不遜の泥 4夜
雑居ビルの1階が店舗で、その上が賃貸になっている私の職場(今となっては元だが。)には、
2階以上の階層で夜を振り撒く「蝶達」が、やけに暗く狭い外階段をピチピチのボディラインで駆け上がっていく。
いつ見ても、辺鄙なテナントビルだ。
オーナーの顔がみたいよ...。
そんな職場に引かれる後ろ髪などなく、足早に自宅へと歩を進める。
最後までそれなりに扱き使われヘトヘトになった足は、厄日だからだろうか。
コーヒーショップの前で止まった。
「今日は疲れた....コーヒー飲みたい。」
自分へのご褒美にといつもは頼まない大きめのカフェオレを注文し喫煙所の近くの席にパーカーをかけて陣取る。
そのまま向かうは喫煙所。
扉を開けたと同時に、なかなか使い切らないコンビニライターで相棒のキャメルに火を付け大きく吸い込む。
ゴォォォォォッッ
一定の周波数で木霊する換気扇の音に、ふぅーっと煙を漂わせる。
ふと視線を私よりも前に立つ男へ落とすと、その男
は私と目が合う。
なんと目の前にいた男は、出勤前に会った あのマネキン男がそこに居た。
「あぁ....厄日だ.....。」
手に持つキャメルの灰は、自然落下する寸前だった。