御社の起用しているインフルエンサーは「認知」だけじゃなく「好き」を広げてくれますか?
昨日書いたnoteで、インフルエンサーに(お金を払って)広告メッセージを発信してもらう前に、まずはしっかり良い商品・サービスをつくることが最初だよ!ということを書きました。
その続き。
そもそも最高の商品・サービスって?
そもそも、最高の商品、サービスってなんでしょう。何が最高なのか。それは他の商品じゃ代替不能なのでしょうか。
僕は、26歳でマーケティングに携わる仕事に就いて、以降20年、商品開発やマーケティングリサーチやコミュニケーション戦略のご支援に関わってきました。
クライアントの90%以上は、メーカーやサービス企業です。
だから、企業の(広義の)マーケティング担当者が自社商品やサービスの品質を死ぬ気で向上させ、最高の商品をつくり(または改善し)、商品そのものでお客さん(消費者)を幸せにする、そして感動させることにたゆまぬ努力を続けてきたことを知っているつもりです。
それでもあえて言います。
もう、商品そのものの価値だけでお客さんを幸せにし、感動させることは難しいんじゃないか、と。
あらゆるものがコモディティ化してしまった
僕らは、人類が20万年の歴史の中で一度も到達したことのない、超高度成熟社会を生きています。
昔は、消費者のニーズに、企業の技術力(=当時の商品開発力)が追いついていませんでした。
だから、競合商品よりも「洗浄力がある」「おいしい」「耐久性に優れている」「燃費が良い」などの技術的優位性が高い商品が売れました。
いわゆる技術競争の時代です。
しかし現在は、多くの業界でオーバーシュートというポイントを超えたと言われています。つまり、消費者の未充足ニーズを満たす技術力を、すべての企業が持ってしまったということです。
どの企業も、消費者の未充足ニーズを満たす技術力を有している。となると、店頭には似たような機能や性能を持った商品が並ぶことになる。
これが、多くの業界で発生している、どの商品を買っても同じなら(=コモディティ化)少しでも安い方を買おう(=価格競争)の要因です。
「最高商品だらけ」の時代が最安を促す
店頭に並んでいる商品は、どれを買っても、僕らの未充足ニーズをほぼ満たしてくれます。言い換えれば、すべての商品が「最高の商品」の水準に達してしまったということです。
むかしは、同じ500円を払うなら、少しでも「良い商品」を買いたいと思っていたでしょう。でも、いまはすべての商品が物理的なニーズを満たしてくれる最高商品ですから、「同じ商品なら10円でも安い方を買おう」となる。
すべてが最高の時代は、最安地獄への入口だったんです。
最安商品を買わない人の心理とは
じゃあ、すべての人が最安値の商品を買うのかと言うと、そんなことはありません。
ほぼ同じ機能や性能の商品。500円で買える商品があるのに、なぜ650円の方を買うのか。それは「好きだから」です。
消費者行動研究の世界では(消費者の)ブランドへの態度は「認知」と「感情」の2次元があるとされています。
ものすごく簡略化した説明をすると、
ということです。この2軸でマップをつくると、4つの象限ができます。
このマップで見ると、「良い商品をつくれば、消費者は必ずわかってくれる」(買ってくれる、評価してくれる)がちょっと怪しいことがわかります。
「品質は良いけど、嫌い」(左上)→ 買わない
こういう商品、ありませんか? 一方、
「品質は悪いけど、好き」(右下)→ 買う
という商品はありませんか?(僕はたくさんあります)
つまり、「認知的要素(良い商品だね)で100点を取った後に、感情的要素(好き)で高得点を目指す」のではなく、「感情的要素で競合に勝った上で、できる限り認知的要素を上げる」ことが重要なのではないか。※ここ重要です※
「好かれること」を見くびるな
メーカーの人は真面目で実直です。
「素晴らしい商品をつくってお客様を感動させたい」「技術に裏打ちされた最高品質こそ我社の誇りです」
そのため、多くの企業が「好かれること」よりも「良い商品をつくる」ことを優先させます。優先させるというより、「好かれること」なんて眼中にない。
