『UMAJOに魔法をかけられて』〜第四話 UMA（ユーマ）〜

ネス湖で目撃された
"ネッシー"

全世界でUFOの目撃情報が絶えない
"宇宙人"

目撃例や伝聞による情報はあるが
実在が確認されていない生物達

我々は彼らの事を‥
総称してこう呼ぶ

Unidentified
Mysterious
Animal
『UMA』
"ユーマ"

そして僕は今回‥人類初‥
"UMA"の生息を確認した

馬券を買わないUMAJO
"ウーマ"は実在したのだ‥

「菅原みか」

【趣味:競馬】

これを見ると僕は"趣味=ギャンブル"
と言うイメージだったが‥


彼女は違った‥


競馬を趣味として馬券を買わずに
純粋に競馬を楽しむ
未知なる競馬ファンだった

昨日の有馬記念の本命も
"ドウデュース"と言っていた彼女は
見事予想が的中していたのに
馬券は買わなかった

それでも武豊とドウデュースの
コンビ復活を全力で喜んでいた‥

その影響もあり‥
僕も馬券は買わないと決めた‥

少しでも彼女に近づくため‥

しかし‥
近づきたい気持ちとは裏腹に

未だ‥彼女の口から名前すら
聞き出せていない‥

どうしたら‥"ミカ"という名を
聞き出す事ができるだろう‥

『菅原さん！君の名は。』

"はいっ！音楽STOP！！"

いやいや‥

そんな映画みたいなセリフ‥

生まれてこの方陰キャの僕に
言えるわけないだろぉ‥

ベッドに背面で倒れ込んだ

相変わらず答えのくれない天井見上げ‥

とりあえず
この前始めたばかりの
ダビスタを起動した

菅原さんが父と一緒に
やっていたと言っていた

"ダービースタリオン"

コレで僕もJRAのG1の
日付を覚える事ができた‥

しかし‥
始めてみたのは良いが‥

競馬初心者の僕には
かなり難しいゲームだった‥

ゲーム内の季節は4月‥
新たな仔馬が誕生していた


"名前はどうする？"

ゲーム内のアシスタントに聞かれた

いつも悩む‥

毎年命名していると‥
競走馬的な名前はもう
思いつかない‥

とりあえず
同僚の名前でもつけるか‥
"タケシインパクト"っと

来年は誰の名前にしようかな‥

『あっ！！』

その手があったか‥！

"いい名前だね！"
アシスタントが褒めてくれた

『ありがとう！君のおかげです！』
僕はアシスタントに感謝した

次の日‥
ルーティンのコーヒーを
出してもらった時に
菅原さんに話しかけた‥

「ダビスタの馬の名前って
　毎回‥決めるの悩みますよねぇ」

『あっそれ、わかります』

「お父さんってどんな名前つけてました？」

『父は困ったらい〜っつも！
私の名前つけるんですよ！』

「へぇ！例えば？」

『ミカウララとか‥』

「ミカウララですか？」

『あっ！私"ミカ"って言う名前なんです！』

「へぇー！菅原さん
　"ミカ"ってお名前なんですね！
　とっても素敵な名前ですね！」

我ながら鮮やかな
ミッションCLEARだった

『そういえば‥まだ‥  
お名前聞いていませんでしたね？』

「あっ僕ですか！そうでした！まだ
　言ってませんでしたね‥僕の名前は
　蛯名です‥蛯名大成です！」

『蛯名‥大成‥さん！？あははっ！
とっても素敵な名前ですね！』

菅原さんに笑われた意味は
よくわからなかったが‥


彼女の笑顔を見れるだけで幸せだった‥

『私、今年は今日が最後の出勤なので
次、コーヒー渡せるのは来年ですね！！』

「そうなんですね！
　一年間お疲れ様でした‥」

『蛯名さん！良いお年を‥！』

「‥‥菅原さんも‥‥
　良いお年を！」

いきなり‥

"ミカさん"良いお年を‥

なんて言えるわけ無い‥


僕の精一杯の回答だった‥

店を出る直前‥

『蛯名さーん！有馬記念終わりましたけど
G1はまだありますからねー♪』

「もちろん知ってますよー！
　ホープフルステークスですよね！」

『めちゃめちゃ勉強しとるやん♪』

ダビスタのおかげで
G1の日付はバッチリだった

「菅原さんの本命はー？」

『‥レガレイラっ！』

「0.46秒！最速です！」

僕らのやりとりを見ていた無表情店員は
首をかしげ相変わらず無表情だった‥

笑っているのは二人だけ‥

二人だけにはわかる
"魔法のコトバ"


店内で流れるスピッツの歌を背に
僕は店を出た‥

家に帰り、年末最後のG1
"ホープフルステークス"を
テレビで観戦した‥

結果はまさかの‥
１着‥"レガレイラ"だった‥

『本当に菅原さんはすごいなぁ‥』
菅原さんの予想的中に驚きながら

面と向かっては呼べない

"ミカさん"と

いつか呼べる時を信じて
家で練習してみた‥

『ミカさん！』

いや‥まだ無理だ‥

『ミカ！』

いやいやっ！
いきなり"ミカ"なんて呼び捨て‥

絶対呼んでいいわけ無いだろ‥

テレビでは本当に2023年最後の
中山12Rファイナルステークスが流れていた

"前に行くのはミカッテヨンデイイ"

『だからさぁ‥いきなり
　"ミカ"って呼んでいいわけないだろって‥』

『えっ！？』

僕の聞き間違いでなければ‥

"美香って呼んでいい"

と聞こえた‥

そんな"UMA"みたいな競走馬
いるわけないだろ‥

僕は未確認生物を確認するため
一旦レースに集中した‥

するとさっきの実況が‥

"後方からはミカッテヨンデイイ"

今度はハッキリと聞こえた

実況から聞こえた名前は‥

間違いなく‥

"ミカッテヨンデイイ"だった‥

ミカッテヨンデイイという名の
"UMA"は実在した‥

僕は競馬アプリを開き

実在した"UMA"を見つけて

次走の出走情報が流れてくる

★ボタンを押した‥

年が明け‥

G1レースもない
競馬ファンの熱が下がりかける
1月末‥

携帯にお気に入り登録馬の
次走出走情報が入り

決意を固めた
一人のビジネスマンがいた‥

時同じくして‥
世間一般的には注目されていない


2024.1.28 東京10R
"節分ステークス"という名の
3勝クラスレースの枠順が確定した‥