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子ども・子育て支援金制度はこうして始まった。#84 賦課対象者の広さの点から医療保険制度とすることが考えられるとの御意見を頂戴しました

(子ども・子育て支援金制度創設に係る国会審議の論点を整理しています。)

 支援金は、医療保険制度を通じて徴収される。
 医療保険制度を利用する案は、どのようにして生まれたのか。


日付:2024年5月21日
会議名:参議院 内閣委員会
発言者:国民民主党 竹詰仁
内閣府特命担当大臣 加藤鮎子

竹詰 子ども・子育て支援金制度って、一体、保険制度なんでしょうか、何なんでしょうか。これ、本会議でもこういった質問をさせていただきました。なぜ医療保険と同様の算定とするのか、なぜ医療保険と一緒に徴収するのか、なぜ実質的負担がないと言い切れるのか、私はそれらが解明されていないと思っています。
 また、国民からも期待されていないというのが七三%という世論調査のことを本会議でも御紹介させていただきました。
 少し振り返ってみますと、ちょっと先ほど柴田委員も触れたんですけれども、私の存じ上げる限り、例えば令和三年十二月に閣議決定、こども政策の新たな推進体制に関する基本方針、あるいは翌年の十二月に全世代型社会保障構築会議報告書、令和五年六月には、こども未来戦略方針、そして骨太の方針二〇二三、去年の十二月にこども未来戦略と、こういったものがいろいろ閣議決定あるいは政府の方針として決まってきたわけですけれども、この様々な会議を経て方針や戦略などが出されてきたんですが、この子ども・子育て支援金制度というのは一体どの段階から議論がされて表に出てきたか、私自身、理解できていないですね。
 その経緯を説明していただきたいんですが、この子ども・子育て支援金を医療保険制度を活用して徴収する案、これは、いつ、どの会議あるいは審議会で出てきたものなのか、御説明ください。
加藤 お答え申し上げます。
 子ども・子育て支援金の賦課徴収を医療保険の仕組みを通じて行うことは、昨年六月のこども未来戦略方針において、賦課対象者の広さを考慮しつつ社会保険の賦課徴収ルートを活用することとされ、これを受けた昨年十月のこども未来戦略会議におきまして、賦課対象者の広さの点から医療保険制度とすることが考えられるとの御意見を頂戴しました。その後、こども家庭庁におきまして昨年十一月に開催をした支援金制度等の具体的設計に関する大臣懇話会におきまして、こども家庭庁から、医療保険者に被保険者からの支援金の徴収等をお願いすることについて論点として提示をし、有識者の方々や医療保険者の方々の意見を伺った上で、最終的には昨年末にこども未来戦略として閣議決定し、政府として法案に盛り込んだものとなります。

竹詰 よくこういった議論の中で、例えば審議会や有識者会議などで議論のやり方として複数案提示されて、A案、B案、C案というのが複数案提示されて、それを議論した中で最終的に一つの案に取りまとめられるという、こういった議論のやり方もあるわけですけれども、私、今の加藤大臣の御説明聞いて、こうやって複数案という中から絞り込んだわけじゃないというふうに、そういった印象を持ったんですけれども、この支援金の徴収は、もう最初から一貫して、この支援金制度、今提案されている支援金制度、医療保険制度等を活用するという、こういった議論の進め方であったのか、もう一度、大臣、お伺いします。
加藤 お答え申し上げます。
 経緯としましては先ほど申し上げたとおりでございますけれども、昨年六月のこども未来戦略方針において、賦課対象者の広さを考慮しつつ社会保険の賦課徴収ルートを活用することとされたことを踏まえまして、秋以降の議論において医療保険制度という具体案が上がり、その方向で関係者の御意見を頂戴してきたものでございます。
竹詰 それでは、最初から医療保険制度しか検討候補がなかったというふうに今私は理解をいたしました。


