【ワートリ徹底解説】R5における柿崎国治の狙い
早速だが、この記事を読んでいるあなたは「柿崎国治の戦術レベル」をどの程度だと認識しているだろうか。
R5で大敗したことで低く評価していないだろうか。
少なくとも筆者には、読者の間で柿崎は「判断が遅い」というイメージがついているような感覚がある。
しかし上記のシーンも理由を考えると実際は極めて合理的で、一手の遅れは悔やまれるが、状況を考えると最善の一手を取っていることがわかる。
というわけで、そのシーンも含めてR5の全描写について解説していこうと思う。
「もうほとんど理解している」という方は目次から読みたい箇所を選んで確認いただきたい。
選択マップと基本戦術
工業地区
まずは選択マップから解説する。今回柿崎が選択したのは「工業地区」だ。
建物が多く、ややせまいこのMAPは玉狛のみに存在する狙撃手を対策でき、開けた場所では柿崎隊の強みでもある「射撃戦」を仕掛けられる。
結果的にこの選択で玉狛のワイヤー陣に引っかかることになったのだが、これを予想し、回避できる人間は三雲にスパイダーを授けた嵐山隊以外にいないだろう。
「狙撃手対策」や「射撃戦を仕掛けやすい」という点を考えても、この選択に疑問はないはずだ。
合流優先の戦術
基本戦術についても解説しておく。柿崎隊は基本的に合流を優先し、3人で攻撃を仕掛けて点を獲る部隊である。
全員が万能手寄りのトリガー構成をしているということは、接近戦でも射撃戦でも常に全員が攻撃に参加できるということだ。
ワールドトリガーの読者ならこの強みをよく理解しているだろう。
柿崎隊の他のB級部隊にはない唯一無二の強みは「あらゆる状況で全員の攻撃を集中させられる」という点だ。
1対1では難しい勝負でも3対3なら「数の力」で押し切れる。「合流優先」は柿崎隊の強みを最大限に活かした戦術だ。
開始〜香取隊との射撃戦
奇襲案の却下
R5序盤、香取が空閑に仕掛けた場面で照屋は奇襲を提案した。だが、柿崎はこれをノータイムで却下した。
この理由について深掘りしよう。
まずはこのシーンの照屋の位置を確認してほしい。
MAPをよく見ると照屋は他の部隊に完全に囲まれている。もし奇襲が成功したとしても、もう片方のエースがいる部隊にほぼ確実に落とされてしまう状況なのだ。
つまり、奇襲に成功しても失敗しても照屋を失う可能性が高いということだ。
「照屋を失う」というのはどういうことかというと、後述する射撃戦での駒がそのまま1枚減るということだ。
「個の力」で劣る柿崎隊にとって、合流前に駒が減る展開はかなり苦しい。
この奇襲案の却下は、目先の点に囚われず、このランク戦での「勝利」を見据えた的確な采配だ。
合流後の射撃戦
香取隊が玉狛の新戦術に苦しんでいる間に合流し、柿崎隊の作戦が始まる。
ここからが柿崎隊vs香取隊の射撃戦だ。このシーンは柿崎の方針を理解する上で最も重要な描写のため、よく読み返してほしい。
万能手と銃手がいる香取隊に対して有利に戦いを進めている。
香取に「このまま撃ち合っても勝てない」と言わせるほどの圧力は、序盤で照屋を失わずに合流できたおかげで作れている。
玉狛とは正面から射撃戦をしていないが、狙撃の射線は通っていないためどちらの方が強いかは明白である。
ここまで読めば「なぜ柿崎が照屋の奇襲を止めたか」ははっきりとわかるだろう。単純に、3人揃っていれば他の部隊にも勝てるからだ。
柿崎が照屋の「生存」を重視したのは、その先にある「勝利」を見据えたからだと改めて理解できたはずだ。
玉狛第2のワイヤー陣完成〜ベイルアウト
砲撃への反応
香取隊との射撃戦中に玉狛の攻撃に遭った柿崎隊は一時離脱をする。その後、玉狛を無視して香取隊と再び戦おうとするが……
玉狛の「隠れるとこなくなるやつ」によりその狙いは阻まれてしまう。
しかし柿崎は即座に対応する。この後のシーンは「柿崎の戦術レベル」を象徴するようなシーンであるため、よく読み返してほしい。
玉狛の「隠れるとこなくなるやつ」を受けて、柿崎は即座に「香取隊と連動する作戦」を考え、先に攻めると玉狛の反撃をもらう可能性があるため「待機」の命令を下したのだ。
玉狛はR2における荒船隊側になることを自分から選び、柿崎隊は玉狛・諏訪隊側になることを選んだと例えると状況がわかりやすいだろう。
その作戦を立てられたのは勝負を捨てていないからであり、何よりまだ勝ち目が十分にあるからに他ならない。しつこいようだが、柿崎は終始「勝利」を意識しているのだ。
狙撃手を押さえに行く案の却下
ここからが本題である。香取隊と連動してワイヤー陣を攻め込むも、ワイヤー陣対策になる炸裂弾を装備しているため空閑にマークされた柿崎隊。
巴が柿崎に狙撃手を押さえに行くかを聞くが、柿崎はこれを許可せず、3人で空閑と戦うことを決めた。
この指示を理解するため、実際に巴を雨取の下に行かせた状況を考えてみよう。
時枝の言う通り、現在は3対2が二つの状況だ。(正確に言うと、空閑にはスパイダーの援護があるため、柿崎隊側は3対2以上の状況)
ここで巴を雨取の下へ行かせると、雨取 対 巴で1対1、空閑+スパイダー 対 柿崎・照屋で1対2、三雲 対 香取隊で1対3の構図となる。
