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あれ!?これ俺のサックスやんか!~民法~即時取得について

こんにちは! 趣味でジャズ・サックスの演奏活動をしているhidekiです。


先日、楽器吹き仲間からドキッとするようなことを聞いたのでそのネタから。




俺のサックスどこいった?

何か月か前のこと、音楽仲間がお店での楽器演奏の後、相当酔っぱらった状態で、ふらふらしながら何とか自宅まで帰ったそうです。


で、翌朝、目が覚めると、なんと! 自分のサックスが無い!


はて・・・どこに置いたのだか・・・皆目、見当がつかない!


さあ困った!


恐らく、電車で乗り継ぎなどしているうちに、どこかに置き忘れたのが濃厚……ということで思い当たるところに連絡をするけど、やはり見つからない。


さて。そんななか。彼が一番疑ったのは、ネットオークション。



管楽器の多くがそうですが、サックスも結構高価なんです。4~50万円は当たり前、100万を超えるようなものも勿論あります。



転売されている可能性があるのですね。



ということで……彼は執念をみせました!その数か月後、ついにネットオークションに自分の楽器が出品されていたのを見つけ出したのです。



写真をみると、これはもう間違いありません!!


早速、出品者に連絡を試みました。





すると出品者は言います。このサックスは友人から買ったものですよ。それは何かの間違いではないのですか?と。


いやいや。楽器演奏者にとって3度の飯より大事なMY楽器。見間違える訳がありません。


傷の場所、塗装が剥げた箇所、凹んだ箇所、楽器ケース、あらゆる部位の特徴が完全に一致しています。間違える訳がありません。


ハイ、そこで民法の登場です。


出品者の友人(無権利者)が、この拾ったサックスを自分のモノだと偽って、今回の出品者に売りつけ、そしてこの出品者が本当の事情(拾ったものであること)を知らずに、真っ当な売買取引によってサックスを取得したなら、実はこの出品者は、民法192条『即時取得』によって、完全な所有権を取得することができるのです。そしてこれにより、おじさんはサックスの所有権を失います。


民法192条 即時取得

取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めたものは、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を有する。
※動産とは不動産以外の世の中にあるもの全てです。
※占有とは実際にその物を支配している状態のことを言います。それは真の所有者つまり「所有権者」であるとは限りません。

民法192条より


え〜!!?そ、そんなことがあっていいのか!!



何でこんな条文があるのかと言うと、これは世の中の「取引」の安心安全を担保するためにこんな条文が設けられているのですね。もしこの条文が無かったなら、スーパーで買い物をするときでさえ、このお肉の所有権は本当にこのスーパーにあるんだろうか?なーんて考えてドキドキしながら買い物をしなければなりませんからね。



ハイ、でもしかし、ですよね。



それではいくらサックスを落としたという落ち度があったとしても、おじさんは納得できません。安心して下さい。次の条文で、法律はちゃんと守ってくれていますよ。



民法193条 盗品または遺失物の回復

前条の場合において、占有物が盗品または遺失物であるときは、被害者または遺失者は、盗難または遺失の時から2年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。

民法193条より


そうなんです。この193条によって、僕の音楽仲間のおじさんは、『そのサックスの所有者は俺だから返せ!』という訴えができるのです。自分のモノだという証明ができれば無事取り戻すことができます!!



そりゃそうですよねー。



……ということで、無事、めでたしめでたし、なのですが、



結局、このおじさんは、こんな訴えをおこす時間が勿体無いということで、苦虫を噛む思いで、オークションで落札して、取り返したとの事です。裁判となれば時間もかかるし、お金で解決したんでしょう。



てことで教訓。


今回の教訓、酒は飲み過ぎるな、と言うことですね(笑)



以上、最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

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