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中山道・木曽路歩きの旅

2年ほど前、中国・深圳に住む友人からゴビ砂漠を歩く旅に誘われました。わたしはアウトドア好きというわけではないのですが、あまりの唐突な誘いだったので思わず快諾してしまいました。

4日間で108kmを歩くゴビ砂漠の旅は、歩くことはもちろんですが、4日間インターネットに繋がらず、風呂にも入れない、言語が通じない、いろいろな意味で過酷な旅でした。

しかし、そのぶん、日々ゴール地点にたどり着いたときの喜びはひとしおですし、毎日のご飯が感動するくらい美味しいし(「空腹は最高の調味料」とはよく言ったもの)、なにより、長旅を終えたあとの4日ぶりのシャワーの気持ち良さったら!

この旅をきっかけに歩き旅っていいな〜と思い、日本に帰ってきてからも、時々歩き旅に出かけるようになりました。

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中山道へ

日本の旅では、中山道を中心に歩いています。中山道は江戸時代に整備された五街道のひとつで、東京の日本橋と京都の三条大橋を結ぶ街道です。

この街道は、全長およそ530kmにも及び、道中には旅の疲れを癒やす69の宿場町があります。

時代とともに宿場町としての面影が完全に消え去った街もありますが、なかには宿場町としての歴史や景観が残っている街もあります。そうした宿場町を巡るのも中山道の旅の楽しみのひとつです。

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中山道自体も、江戸時代に整備された道がそのまま保存されているわけではなく、国道になっていたり、住宅街になっていたり、山道になっていたり、なかには「ここ通っていいの?」というレベルの藪になっていたりもします。

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ガードレールの隙間から藪の中に入っていく道を指示されたときは驚きました。熊に遭遇する危険もあるので、熊鈴はちゃんと持っていきましょう!

道が消えかかったエリアも通るので、迷わないように、『ちゃんと歩ける中山道六十九次』という本を参考にして歩いています。

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中山道の主役、木曽路

さて、今回の旅の舞台は、木曽路です。

木曽路には、中山道の贄川から馬籠までの11宿を指します。木曽路は宿場町の古い町並みが保存されている地域が多く、中山道の中でも特に面白いと言われているパートです。

歴史を感じさせる宿場町の古い町並みは、宿場町を観光するだけでも一見の価値があります。

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奈良井宿

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妻籠宿

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馬籠宿

それぞれの宿には、郷土史がまとまっている資料館があるところも多く、体力に余裕がある日は立ち寄ることもありました。

歩く

木曽路は、だいたい1日5時間、20kmくらい歩いて4日かかるくらいの距離です。個人的には、20kmでも晴れていたら結構疲れます。徐々に足の裏が痛くなってきて、30kmも歩けばヘトヘトに……。

江戸時代の旅人は1日8〜10時間歩いて40kmくらい歩いていたそうで、驚きです。

道は、登山と違ってずっと登りなわけではなく、下り坂があったり、平坦な道があったり、街があったり、山に入ったり、峠を越えたり、風景がドラスティックに変わっていくのが歩く旅の良さです。

特に、ラストスパートの妻籠から馬籠にかけては、石畳が敷かれた山道が多く、美しい風景を楽しみながら歩くことができます。

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時には、国道が続いてちょっと景色に退屈することもありますが、わたしは旅のお供にAudibleを聞きながら歩いていました。一日で一冊聞き終わることが多いので、積ん読消化もはかどります。

木曽路は宿場町に泊まれる

実は、中山道の宿場町と言えど、宿場町に宿が残っているエリアは少なく、いつもは街道や駅の近くにあるホテルや旅館に泊まっていました。

(長時間歩行のあとのドーミーインでサウナ!なんていう最高のプランを組めたりするので、これはこれで良いのですが)

木曽路の場合は、宿場町にある民宿や旅館に泊まることができます。古くからの雰囲気を残している民宿が多いですね。

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民宿・旅館の料理を心ゆくまで楽しめる

ふだんの旅行で温泉宿なんかに行くと、ものすごい量の料理が出てきます。わたしは大抵すべて食べきれず、楽しみきれなかった悔しさと残してしまった申し訳なさを感じることが多いです。

しかし、歩きまくったあとだと、食べ物がするする胃に吸い込まれていくし、たくさん食べても罪悪感少なめです。ビールもふだんの5倍くらい美味しい!!

汗だくで宿にたどり着いて、ひとっ風呂浴びてから、もりもりご飯をたべて、ビールをごくごく飲んで、そのまま寝る。幸せ……!!!

個人的な感覚ですが、歩行後は、疲れと達成感に加えて、サウナの「ととのい」に近い感覚があります。

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旅が終わったら

宿場町を巡る面白さもあり、旅館やホテルに泊まる楽しみもあり、食事もお風呂も最高で、道中にはオアシスとも言うべき宿場町や道の駅、コンビニが点在していたりもして、木曽路歩き旅はなかなか良い旅なのではないかと思います。

実は旅が終わった後も、絵画や小説でさらに楽しめます。

歌川広重の浮世絵《木曽海道六拾九次之内》を「ああ、ここ通ったな〜」「風景がずいぶん変わったなあ」なんて親近感を感じながら鑑賞したり。

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奈良井宿(引用

馬籠出身の小説家・島崎藤村が木曽路の風景を『夜明け前』という小説に残しているので、江戸時代末期の中山道の様子を想像しながら、自分の歩いた風景と重ね合わせたり。

歩いたあとも余韻に浸れて良い感じです。


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池澤 あやか
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