Starbucks in China
背景
近年、中国ではコーヒー需要が高まっています。スターバックス(以下、スタバ)は、1999年に中国に進出して以来、3,600店舗まで拡大してきました。スタバにとって、中国はアメリカの次に、市場規模が大きく、急成長しているマーケットです。一方、2017年10月に創業したLuckin Coffee(以下、ラッキンコーヒー)が、中国のナショナルブランドとして、中国消費者にものすごい勢いで浸透しています。ラッキンは、もうすぐ中国30都市に2,000店舗を持つようになり、2019年中には2500店舗まで増やす計画です。
中国コーヒー業界、競合状況、会社を分析し、また、中国で成功している他のケースもみながら、中国でスターバックスが何の戦略をもって成長を持続するべきか、提案していきます。
サマリー
・中国は、コーヒー消費という点では、まだまだ成長するマーケットとして伸びしろがある
・一方、スタバはCannibalization(自社製品間での顧客奪い合い)、激しい競争に直面している
・今後成長していくためには、デジタル化、ローカル商品、消費者との強いつながりが必要
スタバは中国人にとってどんな場所?
中国人にとって、スタバはコーヒーを楽しむ「第三の場所」になっています。
・家や仕事場の次に行く、「第三の場所」
・ちょっとした贅沢なもの・時間としてのコーヒー
・上質なカスタマイズされた飲み物や食べものが提供される
アメリカコーヒー文化との比較
中国の力強い経済成長・消費者の嗜好の変化は、スタバにとって楽観的な見ることができます。
・GDP成長率
中国の成長がどれだけ凄まじいか、アメリカと中国の差異でみると一目瞭然です。
・一人当たりの年間コーヒー消費量(カップ数)
アメリカが年間363杯飲んでいるのに対して、中国はたった3杯。もっと中国人がコーヒーを飲んでもおかしくないです。ちなみに、中国はお茶文化ですから、コーヒーを受け入れるようになったのは、顧客の大きな嗜好の変化です。(ちなみに、中国と外国の一人当たりの消費量をみて、成長余力があるという見方は、中国の戦略を描くうえで常套手段です。)
・2018年 中国におけるコーヒー市場規模(1カップ=1000億円)
アメリカは5,000億円市場規模。一方、中国は3,000億円市場規模。一人当たりの消費量からして、もっと中国の市場規模は大きくなるはずです。
・年間成長率(2018年)
アメリカでは、年間成長率が3%に対して、中国では20%。驚異的な成長率ですが、経済成長が凄まじい中国では、このぐらいの成長率でも違和感はありません。このポテンシャルをみると、海外企業が中国市場で活路を見出そうとするのことが納得できます。
中国コーヒーショップ市場のトレンド
中国のスタートアップ、ラッキンコーヒーが、テクノロジーを駆使したサービスを提供し、中国のコーヒーショップにディスラプションを起こしています。
・競争環境
Costa Coffee等ありますが、ラッキンが参入する前は、スタバが80%を占め、圧倒的なシェアを持ってました。ラッキンは、スタバよりも2割安く価格を設定し、価格戦争に持ち込んでいます。また、店舗は、ニューリテールコンセプトの下、モバイル注文しか受け付けません。
・顧客
今の若者が望んでいるのは、利便性(デリバリーの速さ)、OKレベルな美味しさ、ディスカウント(友達紹介するとBuy one Get one freeというようなもの)。OKレベルな美味しさは、けっこうなポイントです。凄くおいしいのは求めてなく、それなりに美味しかったら満足します。これまで、スタバが提供してきたものとは異なり、あっという間に若者の間で、ラッキンコーヒーが受けいられるようになりました。
・規制
ラッキンは、公の場で、スタバが独禁法に抵触していることを訴えました。具体的には、スタバが店舗を出してる敷地で、オーナーに他のコーヒーショップには貸し出さないことを強制している、というものです。このように、ラッキンは、真っ向勝負で、スタバに挑んでいます。
・代替品
コーヒーショップという枠組みを越えて、フードデリバリーサービスの美団(Meituan)、饿了么(Ele.me)が、同じようなコンセプトで、コーヒーを提供することは可能です。また、フードチェーンストア(KFC、マクドナルド)なども参入してくることは考えらます。
スタバが直面している問題
スタバは、今まさに、Cannibalization(自社製品間での顧客奪い合い)、ラッキンの参入による競争の激化、代替品へのシフトの問題に直面してます。
1.安価なコーヒーセグメントへ、過大な拡大路線を取りすぎると、逆にこれまで提供していた高価格のコーヒーの販売を侵食してしまう可能性があり、裏目に出てしまうかもしれません。
2.ラッキンが、スタバの独占的な態度に挑戦的な姿勢を示しており、政府からの規制等、経営リスクが高まっています。
中国は一つの国でも都市によって全然違う
ターゲット市場という点では、中国は大きく分けて3つの都市に分類できます。これらの異なる都市に、嗜好のあった商品・サービスを提供していくことが重要となってきます。
・高グローバルセグメント
珠江デルタ地区(広州、深圳)、長江デルタ(上海、上海近隣都市)、北京・天津地域
・ローカライズセグメント
ほとんどの中国中西部にある郊外都市
・準グローバルセグメント
「メガシティ」と呼ばれるような、福州,淄博(Zibo),青岛,惠州の都
今後必要となってくる取組み
今後、スタバがラッキンコーヒーに打ち勝って成功し行くためには、2つの取り組みが重要です。
・デジタル体験
すでに事前注文をして店舗で受け取るようなサービスを提供していますが、ミレニアム世代に合う、よりデジタル化したサービスの提供が不可欠になります。実際、アリババと提携し、デジタル化・デリバリー分野を強化しようとしています。
・ローカル商品
スタバの「TEAVANA(ティバーナ)」は、実は茶文化の中国から生まれたというのはご存じだったでしょうか。このような中国ならではで、流行りを起こさせそうな、フルーツティーのようなローカル商品を出せば、ラッキンとは違う付加価値を提供することができます。
以上
簡単ではありますが、スタバの視点から、ラッキンコーヒーがどのような取り組みをしようとしているのか、それに対してスタバは何をすべきなのか纏めてみました。少しでも参考になれば幸いです。