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今週気になったテックニュース 2023.08.18

個人的に今週目にして気になったニュースやトピックです。テックと言いつつジャンルは雑多です。元々チーム向けに共有していたものですが外に出してみる試みです。ある種のスナップショットとしても後から見返すと自分でも面白かったりします。

…という冒頭の文章を少し変えてみた。


存在しない奥行きが視える「ハウス オブ ディオール ギンザ」のファサード

銀座のDiorのファサードにレンチキュラーが使われていて立体的に見えるようになっているらしい。Twitterに動画が流れてきた。すごく気になる。多分映像で見るより肉眼で見る方がより奥行きを感じられると思うので実際に見に行ってみたい。

レンチキュラー印刷は見る角度によって異なる画像が見えるように細かいレンズとそれに合わせて細かくが並んだような構造を作る手法で、これ自体はかなり古くからある。自分が子供の頃からこれを使った子供向けの本とかシールみたいなものはあった気がする。調べてみると1915年に発明されたようだ

詳細についてはこちらのページにあった。建築は谷口吉生氏。奥行きを持たせたいという発想からレンチキュラーの利用を思いつき、しかしこのサイズでは前例がなかったため、カッターの開発やプロトタイプの開発を多なったと書いてある。

今までにあったものでもより大きなサイズを実現するとなると新しい技術が必要になったりするし単純にスケールというものは体験を変えるのでそのためにマテリアル開発からできるというのはすごくいい仕事。

体験というものを作っていこうと考えるとやっぱりスケールというものに向き合わざるを得なくなる。そのスケールっていうのは物理的な大きさのスケールでもあるし、一時的なものなのか長期的なものなのかという時間的なスケールの話でもある。そしていずれにしても大きさというスケールや時間というスケールを考えるとやっぱり建築という分野は避けて通れないように思う。巨大なスケールというのはそれだけでスペクタクルだ。

…みたいな話を以前、自分も参加している「THE TECHNOLOGY REPORT」の特集「Spectacle」でも触れたりした。

そういう自分の興味のアンテナが向いているせいかわからないが最近も建築の分野で面白いなと思うものが多い。

以前も取り上げたかもしれないが、このVUILDさんのがCNC加工で型枠を作ってそこにコンクリートを打設して作った学芸大にある構造物。作り方から作る感じがめちゃくちゃいい。

話をレンチキュラーに戻すが、レンチキュラーの分野でも最近になって急にいくつか面白いなと思う事例を他にもいくつか目にして、100年前に開発された技術でもまだ新しい「おっ」に繋がるんだなという良い驚き。

出来上がった成果物自体はもはやコンピューターを必要としていないんだけれどもその製造の過程でコンピューテーショナルな手法、シュミレーションなどを用いた結果古い技術であっても新しいものが生まれるような作り方にすごく興味がある。

自分はクリエイティブコーディングやプログラミングを使った何かしらの表現などもするわけだがその時に思うのはこれは作るのではなくて作り方を作るのだなということだ。アウトプットそのものを直接作ってるわけではなくてアウトプットを作る仕組みを作っている、と言える。そしてリアルなマテリアルに落とし込むこういうのは自分はまだできたことがなくてすごく憧れるしいつか何か思いつきたい。

それはそれとしてこんな風に急にいくつかレンチキュラーで面白い事例が流れてきたというのは何か技術的なブレイクスルーがあったのかたまたまなのかどうなんだろう。特に直接的な関連性があるわけではないが同時代的に何かの技術や何かの表現が生まれるということは過去にもよくあるしその手の事例なのか。

「3D Gaussian Splatting」を用いたNeRFの品質向上の研究

複数枚の画像から機械学習を用いて3D空間を再現するNeRFの品質向上の論文。いくつかあるNeRFのメソッドのうちリアルタイムに良い品質のレンダリング結果の得られるので最近よく聞くし自分も使ったことのあるInstant-NGPだが、まだまだノイズは残るし、1080pで30fps出すのは難しい。

この新しい手法はInstant-NGPと比較してノイズも少なく本当に写真に見えるくらいだし、リアルタイムにより良いレンダリング結果が得られるとしている。

現在はまだ上のものは論文で、実装が公開されているわけではない。自分も最近少しNeRFを触っていて、Instant-NGPやnerfstudioなどを試しているが、より良い結果が得られるアップデートは楽しみ。

オフィスの一階スペースをnerfstudioで処理してみたサンプル。

文章校正ツールのOSS「textlint」

これは特に新しい話ではなくて私が今週知ったものだ。プログラミングの世界には「lint」と呼ばれるツールがあって、それは書いたプログラムを静的解析してくれるものだ。分かりやすく言えば書き方が変なところを見つけてくれたり、チームでこういう書き方にしようというルールを決めたとしてそのルールに沿っていないところを見つけてくれたり、また自動で修正してくれたりするツールだ。これが非常に便利で標準的に用いられるツールの一つになっている。

様々なプログラミング言語に対応したLintがあるのは知っていたのだが、自然言語の、普通の文章に対応したLintがあるのは知らなかった。

そしてそうはいいつつも英語には対応しているが日本語には対応していなかったりするんでしょう?と思って調べたところ作者はazuさんという日本の方のようで、日本語もいけると。

またまた僕たちの業界で技術的な記事を分かりやすく書いてらっしゃるので有名なICS MEDIAさんも導入されているようだ。これはチームで原稿を書く機会が今度ちょうどあるので、試しに使ってみたいと思う。

おわりに

今日はいつもより少し時間に余裕があったので溜まっていた色々な記事を読むことができた。レンチキュラーの事例は本当に面白くて今週色々な打ち合わせでこの面白いのがあるんですよ、と共有した気がする。ネタの数としては少なかったがそれを起点として話を広げることもできたしまあよかったかな。

このシリーズも今回で28記事目。28記事ということはだいたい196日くらいということになる。淡々と続けつつも色々変化を実験してみるというある種矛盾したものを両立させるのが面白いと思っていて、とはいえじゃあ何を変えるのよまだまだ思いつかないわけだが、とりあえず冒頭の文章を少し変えてみた。

タイトルも実際には「テクニカルディレクターが今週気になったニュースやトピック」であって、つまり膨大にある夜中の情報からあくまで僕という人間が僕という主観によってこれが今週面白いと思ったよみたいなところに何かしらの価値みたいなものがあるのかもしれないしないのかもしれないしみたいな実験ではある。

プログラムの世界ではミームまたは冗談として「完全に理解した」というものがある。これは以下のようなものである。

【エンジニア用語解説】
「完全に理解した」 製品を利用をするためのチュートリアルを完了できたという意味。
「なにもわからない」 製品が本質的に抱える問題に直面するほど熟知が進んだという意味。
「チョットデキル」 同じ製品を自分でも1から作れるという意味。または開発者本人。

エンジニアの言う「完全に理解した」「なにもわからない」「チョットデキル」って本当はこういう意味?「わかる」の声多数 - Togetter
https://togetter.com/li/1268851

これはある種の冗談でもあり、エンジニアにとってのある種の真実でもあり、というかエンジニアに関わらず何かを理解するということについての普遍的なミームなわけだ。

最近割と色々なことについて、色々試した結果「なにもわからない」という気持ちになっているものが多くて、まあそれがこのミームの意味通り理解が進んだ結果は分からないということなのかどうかわからないけれども、結局わからないものは分からないので、色々試していくしかないよね、みたいな気持ちに改めてなっているところである。

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