40歳からの大乱闘スマッシュブラザーズ⑤
珍獣である電気鼠とタッグを組んだ俺はまたもや魔境 オンラインへと向かった。ワシかて初老とはいえ何度痛い目を見ようが手を変え品を変え勝てるまでチャレンジする気概は残っているのだなと胸の奥に元童貞わんぱく男子の残り火を感じ襟を正しかわいすぎるウチの愛犬をピカチュウに見立て毛並みに沿ってゆっくりと撫でながら対戦相手とマッチングするのを待っていた。正直強者独特の余裕とオーラを放っていたと思う。
対戦相手来た!あ!知ってる!
ジェネリック緑マリオことルイージさんじゃん!おいおいいくら俺でもマリオの2Pカラーには負けませんよ黄鼠の雷で吹っ飛んでとっとと本業に戻れよ配管工。
試合が始まる。序盤その素早さで撹乱を目論む俺のピカチュウ。かわいいな。対するルイージはなんか腕をブンブンさせるいじめられっ子パンチで走ってくる。ハハハ、面白い動きだねえなんて言いながら見ていたらなんと突然何処からか取り出してきた便所の詰まりを治すスッポンみたいなヤツを投げ付けて来たのだ。
だがスッポンは俺ことエレキ鼠とルイージ自身の間にポテン…と落ちた。
「アラー!かわいいねえ!どうした〜?捨てたかったの〜?」などと言いながらブン殴ってしまおうと距離を詰める我が鼠。
そして次の瞬間それは起こった。
ルイージがまたもやスッポンをポイーンっつって投げて恐らくスッポンのカップの部分を鼠にくっつけて真空状態にして投げを放ったのであろう状況になっていてあらあらなるほど当たったらこうなるのか…
なんて思っている時何故か全てがゆっくりコマ送りのように見えるしその一コマ一コマの間にも沢山思考が出来る事に気付いた。
賢明な皆さまなら気付いただろう。この時俺は確実に『ゾーン』に入っていた。
ゆっくり飛んでは回転して飛び蹴りを連続で繰り出して来るルイージ。
とはいえ俺には全てが見えている…神の力を手に入れたと言っても過言ではないだろう…ヨシャ!鼠とルイージが重なるこのタイミングで雷を落とせばイケる!
そう思ってコントローラーを操作しようとしたのだがどうやら『ゾーン』には脳味噌だけが入っていたようでボタンを押そうとしている自分の指がすげえゆっくりコマ送りで動いているのを見て俺は力無くやれやれだぜ…と微笑み、画面に視線を戻すとルイージが異様な雰囲気と共にアッパーカットの構えを見せていてオイオイオイオーーイ配管工で鍛えた背筋で突き上げられたらオイオイオイオーーイ!って思ったし俺の鼠はジェネマリの拳に顎を的確に射抜かれて撃墜されていた。
神こと俺のゾーンは蹴られ放題蹴られて下から殴られて死んで終わった。
今夜は妻を激しく抱こうと思った。
強く、激しく抱こうと思ったのだ。