踊る大競馬戦〜第4話〜『ドロボー×ドロボー』
先に家に侵入していた『説教泥棒』こと颯 福之助(はやて ふくのすけ)は部屋の電気がついて
家の主人が来たと勘違いし低い声で男を呼んだ
『おいっ!
旦那さんよぉ‥待ちくたびれたぜ!』
後から侵入してきた、初めての泥棒を試みた男も電気をつけた瞬間、突然現れた福之助を家の主人と勘違いし、その瞬間に泥棒をあきらめ凄い勢いで福之助に土下座をした。
「大変申し訳ありませんでしたー!」
『いや!いや!旦那さん!
謝るの早すぎるから!
まだ説教も何もしてないから!』
「どうか、許してください‥」
『よし、わかったから!
まず、そんなに謝る前に
今回、何で家に入って来られたか
答えてみろ!』
「はい‥まず‥
番犬が骨に夢中で吠えなかった事‥
あと、窓に鍵がかかっていなかった事‥
そして、防犯セキュリティが作動しなかった
事だと思います。」
『えー!知ってんじゃーん!
全部わかってんじゃん!』
(まてよ‥てことはコレは!罠なのか?)
(ヤバイな‥だとしたら警察もすでにいるはず‥
まさか‥俺以上に計画していたとは)
『そうですか‥旦那さんには
驚かされましたよ‥どうせ
もう警察にも連絡してるんだろ?』
「いや!いや!私が!警察に連絡する訳
ないじゃないじゃないですか!」
(何!?警察にも連絡してないだと
嘘だろ!?どういう事だ‥)
『それにしても旦那さん‥
お金持ちの割には随分と
みすぼらしい服装ですね‥
貧乏なフリですか‥』
「いいえ‥半年前仕事をクビになって
しまい‥家族を養うのも精一杯で‥」
『そんな事ないでしょ!
ここにお金あるじゃん!
5000万円も!
何で使わないの!?』
「えっ!?いただいていいんですか!?」
『良いも何もあなたのお金でしょ!?』
(‥この人なんて良い人なんだ
私みたいな泥棒に対して
同情とはいえ
お金をくれると言うなんて‥
でも、こんなお金で
家族が幸せに暮らせるだろか‥)
「いいえ!いりません!
そのお金は全部あなたの金です!」
『えーー!この金庫のお金全部!?
ざっと5000万円はあるよ!?』
「いくら入ってるかは
私にはわかりませんが
一円も私はいりません」
(おい!家族養う金はどうすんだよ!
こんな金もらいずらいだろ‥)
『まったくよ!ペースが乱されるぜ』
福之助は帽子を深く被り直した
すると、男は福之助の青い帽子に反応した
「あっ!パンサラッサの帽子!
競馬お好きなんですか!?
私もパンサラッサが大好きです!」
『おー!お前も競馬ファンか!?
俺もパンサラッサが大好きで
あの逃げ足最高だよな!』
「最後のジャパンカップは最高に
感動しました。引退は悲しかったです」
競馬で意気投合した二人の泥棒は
泥棒の事など忘れ盛り上がった
『旦那さん!いいか人生を
ポジティブに出来る魔法の言葉を
教えてやる‥』
「その言葉とは‥」
『どんな悪い出来事に対しても
必ず「良かった」を
つけてみろ!』
「どう言うことですか?」
『例えばだな今日お前は
神社で交通安全祈願をした
しかし、その帰り道に交通事故にあった‥
さぁ!今どう思った?』
「交通安全祈願なんて意味ないな
神様なんていない‥」
『それがダメなんだよ!
無理やりでも良い!
頭に「良かった」をつけてみろ』
「交通事故にあって‥良かった‥?」
『さぁ何が良かった?無理やり絞り出せ!』
「生きてて‥良かった‥?」
『そう!それだよ!良かった事あっただろ
物事なんて考え方次第だ!
何事も無理やり
「良かった」をつけて絞りだせ!』
「会社をクビになりました」
『何が良かった?』
「この仕事は自分には合ってないとは
思ってたので、好きな仕事を探せる
チャンスが出来て良かった‥」
『旦那さん‥100点だよ‥!
人生なんて楽しく生きたモン勝ち
まぁそう言う事だ!』
「凄い!なんか生きる
活力が湧いてきました!
ありがとうございます!」
『俺の名は颯 福之助
福が来るように助ける男だ‥
ほらよっ俺の名刺‥』
『俺の名前入り的中馬券だ
福が来るぞ!いくらで買う?』
「福之助さん!俺‥決めました!」
(今回は4千万円か5千万円か‥?)
「警察に連絡します!」
『えーー!なんでそうなるのー!
このパターンは初めてだよー!』
「良かったと出来る事もありますが
やっぱり悪い事は悪いです
私のした事は良くありません!」
『いや!いや!お前は
何も悪い事してないから!!』
「福之助さん僕は決めたんです!
警察に連絡します!」
『ちょっと待って!
本当にしなくていいから!
それだけは勘弁してくれよ!』
(ここまで必死になって
自首を止めてくれるなんて
どこまでこの人は良い人なんだ‥)
『わかった!無敵の俺様も今回こそは
お手上げだ!旦那さんアンタの熱意には
負けたよ‥アンタの好きにしな!あばよ!』
そういうと福之助は窓から
スタコラサッサと出ていった
「ハヤテフクノスケさん‥
まず、主人が窓から出て
私も窓から出るのをカモフラージュ
までしてくれるなんて‥
なんて良い人なんだ‥
でも‥この馬券とお金は貰えない‥」
男は何も取らず窓から出ていった‥
「泥棒は失敗したけど‥
良かった‥
ハヤテフクノスケさんと出会えて‥」
"希望に満ちた顔の男"は柵を乗り越え
街へと消えたいった
『まったくとんでもない家に
入っちまったもんだぜ‥』
福之助はパンサラッサの帽子を脱ぎ
帽子をみつめながら‥
『無敵の説教泥棒‥福之助様も
パンサラッサと共に
引退だな‥』
『初めて泥棒が失敗した‥』
『良かった‥』
『‥あいつのおかげで泥棒をやめれたから』
颯 福之助はこの日
泥棒を引退した
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