見出し画像

字をうまく書くためには

今年はまだできていないが、例年の授業では字の書き方を教えている。黒板に字を書くときに、自分の字が下手ではしょうがない。黒板に書く自分の名前の字を元にして、指導をしている。

字をうまく書くためには、結構、点画、運筆というこの3つが大事である。結構というのは、字の外形。点画というのは止めや払いの部分の工夫。運筆というのは筆や鉛筆の動かし方である。

しかし、この三つをいきなりやってもダメ。というか、三つを同時に身に付けることは初学者には難しすぎる。そこで、私が特に指導しているのが、別の三つだ。結構と字の中心の意識と文字の大きさを揃えることである。これで見やすい字になる。

1)漢字は、例外はあるが、原則として篇と旁があったら、旁の方が大きい。漢字の上の部分は右側が高くなり、下の部分も、右側が低くなる。この形の中に入れて書くだけでかなり違う。

2)編と旁があったら、旁の方が大きいということは、漢字は旁のところにその漢字の中心線が来ることがある。木のようなシンメトリーの字であれば、縦線のところに中心が来るが、池のような文字は篇と旁の間に中心線は来ない。その文字の中心線がどこにあるのかを確認して、その中心線を重ねるようにして書いていくと文字を書き続けても曲がらない。また、曲がったとしても修正できる。

どこに中心線があるのかを確認したい時、根本的にやるのであれば、『角川書道辞典』でその文字をコピーしてきて半分に折って、その折れた線で確認する。しかし、通常は教科書体で打ち出した縦書きのワープロの文字を半分に折れば、その中心線はわかる。そうやって確認しながら書いていく。

3)また、粒を揃えるということも大事。一文字一文字の大きさを同じにするのだ。そうすると美しくはないが見やすくなる。美しくするには、文字の大きさを変えていく必要がある。漢字が10だとすると、ひらがなは8ぐらいの大きさにする。

実を言うと、大きく書く漢字、小さく書く漢字。さらに大きく書くひらがな、小さく書くひらがなというのもある。例えば、ひらがなで言えば、「い、こ、る」なんてのは、小さく書くひらがなである。これを理解するには、蘇孝慈墓誌銘や粘葉本和漢朗詠集などを元に勉強するしかない。私はこれを大学二年生、三年生の時にやった。

まあ、そこまでやらなくても、1)〜3)をやれば結構見やすい字になると思う。
学生の感想である。一人目は、書道コースの学生で、もう一人は日本文学コースの学生です。

私が今回の授業で感じたことは3つある。
まず1つ目は、先生の添削のやり方である。

私が今まで習ってきた先生達は、私達が書いた名前の上から赤いチョークなどでそのまま直していた。だが、先生は、隣に同じ字を書きどこが違うかを本人に答えさせていた。こうすることにより、本人が違うところを認識する。その後、他の人、今回の場合は書道コースの人にどこが違うかを答えさせることにより、また新たな気付きが出てくる。

この方法にとても感動した。先生もおっしゃっていたように、ただ上から赤ペンで直されただけではあまり良い気はしない。その後、直されたものをみても何が悪いのかはっきりと分からないことが多かったように感じる。だが、今回の先生のやり方は、自分で気付くことが出来る。そして、他人から気付かされる。頭で考え、しっかりと理解できる。今までこういったやり方をする先生に私は出会えなかったが、私と出会う子供たちには、気付きのある添削をしようと思う。

2つ目は、授業の内容ではないが、先生の添削の時の対応である。

先生の喋り方は、私達が書いた字を否定するようなものはひとつも無かった。また、「僕はこう思うんだよね。」「こっちの方が大人っぽいんじゃないかな。」などのように、押しつけの意見も無かった。

私は、この先生の対応に感動した。添削とはいえ、自分の書いた字を全否定されてはやる気も出ない。先生のような対応をしてもらうと、頑張ろうと心から思える自分がいた。これはきっと子供たちも同じだと思う。私も普段から、相手のことを否定しないようには気をつけているが、これからも先生を見習い、意識的に気をつけていきたい。

(以下略)

今日の授業は私たちが黒板に書いた字の添削が主な黒板の実習授業でした。私たちは普段の課題として黒板に文字を書いていますが、それを先生に目の前で改善点を教わることができた貴重な機会になりました。

普段から私は書道などはしていないので人に自分の字を見てもらうことなどなかったり、別段上手くもないので人前に書くのは申し訳ないくらいでした。滑りこみで黒板トライをしたおかげで先生に自分の字の隣に書いてもらい自分の字と比較することができました。

先生も言っていた通り「本人が気づいたことに基づいて指導するとすんなりと入る」や「自分で認識しないと変われない」とあったように、隣にお手本を書かれてから自分の字と先生のお手本でどこが違うか考えました。

たくさんの違った点や指摘されて気づいたことを踏まえてお手本をなぞり書きしたところ、それまで難しく書きにくかった「優」が格段と上手くなりました。それが私にとっては嬉しくて嬉しくて何度も自慢していたほどです。

まだまだ先生からは改良の余地ありの字と言われたので今日の板書課題も意識して頑張りたいと思います。

この日は、黒板に書いた文字の指導だけで90分やってしまった。自分の名前を書かなかった学生の感想にも面白いのがあった。

最後に一つ、言い方は少し悪いが、ただ黒板に書いた名前を添削してもらっているだけの授業だったのに、授業を受けている側の集中力が全く途切れない事に驚いた。

普通、特定の生徒の解答を取り上げ授業を行うと、関係のない生徒は退屈してしまうものだが、それが全くなかった事に感動していた。

何故暇をしないのか理由を考えてみたが、池田先生は「一つの文字を解説する際、他に関連する文字があればそれも教えてくださる」からかと思う。

2)板書の添削だけの講義なのに、池田先生の授業は退屈するどころかとても面白く拝聴出来る。その理由は何にあると考えますか?

Re: 5月11日課題 o 2017/05/12(Fri) 09:23 No.412
自分に必要な力を学んでいると強く自覚できていたからではないでしょうか。子どもたちも興味があるものには深く食いつくのと同じだと思います。

Re: 5月11日課題 n 2017/05/12(Fri) 11:03 No.415
3) 私も同じことを感じました。個人の名前の添削ですが、その人だけに説明するのではなく、全体に話しかける話し方だと思いました。
またその人の字をきっかけに全体に共通する話題、字を書くコツなどに話を広げていくことにあると思いました。

メタ的に授業を見ているようで、嬉しい限りだ。
こういう前向きだと、スペシャルサービスをしてあげたくなるなあ。
「特別レッスン あなたの苦手な字を指導しましょう」
というのをやる予定(^^)。

いいなと思ったら応援しよう!

池田修
よかったらサポートをお願いします。いただいたサポートは、アーティストとしての池田修の活動費に使わせていただこうと思います。