そんな「学力」が必要になってきている
「もし、地球が東から西に自転したとしたら、世界は現状とどのように異なっていたと考えられるか、いくつかの視点から考察せよ。」
東京大学理科Ⅰ類2014年度 外国学校卒業生特別選考小論文問題より
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この問題を知ったのは『2020年の大学入試』(石川一郎)であった。私には衝撃であった。とても簡単な日本語で書いてあるのに、問われているのはとても深い内容である。
これは、思考コードのCゾーンの問題である。
あらかじめ用意された唯一の答えがない問題である。その問題に、答えを出さなければならない。
そのためには、地球がどのようにして成り立っているのかの知識が必要になる。これは地殻やプレートや海洋などの基礎知識がまず必要になる。さらに、気象や天候のことも。そして、それに基づいて歴史上の出来事(元寇)なども知っていることが求められる。
つまり、思考コードのA,Bゾーンがないと、このCゾーンの答えは説得力を持ったものにはならないのだ。
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だが、この問題の本質は、Cゾーンを考えさせるというものだけにあるのではないと考えている。それは、条件の変化に基づいて、その結果に対して仮説を立てるというものである。
地球の自転が今と違って、東から西へと回るなんてのは、通常は「お前はアホか」で片付けられる議論である。そんなこと有り得ないじゃないか。有り得ないものを考えたり、議論したりしても無駄でしょというのが、多くの考えだろう。
しかし、これは大学の入試問題である。しかも、理科I類である。クリティカルに問題を捉えること、さらには、環境や条件が変わった時に、実験の結果はどのように変化するのかの仮説を立てる力があるかどうか。また、それを論理的に説明することができるかどうかを問う問題になっていると言えるのだ。
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新型コロナウイルスを解決するためには、この東大の入試問題を解く頭が必要になる。
ウイルスを撃退するための方法、ウイルスから身を守るための方法、ウイルスに感染した時に取る行動。これらを、まだよく分かっていないウイルスに対して解明すること。これは感染症の研究者が直面している喫緊の課題であることは確か。ただ、これは今までもサーズウイルスなどでやってきたこと。
ところが、大きな移動制限や入国制限は今まではほとんど無かったし、それに伴う飛行機会社の危機、観光業の危機、つまりは経済活動の危機に直面するということは考えられなかったわけだ。
「新型ウイルスが猛威を振るったら、世界の飛行機は半分が運休になります。この状況で経済活動を大幅にダウンしなくても済むような対策を立てなさい」
という問いに直面しているということになる。改めて、東大の入試問題を見てみよう。
「もし、地球が東から西に自転したとしたら、世界は現状とどのように異なっていたと考えられるか、いくつかの視点から考察せよ。」
実は同じ構造になっている。この時、自分なら自分ができることでなら何ができるのかを瞬時に考える。考えるだけでなく、行動に移すことができるかどうか。そんな「学力」が必要になってきている。
それは東大を目指す生徒さんだけに必要なのではなく、多くの人たちに必要なものなのではないかと、今回のことで考えている。
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