こんなに違う?!CO2の季節変化~北半球と南半球

産業革命前は278ppmであった大気中の二酸化炭素は、今や1.5倍ほどの410ppmを超えていて、右肩上がりの傾向は全く衰える様子はありません。「人為起源の二酸化炭素排出が地球温暖化をもたらしていることは "unequivocal" =疑う余地がない」というのはIPCC第6次報告書の最も大事な結論の一つですから、とにかく化石燃料依存の社会を一刻も早く大転換しなければなりません。
 そのためにも、二酸化炭素濃度の値に対して、私たちは敏感にならなければいけないと思います。下の図は、全球平均CO2濃度の推移を表しています。

全球平均CO2濃度の月ごとの変化を示したもの。NOAAのGlobal Monitoring Laboratoryにあるデータ( Globally averaged marine surface monthly mean data )をプロットした。世界中でCO2モニタリングしているデータを用いて、緯度ごとの平均濃度をもとめて、そこから全球平均の指標となるパラメーターを計算しているようだ。詳細はここにある。

ここでは、CO2濃度が”年々”順調に”上昇していることがはっきりと見えています。加えて、周期的に増減を繰り返していることもきれいに見えています。この周期はなんでしょうか?上のグラフの最近2年間の部分を拡大してプロットしてみたのが下の図です。極小値は8月、極大値は4月に観測されていることがわかります。

全球平均CO2濃度の最近2年間のプロット

 この振動を作り出しているのは、植物の光合成量の年間の変化だということが推察されます。夏季の方が日照時間が長く、気温も高く、植物の光合成がより盛んになるため大気中のCO2を固定する能力が高く、その分大気中のCO2濃度はさがることが期待されます。でも、8月が夏というのは北半球の話です。南半球は逆に冬なので植物はもっぱら呼吸をしているから、北半球の植物の光合成量と相殺してもよさそうなものです。北半球、南半球で、CO2濃度の変化はどのようになっているのか、世界各地の濃度を見てみたくなります。
 二酸化炭素濃度の観測は、世界中で行われています。そのデータは、たとえば日本の気象庁がとりまとめているWorld Data Centre for Greenhouse Gasesというサイトにあります。

World Data Centre for Greenhouse Gases

Click here for detailsのところをクリックすると、このような画面が現れます。

まず「Map」のところをクリックしてみますと、CO2の定点観測を行っている場所の地図が現れます。

CO2の測定ステーションの分布

次に「List」へ戻って「CO2」のところをクリックすると

https://gaw.kishou.go.jp/search

データ一覧が現れます。

CO2データリスト

右端の「png」をクリックするとどのようなデータが入っているのか、プロットされている図をみることができます。中央のカラーバーは、観測データが何年から何年まで存在しているのかを示しています。
 fileのところをクリックすると、その詳細が現れます。Typeには、hourly, daily, monthlyとあり、データフォーマットには、「Text」と「NetCDF」とがあります。用途に合わせて欲しいデータセットを取ってきます。


私の職場ではNetCDFファイルを使うソフトがないので、たとえばMonthlyのTextデータをダウンロードしてみました。すると、以下の様な中身のファイルが得られ、2列目に年、3列目に月、14列目にCO2の値、そのほか緯度、経度などが入っています。

ダウンロードしたテキストファイルのヘッダー部分
ダウンロードしたテキストファイルのデータ部分

このような方法で、ハワイ・マウナロアのデータを取得して、グラフを書いてみたのが下の図です。ハワイは北半球です。

マウナロアのCO2濃度の極小は9月で、極大は5月になっていました。
 さて、続いて南極点のデータを見てみます。

季節変動はあるものの、その振幅はとても小さいです。拡大してみましょう。

南極

南極の場合、極小が3月、極大は11月前後であることがわかりました。
 南半球の季節変動の振幅が北半球に比べて小さいのは、陸地面積が南半球は小さいからだといわれています。つまり南半球の光合成量は北半球に比べて小さいため、CO2濃度変化に与える影響も小さいということです。なので、全球でみるとCO2の季節変動に与える植物の影響は、北半球の植物の影響が主であるが、南半球の植物の影響もそれなりにあり、極大極小の月が微妙に北半球のそれとはずれてくるということなのだと思われます。北半球での極小は9月ごろですが、南半球の極大が11月のプロファイルを足し合わせると、全球では極小の時期が8月にずれるものと解釈できます。同様に、北半球での極大は5月ごろですが、南半球の極小が2月ごろなので、全球のCO2極大が4月へとずれるものと解釈できます。

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