良い意味で普通な人だよね
「うーん、なんかパッとしないんだよね」
新卒1年目、私には実績がない。
過去の23年間を振り返っても、これといった取り柄があるわけでもない。
実家の父と母の間に生まれ、友人にも不自由せず、最終学歴も4年制大学卒、
身長が160cmと小柄なのが惜しいが、決して悪くない人生である。
ただ、こんな人間はごまんといる。
どうしたら「パッとする」人間になれるのだろうか。
「インパクトはないけど優しい人だよね」
「良い意味で普通な人だよね」
こんな言葉をかけられるたび、「自分はパッとしない人なんだな」と空を仰いでしまう。
街の目抜き通りで裸踊りでもすれば、きっと目立つだろう。
いや、そういうことではない。
「職場で突き抜けた存在になりましょう!」
「他の人よりもモテる人になりましょう!」
インスタグラムには、こんなタイトルのコラムが、今日も垂れ流されている。
「どうしたら『パッとする』人間になれるのだろうか。」と悩む人間もまたごまんといるのだろう。
今朝、駅に向かう途中にすれ違った人の顔なんて覚えていないだろう。
その中にジャスティン・ビーバーがいたら話は違うかもしれないが。
近所のコンビニバイトのお兄ちゃんが、その日のシフトで接客したお客の顔を全員覚えているはずないだろう。
その中に目出し帽を被ってナイフを持った男でもいたら話は違うかもしれないが。
目に留まる人間なんてものはほんのひと握りだ。「パッせず」素通りしてしまうのが普通だ。期待なんてしない方が良い。
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誰もが「パッとする」「選ばれる」者になろうと必死だ。
私もまた同じだ。
解決策、そんなものはない。
ただ、一つ言いたいのは、知りすぎないことも大事なんじゃないかってこと。
隣の真っ青な芝を眺めるのでなく、目の前の一瞬、目の前にいる人、モノを信じてみる。それが「パッとしない」ものであっても。
そして、「どうしたらパッとする人間になれるだろうか」と考えるだけ無駄である。
良いものを生み出そうと動き、自分自身を理想像に近づけようと、毎日を過ごす。
せいぜいそれくらいしかできない。
時速50kmで流れる地方の国道のような、単調な毎日だ。
その結果が「普通」だとしても、価値はある。
悪かったな、パッとしない人間で。