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先生、どうか皆の前でほめないで下さいを読んで思うこと
先生、どうか皆の前でほめないで下さい
金間大介(著)
完全理系人間だった私は理系のテストはできるけど、文系はからきしダメでした。高校ではなぜか理系の先生たちは高得点者を発表し、文系の先生たちは発表しないので、私は全体的にできる人と間違って認識されてしまっていました。そんな時にタイトルに似たようなことを思っていました。そんな昔のことをタイトルを見て思い出したので、買ってみました。
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どんな本か
大学生から新社会人くらいの現在の若者たちの考え方や行動を実体験を含む、データから分析されて解説されている本です。面白く書かれているので、思ったよりすらすら読めますが、内容は意外なことが多くありました。若者と接せる人たち(上司や先生)に向けたメッセージと、若者に向けたメッセージもあるので、幅広い人が読んで参考になると思います。
筆者の思い
本書では、大学生を含む現在の若者たちを主な対象として、彼らが抱える複雑で微妙な心理を解説していく。本書は、可能な限り、わかりやすく、楽しく、下手なジョークを交えながら進めていこうと考えている。そして可能な限り、現在の若者たちをコミカルに(多少シニカルに)描写していこうとしている。若者からは、本当に多くのことを教わる。そして、もし変わる必要があるとしたら、それは彼らではなく大人が作った社会のほうだと、強く感じさせられる。あなたに、本書を読みながら何かを考えてくれたその時間を届けるために、私はこの本を書いている。その思考の積み重ねが、今の社会を少しずつ良くしていく。極めて非論理的な妄想だが、結構本気で信じていたりもする。
読んでのまとめスケッチ
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読んでの思考
最近の若者(の多くはということで全員ではないですが)の行動基準がわかりました。私の場合は点数を発表するならば、全科目を発表することで正確な評価をしてほしいと思ってましたが、最近の若者は周りから目立ちたくないから全てにおいて発表しないでほしいということでした。
さまざまなデータが例として上がっていましたが、一番以外であったが、公正な分配は平等分配が一番だったことと、企業選ぶ理由の1位が安定している企業だったことです。
なんとなくですが、「意識高い系」と言わられながらも、最近の若者は、実績・努力が評価され、やりたいことができる働きがいのある会社を選ぶのかと思ってましたが、それは一部の若者だったようです。そして、企業を選ぶ理由で、働きがいが思っていた以上に低かったです。(働きがいは働いてみないとわからないということもあるかと思いますが。)
最近では「意識高い系」とは言わず「すごい人」と言うようになっているそうです。主体性のあるそんな「すごい人」を企業はほしいと考えているのですが、若者が会社を選ぶ理由と異なっているので、そこにずれが生じてそうです。「安定している企業」だと大企業で長い歴史がある企業に部があるのですが、若者のいう安定はというと、精神的に安定して仕事ができるかというメンタルの安定のことだそうで、会社が潰れないとかではないそうです。大企業で約150年続く会社に「安定」を求めてやってきた人が毎日追い立てられながら仕事をするのは精神的に「不安定」に思えてしまい、ミスマッチが起こりやすそうい気がしました。
多くの人が「やりがい」や、「やりたいこと」がない、見つからない、ということから、とりあえず安定した仕事を選ぶことにつながるのかと思います。選んだ仕事がやりたいことではなかったときに、それでも続けるには、モチベーションが必要で、本書でそのモチベーションには①ヒト、②コト、③場所の3つがあると書かれています。(詳しくは筆者の「モチベーションの科学」に書かれているそうです。)
「不安定」な業務が②コトとして合わなかった場合、①ヒトと③場所が残ります。会社では配属などの場所は希望通りに行けるとは限らないし、同じく一緒に働く人も選べません。そんな状況でも、若者が合うであろう人(自分)は自分でコントロールできるので、自分のやっている姿を見せてモチベーションを持ってもらうしかなさそうです。(目的を持った持った学習で自分を強くすることが進められています。)
仕事で人と関わり、人を動かそうという話になると「やってみせ、〜」の山本五十六の言葉を思い出します。本書にもその記載がありました。「山本将軍、本当でありますか?いくらやってみせ、言って聞かせても、一向に自ら動く気配が感じられませぬ」と。本を読んで自分なりに現代版を考えたところ、「やってみせて、まずは責任がないことを言って聞かせて、参考にできる例題を渡してやらせてみて、周りに人がいないところで誉めてやらねば、人は動かじ。」となります。割と大変です。
山本五十六の言葉には続きがあって、
「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。」
とあります。マニュアルやガイドラインがない仕事を「わからなかったらいつでも相談して」と言ってくる上司は、理不尽な上司と思われてしまうそうで、なかなか大変です。とはいえ与えているだけだと現実社会の真実を考えるとお互いに良くないので、「してあげたい欲求」をうまく抑え、個人と接しながら「自分はもう一度これをやりたい。今度は絶対成功させたい。だから手伝ってもらえないか」と若者の心を動かす最強のフレーズを使うのが良さそうだとわかりました。
若者ではなくても、そう言われればそうかもと思うことがありましたので、紹介して終わります。
・社内の表彰制度の〇〇賞は社員サイドはモチベーションは上がらず、長期的にはもらった社員でさえあまりモチベーションは上がらず、下がる可能性もある。
・集団の規模が大きければ大きいほど、不確実でチャレンジングな課題に直面した場合に、集団の愚に陥りやすい。