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【ワートリ考察】なぜ狙撃手は護身用のトリガーを装備しないのか

※本考察記事は一部ワールドトリガーの単行本27巻以降のネタバレが含まれております。



東「狙撃手スナイパーは寄られるとこうなります 寄らせちゃだめですね」

出典:葦原大介,「ワールドトリガー」,11巻,p.19,集英社

狙撃手スナイパーは「寄られたら弱い」という大きな弱点を抱えている。しかし、多くの狙撃手スナイパーはその弱点を補おうとはせず、狙撃トリガーのみで戦闘している。

なぜここまでわかりやすい弱点を残しているのだろうか。ブレードや銃手ガンナートリガーである程度応戦できるようにした方が良いのではないか。

一度はそう考えたことがないだろうか。実際そのような意見はよく見かける印象がある。

先に筆者の結論から述べておく。狙撃手スナイパーが護身用のトリガーを装備しない理由は「弱点を補って余りあるほど狙撃トリガーが強いから」である。

そう考えた経緯をここから説明していく。

1.トリガーの戦闘における「射程」の絶対的強さ

まず狙撃トリガーの強みから考える。

狙撃手スナイパー用トリガー
射程距離を重視した長距離戦用トリガー。
一撃に大量のトリオンを消費するため、連射はできない。

出典:葦原大介,「ワールドトリガー」,4巻,p.170,集英社

狙撃トリガーの特徴は「射程が長いこと」である。このシンプルな特徴で他を圧倒する性能を誇っている。

Q.目標を外れたトリオンの弾丸が、最大射程を越えた場合はどうなりますか?
A.弾体が大気と反応して消滅します。

出典:葦原大介,「ワールドトリガーオフィシャルデータブック BORDER BRIEFING FILE」,p.307,集英社

小南「弓場ちゃんの拳銃リボルバーの有効射程は たしか22mメートルちょっと これは攻撃手アタッカーの『踏み込み旋空弧月』が ギリギリ届かない間合いなのよ その間合いを保ってれば 弓場ちゃんは一方的に攻撃手アタッカーをボコボコにできる」

出典:葦原大介,「ワールドトリガー」,22巻,p.86-87,集英社

なぜなら、トリガーによる攻撃では、有効射程より遠い場所にいる相手には攻撃が届かないからだ。「当てにくい」や「威力が減衰する」などではなく、絶対に届かないのだ。

つまり、「射程が長い」とは「相手の攻撃範囲外から一方的に攻撃できる」ということである。狙撃トリガーがいかに強いかはこれだけ理解できるだろう。

だが、狙撃トリガーがどれだけ強くても弱点を補わない理由にはならない。なぜほとんどの狙撃手スナイパーは弱点を補おうとしないのか、次章で考察する。

2.なぜ全ボーダー隊員は完璧万能手パーフェクトオールラウンダーを目指さないのか

狙撃手スナイパーが弱点を補わない理由を突き詰めていくと「なぜ全ボーダー隊員は完璧万能手パーフェクトオールラウンダーを目指さないのか」ということになる
しかし現状で完璧万能手パーフェクトオールラウンダーを目指しているのは𝓣𝓮𝓽𝓼𝓾𝓳𝓲 𝓐𝓻𝓪𝓯𝓾𝓷𝓮ただ一人である。

前章で述べた通り、トリガーの戦闘において「射程」は絶対的な強さを持つ。

柿崎(弓場は近づかなきゃ始まんねーが 正面から当たる時点でかなり不利……)

出典:葦原大介,「ワールドトリガー」,22巻,p.111,集英社

射程が長い側の狙撃手スナイパーは寄られたら弱いのに対して、射程が短い側の攻撃手アタッカー銃手ガンナーは寄らなければ弱いのだ。

狙撃手スナイパーへの疑問と同じように、攻撃手アタッカーはなぜ射程の長いトリガーを装備しないのか、万能手オールラウンダーはなぜ狙撃トリガーを装備しないのかという疑問が浮かばないだろうか。

つまり、「なぜ全ボーダー隊員は完璧万能手パーフェクトオールラウンダーを目指さないのか」ということになり、突き詰めていくとキリがない。

完全無欠のノーマルトリガーは存在しない。限られたリソースの中で何を選び、何を捨てるかなのだ。全てを得るには完璧万能手パーフェクトオールラウンダーになる他ない。

それでも可能性があるなら弱点を補いたいという人はいるだろう。ここの理由についても詳細に説明している描写が27巻以降で登場したため、最後にその描写を紹介して本考察記事は終了する。