参考資料等

こども未来戦略方針

(財源の基本骨格)
③ ①の歳出改革等による財源確保、②の経済社会の基盤強化を行う中で、企業を含め社会・経済の参加者全員が連帯し、公平な立場で、広く負担していく新たな枠組み(「支援金制度(仮称)」)を構築することとし、その詳細について年末に結論を出す 15。

15 支援金制度(仮称)については、以下の点を含め、検討する。
・ 現行制度において育児休業給付や児童手当等は社会保険料や子ども・子育て拠出金を財源の一部としていることを踏まえ、公費と併せ、「加速化プラン」における関連する給付の政策強化を可能とする水準とすること。
・ 労使を含めた国民各層及び公費で負担することとし、その賦課・徴収方法については、賦課上限の在り方や賦課対象、低所得者に対する配慮措置を含め、負担能力に応じた公平な負担とすることを検討し、全世代型で子育て世帯を支える観点から、賦課対象者の広さを考慮しつつ社会保険の賦課・徴収ルートを活用すること。

こども未来戦略会議

日付:2023年10月2日
会議名:第7回こども未来戦略会議
発言者:遠藤久夫 学習院大学経済学部教授
権丈善一 慶應義塾大学商学部教授
清家篤 日本赤十字社社長/慶應義塾学事顧問

遠藤 支援金制度につきましては、賦課対象者の広さを考慮しつつ、社会保険の賦課・徴収ルートを活用することとされております。この賦課対象者の広さという観点からは、年金制度は現役世代、介護保険制度は40歳以上がそれぞれ賦課対象となる一方で、医療保険制度は全世代が対象となっております。したがって、給付と負担の関係が明確になるよう、一つの制度を検討するのであれば、医療保険制度を活用することが考えられます。その場合においては、医療保険料とは名称を含めて別立てで徴収することが透明性の点から重要であると考えます。

権丈 社会保険のツールを使うということに対して取りやすいところから取るという、支援金の理念も分かっていない人たちからの批判もあります。
 この会議で繰り返し言ってきたように、大本のところで少子化の大きな原因は、医療、介護、そして年金保険が存在することです。これら制度が、子育てを支えるということは、被保険者と事業主全員の未来にメリットがあるからこれらのツールを使っていくわけです。
 医療と介護は年金給付からの特別徴収、天引きを持っているから年金はいいとしても、医療と介護と子育ての関係は等距離にあります。
 ですから、全世代型社会保障の理念をみんなで共有し、財源をどうするかということを考えていくときには、今回のところでも医療と介護が子育てを支援するという考え方を少し視野に入れておくということがあっていいのではないか。そうでなければ、理屈もなく取りやすいところから取ろうとしているという批判が起こる隙が生まれてくると私は感じております。

清家 昨年末の全世代型社会保障構築会議報告書において、全世代型社会保障とは、「年齢に関わりなく、全ての国民が、その能力に応じて負担し、支え合うことによって、それぞれの人生のステージに応じて、必要な保障がバランスよく提供されることを目指すもの」と説明されております。私たちは、この基本的考え方に立って今後の改革の工程を具体的に検討し、2020年代後半、さらには2040年を見据えた改革事項を議論してまいります。
 そこで、こども未来戦略のこども・子育て支援金につきましても、この全世代型社会保障の基本的考え方を踏まえ、年齢に関わりなく、その能力に応じて支える仕組みとする必要があると考えます。
 報告書の言う「全ての国民」には、老若男女の個人とともに企業などの法人も含まれています。このため、支援金制度としては、支え手の裾野の広い医療保険制度を活用することなども考えられると思います。

支援金制度等の具体的設計に関する大臣懇話会

こども未来戦略

2 こども・子育て支援金制度
(骨格)
○ こども・子育て支援金(仮称)(以下「支援金」という。)の充当対象事業に係る費用の拠出のため、医療保険者に、支援納付金の納付をお願いし、医療保険者がその納付に充てる費用として、被保険者等から保険料と合わせて支援金を徴収する。

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井川夕慈
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