になったのだろう。僕はいつもギリギリを走っていた。限界まで追い込まないと目指す頂上に登れそうもなかった。

あと少し階段を登ればホームだ。山手線の車両が見えてきた。あと少し走れば間に合う。これに乗れれば間に合うかもしれない。ホームから発車案内のベルが聞こえてきた。力の限りを振り絞ってホームへ躍り出た。閉まる寸前で滑り込んだ。冬なのに汗が止まらない。朝の車内は通勤客で溢れていた。


・・・・・

僕たちは品川・御殿山の住宅街にある美術館で出会った。モダンアート展のパーティー会場は賑わっていた。

彼女が場慣れしてない感じはひと目でわかった。アート作品を眺める姿は何か儚げだった。ショートカットにアニエスベーのバックをかけている。

『ココにはよく来るんですか?』

彼女は少し困った顔をした。少し間が空いた。僕は困った瞳をじっと見つめて返事が来るまで待っていた。

『いえ。はじめてです。。』
『僕もはじめてです。。。嘘です』

彼女がクスッと笑ってくれた。グラスシャンパンで頬は紅くなっていく。そして笑みが雫のように溢れていた。この素朴な笑顔に惚れてしまった。

広告屋と、書道の先生。全く違う世界に生きていた。だけど僕たちは気があった。彼女は素朴な学究肌で疑うことを知らなかった。僕は混沌とした正解のない世界で泥にまみれていた。違うから磁石みたいに惹きあったのかもしれない。

俯いたとき、うなじが綺麗だなと思った。僕は彼女の手を引いて、美術館を抜け出した。微かにレモンの香りがした。すべては輝いている。風が優しく頬を撫でていった。


・・・・・

上野駅は師走でごった返していた。山手線ホームから階段を駆け降りる。あと3分で特急列車は出てしまう。彼女はもう列車に乗っているのだろうか。

東北本線のホームを探す。一気に階段を駆け上がると長く伸びる列車が見えてきた。ホームには見送りや、これから乗り込む客で混み合っている。僕は飛び跳ねながら彼女を探した。

手紙が郵便受けに入ってたのに気が付いたのは朝だった。何日も前に入っていたのだろう。なんでもっと早くに気がつかなかったのか。彼女に2度と会えなくなる気がした。


・・・・・

季節外れの古い洋館のホテルは僕たち以外に誰も泊まっていなかった。しわくちゃなシーツの上で彼女は小さく丸くなっている。唇を重ねてうなじに舌を這わせるとレモンの香りがした。

『ズルいぃ』

よじれたカラダは上に上へと逃げようとしている。バターのように溶けて重なりあうと心の底まで繋がっている気がした。気がしただけなのかもしれない。

忙しくて夏休みのはずが既に冬になっていた。冬の伊豆は静かで暖かい。乱れたシーツに、白いレースのすき間から陽が刺していた。


・・・・・

雑踏のホーム。どこまでもヒトが流れていた。ホームにベルが鳴り響いている。人ごみのすき間から視線を感じた。振り返ると小さな身体に大きなバックを肩にかけている姿が見えた。

彼女の名前を叫ぶと驚いて振り返った沢山の視線が刺さった。人の波をかき分ける。ドアの淵にたたずむ彼女に手を伸ばした。届きそうで届かない。ゆっくりと時間が流れる。彼女の瞳からは涙がいまにも溢れそうだった。

「いくなよ」

彼女は何も言わなかった。目は必死に何かを言おうとしている。瞳をじっと見つめて返事を待った。数秒が永遠の宇宙のように感じる。ポケットから何か取り出そうとしていた。

発車のベルが鳴りやんだ。扉がしまる。頬に光りが流れていた。閉じたドアのガラス越しに唇がちいさく動いたのがみえた。

「ごめんね」

聞こえた気がした。いや。確かに聞こえたんだ。僕の手には小さな手紙が残された。2人の間を冷たい風が通り抜けていく。潮が引くようにホームから人がいなくなった。長椅子に腰掛けると封を開いた。


・・・・・

この手紙を読んでくれているなら、あなたに会えた時でしょう。身勝手なわたしを許してください。

本当はわたしは負けそうな自分が怖いのです。距離や時間が離れたとき、あなたが消えてしまいそうで。それが怖いのです。

ずーっと会いたかった。だけど言えなかった。あなたが仕事で活躍していけばいくほど遠くなった。

でもね。あなたに出会えてよかった。

ずっとあなたを感じていたいのです。あなたの頬や、あなたの唇に触れていたいのです。確かに一緒の時間をすごした日々を、心と体に焼き付けておきたいのです。

あなたが好きです。大好きです。

・・・・・

手紙が滲んで見えた。僕たちは何を得て何を失ったのだろう。今はわからない。いや本当はわかっているのに。


第一話・おわり
来週金曜日・第2話をお楽しみに
第3話まで頑張ります。
#クリスマス金曜トワイライト
編集 : 仲高宏 嶋津亮太

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【イベント予告】
オトナは恋かシゴトでしか変われない 
#クリスマス金曜トワイライト  

zoomで参加してる場合じゃないよ!東京に集合しましょ。スケジュールをチェックです!ことしnote酒場が開催されなかった分を楽しみたい!

