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息子の服が出戻りした日

とても悲しかったので聞いてほしい。
息子の服の話だ。

息子いーすけ(3歳)は服の好みがとてもうるさい。それはそれはうるさい。自分の気に入った服しか着ない。断固着ない。
気に入った服がどんなものかというと、とにかく「かっこいい」服。基本的に色は青か黒が好きなようだが、黒いズボンでも拒否されることもあるし、ベージュのTシャツでも「かっこいい」と着ることもある。彼の中に複雑な「かっこいい」基準があり、それに合うか合わないかは本人でないとわからない。

一度「かっこよくない」認定された服はどんなに褒め称えてもワッペン付けてアレンジしたりしてみても、断固着ない。
唯一、実家に行った際に予想を上回るスピードで服を汚されて替えの服がなくなり、これしかないんだよ!!かっこいい服汚したの自分でしょう!!と言った時だけは渋々着ていた。

そんないーすけだが少なくとも1年前はそれほど服にうるさくなかった。私の好みと財布の都合で買った服を文句も言わずすんなり着ていたと思う。
そして私はよくシーズン終わりのセールで翌年着られる大きめサイズの服を買っていた。「来年はこのサイズ着てるのかな、これ着たらかわいいだろうな」なんてぬるいことを考えながら…

着ないよその服。着ないから買わないで。

早まらないで…

…そして今年、うちのタンスには勢い余って買ってしまったかっこよくない服が一度も着られることなく眠っている。
もったいないのでなんとか活用したいのだが、一度貼られた「かっこよくない」レッテルを剥がすのは容易ではない。
しかし最近私は思い出したのだ。

着なくていい。

着なくていいけど必要な服があるじゃないか。

そう、保育園の着替え用の置き服だ。

正確に言うと、着なくていいわけじゃないけど着る機会が極端に少ない服である。

1〜2歳の頃は服を汚すことも多くて毎日着替えが必要だったが、最近は朝着て行った服のまま帰ってくることの方が多くなった。
それでも着替え用の服は必要なので2セット保育園に置いているのだが、使う回数が少なくてちょっともったいないな〜と思っていたのだ。

決めた。このかっこよくない服、全部置き服にしよう。

着替えがこれしかなかったらいーすけもこれを着るだろう。数回着たら案外家でもすんなり着るようになるかもしれない。

私は早速保育園の着替え袋を回収して中身を入れ替えた。




こうして何事もなく過ごすこと数日。

その日の夕方私が保育園にお迎えに行くと、いーすけは見たことのないズボンをはいていた。

保育園の服借りたのかな?今日は何回か服汚して着替えが足りなくなったのかもしれないな…なんて考えながら私は教室に行った。

先生がいーすけを連れて出てくる。

「こんにちは、いーちゃん今日お茶をこぼしちゃって…」と先生が話し始めた内容はこうだった。

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「…っていうことがあって、保育園の服お貸ししてます。園のズボンでなんとか納得してくれるのがあったので」

「す…すみません…」

いやもう本当すみません。さぞかしうるさかったことでしょうすみません…

そして先生はニッコリ笑って言った。

「なのでお母さん、よかったらいーちゃんの着替えの服、一緒に選んであげてください!
ね、いーちゃん、かっこいい服持って来てね」

「ウン」

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私は意図的にかっこよくない服を選んで着替え袋に突っ込んだことは黙っておくことにして、一緒にニッコリ笑った。

保育園でこれしかなかったら着るだろうという安直な考えは容赦なく粉砕された。彼は着ない。彼は断固着ないのだ。

ちなみに上のTシャツは着替え袋に入っていたものをなんとか着たという話だったが(たぶん保育園の服も全部気に入らなかったものと思われる)、家に帰るなり「これかっこよくないから着替えなくちゃ」と言って脱いでいた。
数回着たら家でもすんなり着るようになるかもなんて夢のまた夢である。

こうしてかっこよくない服はすべてうちのタンスに戻ってきた。




その日の夜、私はフリマアプリに登録した。

さよならかっこよくない服、どこかで誰かのかっこいい服になっておくれ…




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