踊る大競馬戦〜最終話〜『エピローグ』
『福之助ー!いけー逃げ切れー!』
『うわー!捕まったかぁ!』
中山11R 京成杯
ハヤテノフクノスケはゴール直前
差し馬に抜かれ惜しくも4着となった
「ほらー!ワクさんが買ったから
福之助負けたんすよ!」
『うるせぇ!馬!そんなわけ
ねェだろ!力負けだ!』
「ワクさん!ほら!もうレースも
終わったから帰りますよ!」
『そうだな!マスター!
今日は協力ありがとう!
今度はプライベートで
おじゃまさせてもらいますね』
「はい!いつでもお待ちしております
本日は貴重な経験ありがとうございました」
二人の刑事はBARから出て行った
『大泥棒の福之助も今回ばかりは
逃げ切れず‥捕まったか‥』
枠はハヤテノフクノスケの単勝馬券を
しばらく見つめた‥
『青馬!多分もう福之助は
泥棒に入らねェだろうな‥』
「いきなりなんすか!?
そんな事ワクさんにわかるんすか?」
『刑事歴50年の感だよっ!』
「競馬と違ってそっちは!
当たりますからね!」
『お前はいつも一言多いんだよっ!』
「あっ!ワクさん!
ここのコンビニ寄っていいっすか?」
『おぅっ!いいぞ!どうした?』
「ここのコンビニにガッキーに似た
すげぇ可愛い店員さんがいるんすよ!」
『お前はコンビニに何しに
行ってんだよ』
二人がコンビニに入ると‥
『いらっしゃいませー!!』
新人マークをつけたおじさん店員の
活気溢れる挨拶が店に響いた
青馬はコンビニを見渡した‥
「あれっ?ガッキー今日休みみたいですね!
なんだよチクショー!」
『まぁいいじゃねぇか!
俺も丁度タバコを切らしてたところだ
あんちゃん!10番のタバコ貰えるかい?』
「はい!かしこまりました!」
新人おじさん店員は不慣れな感じでレジを扱い
何度も間違えモタモタしていた
するともう一人の無表情な店員がスッと
レジに現れ新人のレジを修正した
「あっ!ワクさん!この店員
競馬探偵っよ!」
『おうっ!お前さんここで働いてたのか!?』
無表情な店員は無表情のまま
何も答える事なく新人に指導をした
「おいっ愛想が悪いぞ!探偵!」
無表情店員のおかげでレジが
再び動き出した
「リーダーありがとうございます!」
無表情店員は新人を睨みつけるように
レジを離れた
「ったく!なんだよアイツ!
あんなムカつくリーダーだと
ストレスたまるよなっ」
青馬は新人を慰めるように話した
「いえ!良かったです!」
『えっ!良かっただって?
あんなリーダーでか!?』
「はいっ!良かったです!
リーダーのおかげで勉強になりましたし
罵声も無ければ暴力もない
リーダーなりの令和の指導です!」
『はははっ!えらいポジティブな新人だな!
あんちゃんありがとよ!』
「ありがとございましたー!」
新人おじさん店員の元気な声を背に
二人はコンビニを出た
「なんだよ!ガッキーもいないし!
来た意味なかったすね!」
『いや!若い女の子よりも
素敵な店員に会えたから俺は
来て良かったぞ、青馬!』
「女に興味なくなったら終わりっすよ
ワクさんももう‥ジジイっすね!」
『あぁ!ジジイには最高の店員だ
見たか!あの店員のキラキラした目を
あの‥「希望に満ちた表情」を!』
「俺にはよくわかんないっすわ!
そういえば‥もし‥ワクさんの言う通り
福之助がもう泥棒をしないとしたら
これから‥奴は何するんすかね?」
『さぁな‥今から就職は難しいだろうな‥』
「まさか、YouTuberとかだったりして!」
『ははっ!信者を作る程の話術と魅力のある
男だからありえるかもな!』
「ワクさんYouTubeとか見るんすか?」
『俺はそんなハイカラなもんは見んよ』
「実は俺もYouTubeあんまり見ないっす」
『さぁ!早く帰って書類の整理だ!』
競馬刑事二人が
事件を終えたこの日‥
ある新人YouTuberがチャンネル開設初日に
新人最高額のスパチャ記録を
叩き出すのだが‥
『さぁ!今日ついてなかった君も!
「良かった」つければ良い1日
笑う門には福来る
"福之助"チャンネル
へようこそ!!』
そんな事‥
YouTubeを見ない競馬刑事達は
もちろん‥知る由もない‥
『"白髪男さん"いきなり赤スパ
5万円ありがとー!』
踊る大競馬戦
『京成杯編』
完
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