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中国拳法と『四月の風』
小学5年生から中学2年生頃まで、家族でお金を出し合って、週刊少年ジャンプを買っていました。
1番読むのを楽しみにしていたのは、うすた京介先生の『ピューと吹く!ジャガー』でした。
死んだエビに首輪を付けて飼おうとしたり、音楽番組で笛を吹かずに叩いたり…ストーリーの面白さはもちろん、ジャガーさんやハマー、ポギーなどの魅力的なキャラクターたちに夢中になりました。
単行本を買い集めるだけではなく、めくるめけ日々(当時、うすた先生がやっていたブロク)の更新を心待ちにして、毎日のようにパソコンでチェックしていました。
私は小さい頃からひどく内向的で、同級生や教師、親戚など周りのありとあらゆる人と、上手く話すことが出来ませんでした。話しかけられても最低限の会話しかできないし、写真を撮るときもうまく笑うことができずに暗い顔でうつむいてばかり。
小学4年生のとき、底抜けに明るくて生徒に愛されていた担任に、
「今、おならをしようとしたけど、はまなさんが来たから止めた」
と言われたとき、こんな人にまで気を遣わせる自分ってまずいかもと、子どもながらに危機感を持ったことを覚えています。
このままではまずいと思いつつ何もできずにいたとき、『ピューと吹く!ジャガー』を中心にギャグマンガを読むようになって、少しずつ変化していきました。
マンガを読んで笑うことが増えると、日常でもちょっとずつ笑えるようになり、誰かと会話をして笑い合える喜びを知るようになったのです。
ふざけたことを言って、明るい人間の“フリ”をヘタクソでもできるようになったのは、ギャグマンガに出会えたおかげです。
無理に明るいふりをして、静かな空間が好きな友人に迷惑をかけてしまったなぁとか、クソ根暗のくせに何をやってるんだろうかとか、後悔もあるけれど…。
それに、今も私は相変わらず口下手で、ひとりで過ごす時間が好きです。
連載が終わって、ジャンプの巻末からジャガーが無くなり(この作品は読者の人気に関わらず、1番最後に掲載されていました)、膝から崩れ落ちそうになるほどショックを受けました。ジャガーの載っていないジャンプは、私にとってジャンプではありませんでした。
最終回のショックから数年経って、社会人として忙しく過ごしていたある日、YouTubeでうすた先生が出演しているCMを見つけました。
ギャグマンガを描く大変さを語る先生の姿から、子どもの頃は想像も出来なかった苦悩を、初めて知りました。先生が中国拳法をやっている様子を見ているだけで、泣いてしまいそうになります。でも同時に、なぜか勇気が湧いてきます。バックで流れている、エレファントカシマシの『四月の風』のおかげでしょうか?疲れた心と体にじんわり響く、すてきな曲ですね。日常の中で、つらいことがあったり、悩んだりしているときは、この動画を見るようにしています。
この動画の影響で、私も中国拳法の"モノマネ"をするようになりました。
そのとき脳内でイメージするのは『少林寺木人拳』のジャッキーチェンです。
でも、運動神経が悪すぎて、私は気持ち悪い動きしかできません。自分で自分を笑ってしまいます。
自己流の"へなちょこ拳法"をしながら『四月の風』を聴くと、笑えるし、元気が出ます。
うすた先生の受け売りではありますが、気が向いたらどうぞお試しください。
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