『アフリカンシンフォニー』の話。
中学時代は吹奏楽部に入っておりましてね、私。
ええ、野球をずっとやってた私が、吹奏楽に入る経緯はまた別の機会に書くとして。
野球以外にも数多くあるクラブの中で吹奏楽を選んだ理由に、クラシックは嫌いじゃなかったのと、小さい頃から雅楽をずっとやらされてた事もあって、その反動で西洋の音符というものに妙に魅力を感じていた、というのはあると思います。
見学に行くと、部員50人以上で男子は6人
3年生男子3人、2年生2人、1年生は私1人だけでした。そして、吹奏楽部には綺麗な女子が集まっておりまして!クラスの男子に嫉妬されるほど!まあ、私、中1の時は140cmしかない上に、幼い顔でございましたので、恋愛対象外でしたし、ウブな少年でしたので、近くに寄られるだけで顔を赤らめてしまい、イジられておりましたけども。
アフリカンシンフォニーが聴こえてきた。
演奏してはったんです。先輩方が。
ヴァン・マッコイさんが作曲したアフリカンシンフォニーを。
高校野球なんかでもよく聴く曲だと思うので、ご存知の方も多いかなと。
アフリカンシンフォニー
(だいたい、18秒くらいから皆さんの知ってるフレーズがきます。)
鳥肌が立っちゃって。
むちゃくちゃカッコイイんです。もう、音が体中を巡って、奮い立っちゃったったんですよ。やっぱ人間も、アフリカの大地を逞しく生きる野生動物達と同じ、野生の本能を持った生き物なんだ!なーんて、気持ちにまでなってしまうほどで、いや、今、俺、何でも出来るんじゃないか!という気持ちすら湧いて来るんです!
俺も演りてぇ
即入部、そして、楽器はトランペットになりました。それから、必死に練習し、月日は流れて、途中、2年生の男子2人が辞め、夏のコンクールも終わり、3年生の先輩達も引退し、ついに男子1人になりました。
2年生になり、少し身長も伸びて145cm。すっかり女子達にも慣れ、顔を赤らめる事はなくなりましたが、相変わらず、恋愛対象外でした。でも、トランペットの腕はみるみる上達し、主旋を吹くまでに成長していました。ただ、後輩も相変らず女子ばかりで、部員45人で男子1人。そして、その年の夏のコンクールに初めてメンバーに入りし演奏するも、2年連続の県大会には進めず。
そして、最上級生に
身長も155cmまで伸び、弟キャラからの卒業。新1年生も相変わらず女子ばかりでしたが、もう、そんな事は関係ないほどに成長。
以前は強豪だった吹奏楽部もここ数年は県大会にも進めず、という事もあって、『今年こそ!』という想いも強く、休みを返上して練習。そんな中、コントラバスをやってたモテモテの同級生が別れたという情報が。何かと相談に乗ったり、というか、(※注:多分、ただ単に近くにいた話やすい男子だっただけ、だと思うのだけど。)そういう事もあって、そのコントラバスの女子が別れてからというもの、よく一緒に遊んだりしておりました。
すっかり身長も抜いて
中1、中2と何かと弟扱いでしたが、身長を追い抜くと、少し、接し方が変わってくるもので、そういう変化があると、なんとなく、こちらはドキドキするもので、で、相手のコントラバス女子は校内トップ3に入るほどのモテ女子な可愛い子なわけで、まあ、そりゃ、好きになりますよね。いや、好きかどうかもわからんのですけど、当時はずっとドキドキして、それを悟られぬよう強がってましたね。
夏のコンクールで県大会へ
数年ぶりに県大会へ行けたんです。そういうものが、そういう結果が、こう、より親密になるキッカケになるじゃないですか!!!コン女(注:コントラバス女子の略)とは抱き合って喜んだりもしましたしね。まあまあ、良い雰囲気だと思うんです。傍目に見ても。ただ、いくら身長が伸びても、いくら親密になってもウブはウブ。そしてモテナイ男。告白する勇気などないわけで。
引退、そして、アフリカンシンフォニー
引退しても、コン女とは仲は良かったのですが、やはり、以前のような親密さは、徐々に解けていくわけで。さすがのウブで奥手なブサイク男も、今を逃しては、もう芽がない!!となるわけで。でも、勇気が出ない。そんな時、音楽室から、後輩達が練習してたんです。アフリカンシンフォニーを!
いやー、なんて、奮い立つ曲なんだ、いや、なんで奮い立たせてくれたんだ!アフリカンシンフォニーよ!!何でもできるって思ってしまうじゃないか!!
元コン女(※元コントラバスを担当していた学内トップ3の女子の略)
を、浜辺へ散歩に誘い、あ、浜辺に誘ったのは、なんとなく、アフリカの砂漠とかのイメージに近いって理由で。
で、脳アフロー(注:脳内アフリカンシンフォニーをヘビーローテーション)しながら、歩いてタイミングを見計らっていたんです。そう、ライオンが獲物を狙うかの如く。もう、俺はただのモテナイウブ男じゃない!モテナイウブ男改だ!!
そして、波が寄せた、その瞬間、
ウブ男改『俺、お前の事好きやねん。付き合ってくれへん?』
元コン女『・・なんでやねん!!!!!』
ありとあらゆる返事を想定していたのだけど、ツッコミが来るとは思ってませんでした。
引いていく波と共に、人生初の告白は『ボケ』という事でどこか遠く、はるか沖の方に流されていきました。