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兵庫県知事選挙で考えたこと

日本中から注目されていた、兵庫県知事選挙。今回の選挙結果を見て、私が考えたことを少し書き記しておきたいと思います。

今回の候補者は7名で、そのうち、稲村和美さん、この方だけ、私はよく存じ上げておりました。私が議員になる前、前職は運送会社の代表取締役であったのですが、弊社が『あましんグリーンプレミアム』という表彰をいただき、その表彰式に稲村和美尼崎市長(当時)がこられていて、それがきっかけで以後毎年のようにお会いする機会を頂戴し、親しくお話しさせていただきました。

稲村さんは、もともと民間企業の出身でもあり、私たち中小企業の経済情勢に関する話もよく理解して聞いてくださり、また持ち前の明るさと親しみやすさで、とてもコミュニケーション能力の高い人だと感じていました。

そして、尼崎市長を勇退された後、議員向けのセミナーの講師もされていたのでご講義を拝聴する機会もありました。地方財政について、実践的な経験値に基いて理論を確立されていて、それを次世代の議員に対してわかりやすく説明する、リーダーとして理想的な能力を持っている方、と感じておりました。
稲村さん以外の、6名の候補者の方とは、私はお会いしたことがありません。

今回の選挙について、いろいろなファクターがあり、それらについて様々な捉え方があること、ご意見が交わされていることを承知しています。

選挙とは、公の仕事をしてもらう人を選ぶ仕組みで、その報酬は税金から。言い換えれば、税金で誰を雇うのか、票を投じて決めること。「この人だったら、税金払ってでもぜひ仕事してもらいたい」、と思える人に私は投票します。

私はこれまでながらく、仕事は「チームでやるもの」、すなわち、複数の人間が協力しあって成していくものと、考えておりました。個人の仕事能力もある程度必要ですが、それと同じくらい必要なのは、協力し合えるコミュニケーション力。そしてリーダーにさらに必要なのは、周りの人のモチベーションを引きだせる力と、リーダーとして信頼してもらえるための自己研鑽力。そのように考えておりました。

特に、組織が大きなものであれば、リーダーとして発揮すべき協調力も、あわせて大きなものが求められると思う。

その意味で、私は、稲村さんは、適任者だと思いますが、繰り返しになりますが、稲村さん以外の方とはお会いしたことがないので、わかりません。

今回の選挙結果を見ていると、私自身がこれまで考えていた、仕事論、リーダー論は、ズレてきているのかなと、いよいよ感じました。いよいよ、というのは、ここ数回の大きな選挙でも感じていたのですが、今回確信したという意味で。

チーム(複数人)で共に仕事のできる力というよりも、「個人の特徴・資質・能力」に注目し、投票している人の数が、多いように感じたのです。その投票も、「個人で情報収集して投票先を判断」しておられる、政党や政治家(議員、首長)の推薦や支持には断じて左右されない。そのように見受けられる場面が多くありました。

“必要とされる能力”、“評価のポイント”が、候補者個人の持つ力に集中している。有権者個人で収集できる情報「量」が、以前とは桁違いに多い。選挙期間中でも、次々と新たに情報があふれ、流動している。莫大な情報の中のどれに接しているのか、それが真実なのかデマなのか、判断不可能に陥っている感覚。

何に着目し、チョイスするのか、それぞれが個々に判断して、最終的に積み上がり投票結果として現れる、そこでは、これまでの、“常道”(よく見られるかたち)と思われることとは、全く異なる考えや行動も、多く示されたのではないでしょうか。

それにあわせてもう一点、「群集心理」について。
(組織や他者に依らず)個々で情報収集して判断している、その場面において、自分と同意見を見つけると、安堵し仲間意識が働いて、自分の思いも強調したくなる。例えばSNSに書き込むなど。
普段はあまり(政治に関することを)投稿されてなかった人も、今回の選挙だけは投稿されていた、という人も多かったように思います。

これからの選挙は、(今回の)兵庫県知事選挙が転換点だった、と言われるようになるかもしれません。
個人×SNS×群集心理=「風」
候補者それぞれのこれまでの長年の活動実績等よりも、選挙期間中の情報拡散量の多い人が「風」を起こした時、莫大な得票数に結びついて、投票結果として示される。このことをどう捉えるかは、判断の分かれるところだと思いますが、冷静に分析して風戦略を練り実行できる人が当選するのだとしたら、政治家とは何なのか、という根本的なところから変容してくる話です。

選挙のむずかしさ理不尽さは、前々から何度も見てきましたが、それに加え、怖さ危うさも随所に感じる知事選でありました。
自分自身の頭の中も、アップデートが必要、そのことを強く思い知らされた選挙でした。


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