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『UMAJOに魔法をかけられて』〜最終話 UMAJOに届け"愛のしるし"〜

東京10R"節分S"は‥
残念なため息と共に
レースを終えた‥

僕のビギナーズラックで
デパさんを喜ばせる事は出来なかった‥


"ミカッテヨンデイイ"は10着に終わった

『ビジネスマンお疲れさん!
これが競馬なんだ!
人生一世一代馬券だからって
簡単には当たらないんだよ!』

「デパさんが買ったから
 また外れたんでしょ!」

『黙れ!ピンハイ!』


2人の楽しそうなかけ合いだったが
それ以降はおぼえていない‥



僕はもう一度ネクタイを縛り直し

ボロボロの"壊れた靴で一人"

一世一代の大勝負に向かった‥

1枚の"馬券"を握りしめて‥

一世一代大勝負の入口に到着した


いつもは簡単に開けている扉だが


今回は簡単ではない

1月末の冷たい風が僕の決意を
ふき飛ばそうとした
「おいっ!あの子との時間が
"ただの思い出"に
なってもいいのか?」と
"風が囁いて"るようだった‥

大丈夫‥


"いつかあなたには‥
全て打ち明けよう‥"と
決めていた‥


深い深呼吸をして
気持ちを落ち着かせた‥


赤い帽子のおじさんが
邪魔そうにこちらを見ていたが
まだ心の準備が出来ていない

よしっ‥今こそ‥
"全て打ち明けよう!"

決意を決めた僕は


コンビニの扉を開けた


店内ではスピッツの懐かしい曲が
流れていた‥

僕はレジに直進した


目の前には不思議そうな顔の
菅原さんがいた


彼女の顔を見た瞬間‥

今まで面と向かって見る事の出来なかった
あまりに可愛すぎる
彼女の笑顔が胸に突き刺さった‥

そんな"心地よい針のシゲキ"に

僕の"ヤワな心臓がシビれた"


落ち着かせるため胸を何度も叩き

もう一度深い深呼吸をした‥


僕はスーツの胸ポケットから
先程終わったばかりのレース


"節分S"の馬券を取り出した

「マジックお借りして良いですか!?」

『あっはい‥』

菅原さんのポケットにあった
マジックを借り


馬券に"1文字"加えて


彼女に渡した

「イイでしょうか!?」

馬券に"?"を書き足し
"美香って呼んでいい?"と言う意味の
面と向かっては言えない
陰キャな僕にとっての
最大限の告白だ‥!


彼女の顔がどんどん
真っ赤になっていくのがわかった


でも‥
どちらのリアクションか
分からなかった


後ろにお客さんが並んでいたが
無表情店員さんに任せた


すると、彼女は馬券を手にとり


同じマジックで何やら書きたし‥


僕に渡してくれた

"?"が消され‥"!"に変わっていた‥

"ミカッテヨンデイイ!"

「えっ!?」

"美香って呼んでいい!"

「本当ですか?」

菅原さんは軽く頷いた

「うぉーー!!」

予想外の展開に僕は歓喜し
隣の無表情店員さんに
思い切り抱きついた


真顔だった


"嬉し泣き"をする僕を見ながら
菅原さんは

『"宝物"にしますねっ♪』

『世界で"ただ一つ"の‥』

すると‥
菅原さんは通勤鞄をレジの上に置いた

鞄には馬券を入れる事ができる
キーホルダーがついていて

そのキーホルダーに
僕の馬券を入れてくれた

よく見ると‥

僕の馬券の前にすでに
他の馬券が入っていた‥!

「えっ!それっ誰からもらったんですか?」

『教えませぇーん!
そんな事より‥
ちゃんと呼んでくれるんですよねっ!』


「はいっ!」


‥みか‥‥

さん‥」

『はい!ダメー!度胸無し!!
今のあなたがどれだけ"度胸が無いか"
"印"がでてます!』

「すいません‥その"印"は
 みかさんが考えた印でしょうか?」

『違います!蛯名さん
あなたに出てる"印"です!』

「どんな印でしょうか?」

『"単勝1.1倍の馬に
複勝100円しか賭けれない
ヤツ"印"ですっ!』

「めちゃめちゃ度胸無い!」


二人の笑い声が店内に響いた


競馬を知ってたのか隣の無表情店員さんは
やや微笑んでいた‥


ハズレ馬券は"愛のしるし"

100円の価値にもならない
ハズレ馬券も‥


想いを込めれば‥


"わけもないのに"
キラキラ"輝く"宝物に変わる‥

想いを込める‥

"それだけが"

"愛のしるし"


     【UMAJOに魔法をかけられて】
                 完    

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