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職在広州 出張者対応の流儀
(Whenever広東、2011年11月号を再編しました)
毎年秋になるとここ広州ではイベントやらで仕事が忙しくなる。自ずと各地からの来訪者や出張者が増えるので、連日のように昼食や夕食に彼らを引き回すことになる。放っておけばいいではないかという意見もあるが、やはり広州は黙っていてもたくさん関係者が来てくれるという土地ではないので、上海や北京とは少し訳が違うだろう。仕事以外のアトラクションでいい思い出を作って持って帰ってもらい、「また行きたい」「また広州で仕事がしたい」と思ってもらえれば本望である。このため、ジェトロ広州では「1回目の出張者にはホスピタリティをもって臨め」、「2回目の出張者には前回を上回るアテンドをせよ」、「3回目以降は放っておけ(もう親派だから大丈夫という意)」を合言葉にアテンダー教育が施されている。
1990年代にハノイに駐在していた時、出張者の昼食と夕食は頭の痛い問題だった。3泊されると連れて行くレストランがなくなってしまうほど、選択肢は限られていた。当時からベトナム料理はそれなりに知名度があり注目されていたから、出張者が日本食や中華や西洋料理を選択することはまずない。結局、駐在員は毎晩か一日おきに同じベトナム料理屋に足を運ぶことになる。客人はメニューの写真が面白いから興味深く眺めているが、気心知れたウェイターにメニューも見ずに次々と「いつもの料理」を注文し、出て来た料理の講釈や説明、ギャグなども毎晩同じことの繰り返しとなる。
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広州はその点便利だ。世界各国の料理もあるが、何といっても地元のB級グルメが多岐にわたって存在し、かつ美味いのである。最近は「猪肚鶏」というモツ鍋にはまっている。胡椒の効いた鶏ガラのスープに豚のモツを入れた鍋料理であるが、これは絶品だ。安いくせしてその美味さたるや、そのコラーゲンの溶け出した獣臭い濃厚なスープを口に含んだ出張者は皆一様に歓喜の声を上げる。そして会計の際にも再度、驚愕の安さに悶絶することになる。食べ終わった自分の服や荷物が獣臭くなるのが難点だが、豚の贓物が自分の五臓六腑に染み渡る感じがたまらないのだ。
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他にも羊の串焼き、牛肉拉麺、四川料理、広東料理などを緩急つけて織り交ぜれば、1週間でも2週間でも出張者を飽きさせない。これでもかと引き回し、パンチのある辛い系と薄味料理とを交互に波状攻撃のように加えていくと、年に1回か2回だが、出張者のなかには「今日はホテルのルームサービスにします」と休戦を申し出る人がいる。そんな時は「勝った」と小さく心のなかでガッツポーズをして自分も家に帰って茶づけなどをすすり食傷気味な胃を休めるのである。