「は? 我々はメーカーだよ? 良い商品をつくることが使命であり仕事。好かれるとかどうかなんて結果論だし、宣伝とかそっち系の人が考えればいいんじゃないの? まあ、良い商品さえつくれば、好きか嫌いかなんて関係なく、お客さんは買ってくれるでしょ?」
でも、実際は、好きか嫌いかで、勝負のほとんどは決まっています。
日本のiPhoneユーザーは、なぜiPhoneを買うのでしょう。プロダクトの美しさ? カメラの画素数? UIの使用感? おそらく、90%のiPhoneユーザーは、「なんとなくかっこいいから」「好きだから」でしょう。
なぜ僕はTHE NORTH FACEやMAMMUT(マムート)の服を着て山を登るのでしょうか。それは好きだからです(吸水性や速乾性では選んでいません笑)
だから、僕は、すべての商品が最高レベルに達してしまったいまだからこそ、あえて認知よりも感情を優先させた戦略を実行してほしいのです。
「プロから見たらあそこの商品なんてぜんぜんですよ。なのに売れてるんスよね…。知識がない消費者はだませても、プロの目はごまかせませんよ。ああ!歯がゆい!」なんてこと、ありませんか。
商品を買うのは、知識がない(または限定的な)消費者です。プロ(あなた)ではありません。USP(Unique Selling Proposition)とは、消費者の目から見てUniqueness(唯一無二性)があるかです。消費者は、微細な商品スペックの違いに気づきません。そこに興味はないんです。
消費者の目から見て同じに見えるなら、好きな方が買われます。または、少しくらい劣っていても、好きなら買うんです。
「最高」から「最好」へ
うちは熱狂ブランドマーケティングを提唱しているので、ここは「最高から最愛へ」と言いたいところですが、「最愛」というとちょっと重たく感じるかもしれません。
だから、ここでは「最高から最好へ」と言っておきます。読み方はどちらも「さいこう」。
名付けて「最好(高)戦略」!!
ファンフルエンサーは感情的要素の伝道者
テレビCMなどの広告は、ほとんどが認知的要素をアピールします。何ができるのか、どういう特徴があるのか、どう素晴らしいのか、理性的、客観的、合理的に訴求します。
テレビは認知獲得メディアですから、それでも良いでしょう。
でも関与度も嗜好性も非常に高いコスメ商材が(従来型の)インフルエンサーマーケティングとして「可愛い子たちが顔の前で商品パッケージをパシャリ」なんてことをやっていると、「共感獲得メディアのSharedの場で(かつインフルエンサーという媒介を起用しているにも関わらず)ここでも認知的要素を訴求するかー!」と、唸ってしまうのです。
「好き(愛)はお金で買えない」からこそ
認知的要素の伝達は、お金で解決することができます。宣伝予算をたくさん使って、何回も、丁寧に説明すれば、理解度は向上するでしょう。
でも、お客様の「感情=好き」はお金では買えません。たとえ100億円の予算を使って「好きになってください!」ってアピっても好きにはなってもらえないんです(むしろキモがられて嫌われる)
だからこそ、感情的要素(≒好き)は、自社が、広告でアピるのではなく、ファンフルエンサーとの価値共創でつくっていくべきなんじゃないかと思うのです。
ボディビル選手権で優勝するために一所懸命身体を鍛えていたら、いつのまにか高感度選手権にルールが変わり、大胸筋の「だ」の字もないひょろひょろの奴が優勝して歯ぎしりする。
そんなことにならないよう、プライドと誇りを持ちつつも、勝つための戦いをすべきです。新ルールに対応すべきです。
好かれるためには、好いてくれる人たちと一緒に活動する。好いてくれている人たちが、仲間を増やす手助けをしてあげる。
少なくとも、「俺最高やろ!」「好きになってくれ!」と大声で叫ぶことではないと思うのです。
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疲れてきたので今日はこのあたりで(笑)次回はきっと「ファンフルエンサーと付き合うための基礎知識」について書きます。お楽しみに。
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