#クリスマス金曜トワイライト
イベント概要(2020/11/13版)

※逐次アップデートされます。最新情報はTwitter

12/18(金) 
開場:18時半~
開演:19時~21時(予定)
会場:東京(どんな場所を探してるかも逐次公開します)
協賛:募集中(コラボ協賛へむけて走ってます。逐次公開します)
主催:金曜トワイライトプロジェクト(スタッフ募集は近日noteで)
※今回はソーシャルディスタンスを取りながら皆で集えるリアルイベントの発表・表彰式を開催します。奮ってご参加ください。詳細は後日発表いたします。

◆イベント内容
1:平山さんと 池松潤のトークイベント「何を書くか?」
2:応募作品・ノミネート作品の紹介(5分間プレゼンテーション)
3:サポーター紹介・コラボ協賛紹介
4:授賞式
5:受賞者による5分間プレゼンテーション(ZOOM)
6:会場とオンラインで全世界を結ぶ中継型・懇親会(オンライン+オフライン)

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◆「クリスマス金曜トワイライト・イベント」とは
「恋愛小説をリライトした作品」をクリスマスシーズンに行う表彰式イベントです。
◆恋愛小説・金曜トワイライトとは・・・
池松潤が書き下ろしたオトナの恋愛小説。7月~9月の毎週金曜日に配信されました。その作品をもとに自由にリライトしてもらうという企画です。初回10月の開催では1週間で48件の応募がありました。各参加者のフォロワーによりSNSでシェア&拡散されて、さらにnote公式編集部にピックアップされる等ヒット企画になりました。まったく新しいタイプのイベントです。


◆特徴について
初回10月はオンラインのみの開催でしたが、2000字超の恋愛小説を、各応募者が相当な時間を割いて書いたことや、1週間で48件の応募があり、新しいタイプのコンテンツ創作イベントとなりました。今回はイベントをパワーアップして、受賞作品を映像化します

※従来であれば「作品」(書籍)と「ドラマ化・映画化」(映像)は、
出版社やテレビ局・映画会社だけのものでしたが、noteとyoutubeを上手に組み合わせる事で「コンテンツ・エンターテイメントの民主化」への一歩を踏み出せると考えています。

◆リライト作品エントリーについて
1:池松潤が書く3本から1本を選んでください。
2:その選んだ作品の引用noteを貼ってください。
3:ハッシュタグ「#
クリスマス金曜トワイライト」をつけてください。
4:下記の理由を「追記」として書いてください。
「なぜその作品をリライトに選んだのか?」
「どこにフォーカスしてリライトしたのか?」
を本編の下に「追記」として必ず書いてください。


※応募エントリ―開始は12/4(金)トワイライトからです
※※応募期間を、〜12/11(金)23:59までを12/14(月)午前6時までに延ばします❗️

※賞の詳細や授賞選考ポイントについては11/27(金)UPの3本目までに予告します。よろしくおねがいします。


◆前回についてはこちらをどうぞ。
1週間で48件ものエントリーがあった「前回参加者作品一覧と池松コメント」をどうぞ▼


◆そもそも「リライト」ってなに?
「執筆者以外の人が、文章に手を入れて書き直すこと」です。または、ある文章を目的に合わせて書きなおすこと。 例)「記事を放送用にリライトする」など。クリスマス金曜トワイライトは、広義のリライトなので、恋愛文章愛があればOKです。


◆作品エントリーする効能とは?
1:「他人の書いたのはよ~く見える」から「自分のも見えるようになる」
2:人のダメな所とかココを直せば良くなるツボが見えてきます。
3:noteを一緒に育てるような気分になれます。色んなnoteをレーダーチャート診断で1万本ほど読ませて頂いて気が付いたのは「他人の書いたのは、よ~く見える」ことです。他人のをリライトすると楽しく執筆スキルがあがると思います。やはり恋バナは楽しいですね。


オトナは恋かシゴトでしか変われない 
#クリスマス金曜トワイライト


イベント内容は逐次アップデートしてnoteで公開していきます。


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一緒に受賞作品を映像化していただける「動画編集者」募集してます。

受賞作のひとつを映像化してYoutube配信します。映画のCMみたいな30秒をイメージしています。実写化する場合は、「脚本+撮影+出演者+編集+MA」と、めちゃお金が必要ですから、アニメ化という手法を考えています。noteお題企画でこんなこと事例は今までなかったと思うので、どうすればいいか一生懸命考えてます。一緒に「小説と映像」の新しいエンタメ空間を生みだしましょう。

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※ご連絡はTwitterへDMよろしくおねがいしまーす。詳細はDMでお話しします。過去作品のURLなどポートフォリオを教えてください。よろしくおねがいしまーす。


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Jun Ikematsu / 池松潤
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