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ワタシの家族写真撮影物語 ③

この投稿は『ワタシの家族写真物語 ②』のつづきです。

まずは撮影準備から

一服したところで、
持参した着物一式を出して
ヘアメイクと着付けを同時並行で進める

時間の経過とともに
「初めまして」の緊張感が
徐々にほぐれていく

息子を着付けする
テリーの真剣な眼差しと
美しい所作を眺めていたら
この瞬間を切り取っておきたくなって
写真におさめた

ヘアメイク中の娘は
TOMOMIさんに
「おでこが可愛い!
いい感じで産毛もあって、
和装向きのとってもいいおでこね」
と言われる

娘はいつもおでこを前髪で隠していた

「本人がコンプレックスを持っているパーツは
実はその人の個性であり魅力なんです」

数えきれないほど
たくさんの人たちのヘアメイクをして
その人の持つ美しさを
引き出してきたTOMOMIさんは
確信していた

「うん、今日はこの可愛いおでこを見せましょう」

ということで日本髪風に
結い上げてもらう

髪飾りは、
庭に咲いているつつじの花と
紅葉の葉っぱを
チヱさんが用意してくれる

私は、
一年ぶりにテリーに着付けてもらえる
このご縁に
感慨深いものを感じつつ、
背筋がピンと伸びるような
気持ちのいい感覚を
思い出していた

カメラマンのチヱさんが会話に加わり、
テリーにとって
これが初めての仕事
だと知って驚いていた

「でも、
普通の着付け教室の先生は嫌だなぁ
と思っていたら
この仕事が入って来たんです」

さすがテリー、望み上手!

チヱさんのご自宅nanajigenは
和装が写真映えする空間だから
きっとこれからも和装の写真撮影が
入ってくるに違いない

「今後も着物の写真撮影の際は
着付けのお手伝いをお願いします」
とチヱさんが言った

こんなふうに
お仕事のご縁がつながったのも
嬉しいことだった

着付けが終わったところで
私はヘアメイク

半年ぶりに会った私の変化を見て
「刈り上げも、短い前髪も、
ピンクの髪色もいい感じですね」
とTOMOMIさんは言った

実はTOMOMIさんは
和装好きだった

初めて務めた美容室の店長が
着物が大好きで
アンティークの着物も
たくさん持っている方だった

その影響で着物の面白さや奥深さ、
美しさに目覚めたんだとか

「だから、今日はとても嬉しい」

そんなこととは露知らず
ヘアメイクをお願いしていたのだけど、
仕事を依頼した方たちに
「この仕事ができてよかった。
関われて嬉しい」

と思ってもらえるのは
依頼主の私にとっても喜びだった


事前に娘の振袖の写真を見たテリーは
振袖に合う赤と金の帯締めを
持参してくれていた

「よかったらこの帯締めを
使ってみたいんだけど」
という申し出を
ありがたく了承すると、
その帯締めで
きれいな花の模様を作ってくれた

着付けとヘアメイクが
一段落したところで、
カメラマンのチヱさんが
旬のタケノコ尽くしの手料理を
みんなにふるまってくれた

キッチンに向かうと
窓際にカウンターがあって、
一足先に夫と子どもたちが
美味しそうなお料理を
ほおばっていた

「窓際のカウンターで
外の景色を眺めながら
食事ができるなんて最高!」
と思っていたら、
同じように考えたチヱさんが
DIYで取り付けたカウンターだった

味噌づくりや養蜂、
ジビエもしていて、
残すは塩づくりだけ

その塩も
今度作ってみるという

自らの手で望みを
次々と叶えてしまうチヱさんが
眩しかった

今日は最高の撮影日和

そんなチヱさんの
手料理に舌鼓を打ち
腹ごしらえができたところで
いよいよ撮影スタート!

雨が降らないうちに
まずは屋外の撮影から

庭に立派な紅葉の大木があって
新緑が美しかった

その大木に抱かれるようにして
私たち家族は立った

すると、
「今日は最高の撮影日和です」
とカメラマンのチヱさんは言った

えっ?そうなの?

雲一つない青空の下で
撮影するイメージを持っていた私は
曇り空に正直がっかりしていた

「晴天は顔に影ができてしまうから、
撮影は顔に影ができない曇天がいいんです」

そうか、
やっぱりこれが最善だったのか

池田家のお正月という設定で
まずは
「明けましておめでとうございます」
のご挨拶から

チヱさんの誘導で、
家族4人で
一つのまるい円を作るようなイメージで
大地に立つ

そうそう、
チヱさんのこういう撮影の仕方が
私は好きなんだ

そして
家族で練習を重ねてきた
『カントリーロード』を歌う

まだ様子見な感じで
内側のものを出し切れなくて

リズムを取ったり
互いを見つめ合ったり
空や木などの自然を感じたり
歌声を遠くまで響かせたり
ハーモニーの美しさを味わったり

そんなことをしながら
歌っていたら、
ふいに胸がいっぱいになって
泣けてきて
涙で視界が
ぼやけてしまった

家族と一緒に歌えて、
それを見守ってくれる
温かな眼差しがあって、
なんて幸せな時間なんだろう

家族で歌えた満足感を感じた頃に
チヱさんのOKも出て、
せっかくだからと
夫婦二人の写真を撮ることに

子どもたちが見守る中で
夫婦写真を撮るのは
気恥ずかしさもあったけれど、
私の背中に置かれた夫の手から
じんわりと温もりが伝わってきて
私は喜びと安堵感で
満たされた

そんな私たちの姿を
思いがけず娘が
スマホで撮ってくれていた

写真の中の私は
照れながらも
とっても嬉しそうで
思わず「よかったね」と
声をかけたくなった

屋外での撮影が終わると同時に
雨がぽつぽつ降り出し
あっという間にどしゃ降りに

こうして無事に
屋外撮影は終了した


④へつづく


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