布袋寅泰『HOTEI 40TH ANNIVERSARY Live"Message from Budokan"』によせて
布袋寅泰の40周年を飾る配信ライブが2021/1/30,31の2日にわたり、日本武道館より配信された。このライブはもともと観客を入れた開催を予定していたが、緊急事態宣言を受けて配信ライブに変更されたのであった。私も31日のチケットを確保していたので、当然参加するつもりであったのでこの変更は大変残念であった。
2日間のライブは大変熱のこもったものであった。目の前に観客がいるかのようであり、少なくとも布袋寅泰には配信ライブに対する戸惑いは感じられたかった。
しかし、今回のライブ開催に対する賛否は様々であった。まずライブ開催のためにロンドンから帰国したことに対するバッシングとも言える声が思った以上に多かったようだ。実際、イギリス由来の変異ウイルスが騒がれはじめた時期と重なり間の悪さは否めなかった。しかし彼は帰国のためのルールをすべて守り、かつ自主的隔離を行いライブに備えたのだ。規模の大きなライブは中止した場合の関係者への影響は大きいだろう。やめるための理由付けはいくらでも出来るが、やるためにはどうすれば良いかという発想は重要であろう。結果的に配信ライブとなったが、私は彼の行動を支持する。できれば観客を入れてライブをして欲しかったし、武道館で観たかった。
思い起こせば彼の30周年も波乱に飛んだものだった。2011年、彼はミュージシャンとしての集大成を飾るべくBOØWYの再結成に動いたようである。
2月1日の誕生日に行われた武道館ライブでは、それまでほぼ封印してきたBOØWYやCOMPLEXの曲を数多く披露した中、氷室京介による「CLOUDY HEART」だけは、一切歌わず演奏とバックコーラスのみであった。歌うのは自分ではないという意思表示ではなかったか?おそらくこの時点ですでに氷室京介サイドに再結成の働きかけをしていたのであろう。
そのような中、東日本大震災の発生によりBOØWY再結成ライブの想いをいっそう強くしたと思う。氷室京介が復興支援単独ライブを発表した際のブログに無念の気持ちがにじんでいる。
http://www.hotei.com/blog/2011/04/
一方で吉川晃司からはCOMPLEX再結成による復興支援ライブの誘いを受けていたようである。BOØWY再結成を目指していた彼は一度吉川氏の誘いを断ったものの氷室氏の単独ライブ発表を受けてCOMPLEXによる復興支援ライブ開催を決断したようである(ブログは削除された模様)。それにしても24年ぶりとなるユニット再結成ライブは2日とも大成功、大変素晴らしいものであった。セットリストは解散前の東京ドームと全く同じであったが、そのパワーは24年前をはるかに凌駕したものであった。私にとっても東京ドームで観た中の3本の指に数えられるライブであった。
ところで氷室京介が布袋の誘いを断って単独ライブにこだわった理由はなんだろう。感情のしこりという意見もあるが、想像するに、とにかく寄付金を、より多く東北4県に平等に配分したかったのではないだろうか。
BOØWY再結成ともなれば、途方もないお金が集まる反面で氷室氏だけの考えだけでは物事は進まないし取り巻きも多くなる。しかもドラムの高橋は福島出身だ。氷室京介が自分の考えだけで進められる道を選んだとしても全く不思議はない。かくして彼は、2回のライブで集められる最大限のお金を集め、東北4県に平等に配分したのである。
さて、震災の中迎えた30周年、コロナ禍で迎えた40周年、どちらも時代の変革期のタイミングであったが、冒頭に記したようにパソコンの画面からでも熱気を感じることができた。ちなみにセットリスト、1日目はボウイ、complexが中心、2日目はソロ活動の選曲であった。1日目は意外な選曲を含め充分楽しめた。2日目のソロ以降の選曲については、私が聴きたい曲とずいぶん隔たりがあった。ソロ以降の方がキャリアが長いのだから幅が広くなるのは仕方がないが、1日目と違いベストヒット的な選曲に終始したように感じた。ただ、客入りからオンラインに変わり、かつ空虚な武道館でのライブという事態が選曲にも影響があった可能性もあると前向きに捉えたい。
いずれにしても、数少ない数十年聴き続けているミュージシャンの次の節目が華々しく迎えられる事を待ちたい。