バンドをやりたくて上京。そして性懲りも無く今も続けてる。1990年代〜編⑧(番外編・タイ一人旅、すぐに辞めたバイトあれこれetc..)
船橋市から練馬区に引っ越してからすっかり解き放たれた俺はお金に余裕があるうちに前から気になっていた「タイに一人旅」をしにいくことにした。
当時TVではいしだ壱成が「タイは若いうちに行け」とCMしていたな。
とはいってもバックパッカーのような長期の旅行をする余裕は無かったのと、根が小心なので宿だけはちゃんとしてそうなホテルを取り、あとは無計画で向かうことにした。
行った場所はバンコク市内。着いてみるとどういう訳かなんとなく子どもの頃に見たような風景に思えた。当時(1995年頃)はまだインフラも整っていなかったのか一見都会の様でも街の作りが雑なところもあって、それが幼少時に見た昭和の街並みを連想させたのであった。
ビルの谷間に小さな祠があるのを見つけた時も「タイっぽいなー」と新鮮に思えた。
観光名所的なところには一切行かず、屋台でご飯を食べてはひたすら街の中をウロウロするだけで面白い。
屋台の飯は大体一食が当時で60円くらい。何を食べても美味しく感じたけど、向こうの人が付け合わせに青唐辛子やニンニクをガリガリ食べるのは真似できなかった。(一回だけ試したが辛すぎて無理だった)
コンビニで売っていたとうもろこしのアイスバー(粒入り)もうまかった。あれは日本でもぜひ売ってほしい。
レコード店を見つけたので入ってみるとデスメタル系と思わしきジャケのカセットテープを発見。「THAILAND Only」と書いてあったのも気になり即購入。※見出し写真。(バンド名も読み方もわからない。記事を書くにあたり久々に聴いたらカッコ良かった)
次の日にまた歩き回っていると、昨日買ったデスメタルバンドのTシャツを着ている長髪の兄ちゃんが居るではないか!
「写真を撮らせて」と話しかけたら「は?なんでだよ?」みたいなテンションで返されたので一瞬「ヤバいかな?」と思ったがTシャツを指して「昨日このバンドのカセットテープを買ったんだよ」と話すと一気に打ち解けることができた。
ちなみに俺はタイ語どころか英会話もままならないが、向こうも英語が苦手だった様でお互いぎこちない単語の羅列のみの会話がかえって意思の疎通がしやすい状況を作っていた。
メタル兄ちゃんは家族と一緒に屋台で果物を売っており、音楽好きらしくラジカセでなにやら流しながら店番をしていたので、日本から旅のお供にウォークマン用として持ってきていたパンク中心の編集テープをここで流してみたくなった。
その中には日本のノイズコア confuse、ガレージパンクの the 5.6.7.8's、はたまた米のパンクバンド youth brigade、etc...と今考えると節操が無いけど当時好きだった曲を詰め込んでいた。
ラジカセで流してみると兄弟でノリノリで聴いている。
なんだかとても素敵な時間だった。
※バンコクの果物売りメタル兄ちゃん。
ひとつ後悔しているのは外国人と接し慣れていなかったせいか、タイ人の歳格好がうまく判断できず、メタル兄ちゃんの弟さんだと思って「ユア ブラザー?」と聞いた相手が実は妹さんで(ベリーショートヘアーだったから余計にそう見えた)「ムッ!」とされてしまったり、どう見てもオッさんの店主に「ユア ファーザー?」と聞いたらその人はメタル兄ちゃんの兄貴で、俺の失言に対して静かに微笑みながらもうつむいて少し悲しそうな顔をしていた。
カセットテープはメタル兄ちゃんと妹さんにプレゼントした。
今よりずっと音楽の流通が悪かった時代。その後しばらくバンコク市内の果物屋台のラジカセからconfuseやthe 5.6.7.8'sが流れていたかと思うと楽しい気分になる。
他に印象深かったのは泊まったホテルのフロントでトランスジェンダーの人が自然に受付業務をしていたことだ。
俺は何故かその人に気に入られて、用事があってフロントに行くと花瓶の花を抜いて差し出されたりした。(モリッシーのように)
モーニングコールをお願いした時にその人から電話がかかってきた時は少しドキドキした。
日本でも最近はLGBTQという言葉だけは一人歩きして一般的になってはきたけど、こんな感じになるのはまだまだ先のことなのだろう。
他には街を歩いていて袋小路に入ってしまった時に「逆モヒカン+モトクロスバイク」という今まで見た事のない不良スタイルの軍団にでくわしたり。(刺激しないようにそーっと通り過ぎた)
何度か通った屋台では顔を覚えられて挨拶を交わすようになったり。
「ほほえみの国」と言われるように総じてタイの人達は人当たりが良く親切な人が多い印象を受けた。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、日本に帰ってきたら二日ほど下痢も止まらなかったが(「生水は飲むな」と言われていたのに途中からめんどくさくなって気にしなかったからか)自分のお金で海外に一人旅に出かけることができたことに満足した。
自由に使えるお金も底をついてきたのでそろそろバイトを探すことに。
だが、タイ旅行で解き放たれた感じはなかなか元にもどらず、前にも書いたけど「弁髪姿+履歴書持たず」で面接に行き、それでも雇ってくれたのに速攻で辞めたりしていた。
そのお店はイタリアンレストランだったんだけど、店のきまりでお客さんが入ってきたら全員で「いらっしゃいませ〜ボンジュルノ〜」と言わなければならず、それだけで嫌気がさしてしまった。
その次に洋風居酒屋で働き出した時も(弁髪は弟に切ってもらった)そこの店長がかなりのキ◯ガイで、仕込みの最中にわけのわからない言いがかりをつけられたり、異常に細かいことばかり言う割に厨房の中が汚かったりと変な店だったので、ここもすぐに辞めた。
そんな事を繰り返していたら本格的に金がなくなってきてしまった。
そして繋ぎのために不動産会社のチラシ配りのバイトをするのだけれど、ここがまたド汚ないことをやっていそうな会社で、、、。
※次回に続く。
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