そうなると一番落ちやすい駒は誰か、全員の予想が一致するのではないだろうか。
三雲だ。
(実際の試合ではこの後三雲 対 香取隊の状況になり、空閑が合流するまで粘りきるのだが、今までの三雲を見てこの結果を予想できる人間はいない)
柿崎隊はこの時点で雨取の鉛弾装備を一切知らないが、巴が完璧に対処すると仮定したとしても、その後に三雲を落とした香取隊に狙われることになるのだ。
ここで巴が落とされると射撃戦でのプレッシャーが落ちるため、香取隊に勝ち切ることは難しくなる。
つまり、巴を雨取の下へ行かせるということは、玉狛大幅有利の状況から、香取隊大幅有利の状況に変わるだけなのだ。
間違いなく状況は変わるが、柿崎隊の状況が好転する可能性が低い。
この展開で柿崎隊の状況が好転する可能性を考えるなら、「三雲が1対3の状況で、香取隊を1人以上を落とす」か「柿崎・照屋が1対2の状況で、香取隊が三雲を落とすより早くに空閑を落として巴と合流する」の二通りだろう。
いかに可能性が低いか、理解できたかと思う。
空閑にマークされた時点で、柿崎隊にとっての「太い勝ち筋」は「香取隊が三雲をすぐに落として雨取を押さえる」か「香取隊が三雲を無視して一人雨取を押さえに行かせる」しかなく、その「勝ち筋」を柿崎は追っているのだ。
ここで巴を行かせると雨取分の点は獲れるかもしれないし、序盤で照屋に奇襲させたら空閑や香取分の点は獲れたかもしれない。が、その後の展開で勝ち切るのは難しくなるのだ。
何度でも言うが、柿崎は「この試合での勝利」を常に考えている。その目的に沿った合理的な手段が「巴を留まらせること」なのだ。
「一手の遅れが悔やまれる」
上記は均衡状態からわけわかんないまま巴が落とされ、空閑+雨取+スパイダー 対 柿崎+照屋の状況になった後のシーンだ。
照屋の提案を承諾し、ようやく柿崎隊が雨取を押さえに行くことを決める。
(後述するが、ここで初めて柿崎の「長考」が描写される。これまでは隊員からの疑問や提案に対してノータイムで応答していた柿崎が初めて「長考」したのだ)
筆者は前項で「柿崎が巴を雨取の下へ行かせない選択をしたこと」の理由を解説したが、「柿崎隊が雨取を押さえる決断をすること」に関しては出水に同意だ。
まとめると、巴を留まらせる決断をすること自体には全面的に賛成だが、結果的に柿崎隊が雨取を押さえることになるなら巴生存時に決断するべきだったということだ。
玉狛にワイヤー陣を仕掛けられた時点で柿崎隊は大幅な不利を取ったため、ここでの選択に正解はない。可能性の高い勝ち筋を追った柿崎も正しいし、決断の遅さを指摘した出水も正しいのだ。
ここで重要な点は指示の正しさではなく、柿崎が長考した点だ。
長考の末、元チームメイトの時枝にも「意外」と評されるほどの指示を出した柿崎は何を考えていたのだろうか。
柿崎は「自分のせいで隊員の評価が本来の実力より低いこと」を気にしている。
そのため、柿崎視点で負けに近づくような選択は取らないだろう。
だが、柿崎は照屋を行かせることにした。
この時点でも照屋を雨取の下へ行かせずに柿崎隊がこの試合に勝つ選択肢は存在しているにも関わらずだ。
現状三雲が最も落ちやすい駒であることは変わらないが、香取隊は三雲に対応できていない。さらに柿崎隊側は空閑+雨取+スパイダーを相手にしているため「数の優位」は消えている。むしろ「数の優位」を取られていて状況が悪い。
その状況を変える一手を取れたのが今回の柿崎だ。
現時点で「柿崎隊が一番取りやすい駒」は雨取だろう。
つまり、柿崎は「試合の勝ち負け」だけではなく、部隊の成績がそのまま表れる「シーズンの勝ち負け」を意識し、最後の最後で「目の前の1点」を獲りに行ったのだ。柿崎が勝負を捨てることは絶対にない。
余談:柿崎隊の強みと弱み
柿崎隊はおそらく「3人の陣形」しかない。
つまり、3人揃ってようやく強みを発揮する部隊ということだ。
これは例えると、「合流以外の準備が必要ない」かつ「全員がまともに戦える戦力」の代わりに序盤〜終盤のどのタイミングでも一人落とされると陣形が成立しない玉狛第二なのだ。
このままでは奇襲や状況を変えるような大胆な一手を取りにくい。
その対策として「単独行動」を基本戦法に設定する案が出ているのだ。弱点を穴埋めする方針として間違いないだろう。
しかし、柿崎隊の「3人の陣形」は「どんな状況でも点を取れるエース」がいる香取隊にも通用する。
つまり、尖った駒がいなくても尖った駒がいる部隊に通用する戦法なのだ。
これはトリガー技術で近界に遅れをとるボーダーにおいて、一つの完成形とも言えるだろう。
この強みも忘れてはならない。
今後への期待
ここまでで柿崎は「常に勝利を意識している」こと、そして「勝利するための戦術は選べている」という筆者の解釈は共有できたかと思う。
遠征選抜試験は「隊員の今後の評価」にもつながる重要な試験だ。
そんな中、柿崎が「戦闘試験重視」と言い、さらに閉鎖環境試験でも何か考えがあると言った。
柿崎3番隊の今後に期待する理由はこれ以外に必要だろうか。
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