3.なぜ狙撃手スナイパーは護身用トリガーを装備しないのか

ローテンションロングレンジロン毛 東さん
ボーダーで最初に狙撃手スナイパーになった、生粋のロングレンジロン毛。レイジや当真や奈良坂に狙撃を教えたのもこの人。狙撃の技術だけでなく、佐鳥を使って場を和ませる気遣いも兼ね備えている。たぶんいろんなことを佐鳥のせいにしてる。それでも尊敬される人格者

出典:葦原大介,「ワールドトリガー」,5巻,カバー裏,集英社

風間「かつてのA級1位部隊を率いた「最初の狙撃手スナイパー」東春秋がいる」

出典:葦原大介,「ワールドトリガー」,13巻,p.126,集英社

二宮「……本当にそれで大丈夫か?相手がリスクを度外視して裏を掻いてくる可能性もあるぞ?」
絵馬「……そりゃその可能性はあるよ 人と戦う以上『絶対』はないし ……でもオレは ランク戦ずっとやってきて思うんだ B級隊員には『まじめな人』が多いって」
雨取「『まじめ』……?」
東「なるほど……面白い視点だな」
加賀美「『まじめ』ってつまりどういうこと?」
絵馬「そのまんまの意味だよ 負けたら反省する やられたら対策する そういうのがちゃんとしてるってこと 逆に言えば見えてる負けルートは塞がずにいられない そういう人が多い気がする」
加賀美「ふんふん」
絵馬「二宮さんが言う『リスクを度外視した動き』はA級のほうがやってくるイメージあるよ 駆け引きのルール自体をねじ曲げてくるみたいな……」

出典:葦原大介,「ワールドトリガー」,第244話,集英社

狙撃手スナイパーはかつてのA級1位部隊隊長・東春秋によって作られたポジションである。
そしてA級は「リスクを度外視した動き」をする。

つまり、「寄られたら弱い」という「リスク」は度外視し、「射程を活かして一方的な攻撃を仕掛けられる」という強みを押し付けるポジションが「狙撃手スナイパーなのだ。

空閑「今回くらい情報が少ないとまともな対策はむずかしいし 対応型のトリオン兵はおねだんも高くなる こっちも相手も対策がむずかしいなら 守りより攻めに特化したほうが勝ちやすい しっかり火力が出る攻撃パターンを1個作って どの部隊チームが相手でも最短で速攻 これが楽だし勝率もけっこう高いと思う」
歌川「いつもはお互い様子見から入るところを様子見を省略して主導権を握るわけだな」
空閑「そうそうそういう感じ」

出典:葦原大介,「ワールドトリガー」,27巻,p.188-189,集英社

この選択ができるのも、狙撃トリガーに「射程の押し付け」という「しっかり火力が出る攻撃パターン」があるからだ。

根付「同じA級でも菊地原くんは考えが遠征寄りですね この案も遠征先での戦闘を睨んだものでしょう」
菊地原
「対戦相手が どの部隊チームかの情報が伏せられる。視覚設定によって 敵の部隊チームが全員同じ姿の共通アバターに見えるようにする。」
提案理由:相手の動きとトリガーをよく見て警戒する癖がつく。自分の手の内をムダにさらさない意識が身につく。
林藤支部長「たしかに遠征先だと 動きと気配で相手の戦法を推測することが多いからなあ」

出典:葦原大介,「ワールドトリガー」,27巻,p.152-153,集英社

東「安定を求めて画一化した戦術だと遠征先で相性の悪いトリガーに当たったとき 何もできずに全滅する危険性もあるよな」

出典:葦原大介,「ワールドトリガー」,25巻,p.156,集英社

そして遠征先での戦闘は「相手の情報が少ない状態」で始まる。その状態から「様子見を省略して主導権を握る」ことができるのが狙撃トリガーだ。

空閑「しかけはシンプルにして 正面から最速最短で叩く 読み合いのポイントをしぼって相手を一本道に引きこむんだ」

出典:葦原大介,「ワールドトリガー」,9巻,p.161,集英社

つまり、ボーダー究極の初見殺しが「狙撃トリガー」である。

おそらく遠征を経験した・もしくは遠征に行く前の東が遠征先での戦闘を想定し、相手との様子見ターンを省略して一方的に勝つことができるポジションを作ったのだ。
その経緯を考えれば狙撃手スナイパーが護身用トリガーを装備しない理由がわかるだろう。

弱点を補って余りあるほど狙撃トリガーが強く、その強みを活かすことがボーダーの生存戦略だからだ。

【参考】
グラスホッパーを装備している人が隠岐だけの理由も考察しています。


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