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キハ283(道東2)
前日、旅行の高揚感が上がりきらないまま渡道してしまった我々。
朝起きても実感が湧かない。
それならば、彼に旅の誘いをしてもらおう。
特急おおぞら号
鉄道での北海道旅行はナンセンスだろうか?
でも、案外悪くないことを、北海道の鉄道未経験のTにも体感してもらいたかった。
ホームに列車がやってくる。
「あ、ちっちゃい頃図鑑で見た顔だ」
心のアクセルがジワジワと、踏み込まれた気がした。
ここで一旦、鉄道の話をさせていただく。
血が騒いでいるのだ。
1961年、北海道初の特急列車として「おおぞら」はデビューした。
それまで、特急列車は東海道線や山陽線でしか見られないものだった。
最大13両編成、食堂車も連結して、函館から釧路を11時間かけて走っていた。
鉄道が最も華やかだった時代である。
やがて、モータリゼーションの進展や航空機の発達で、鉄道も交通手段の一つとして、協調していく時代となる。
道内特急も長距離移動の手段から、中距離都市間特急の性格を強めていった。
車両の仕様も、エコノミー志向・高速化へと舵を切るようになる。
今乗っている「キハ283」は、これらの要求を完璧に満たすために開発されたマシンなのである。
「キハ283」の客室は見ての通り、箱の中に座席が並んでいるだけの、エコノミー要素強めの客室となっている。
※この車両に関する詳しい説明はこちらを参照されたい。
さて、列車は石勝線トンネル区間に入っていた。
車窓も真っ暗なため、車内を散策するとしよう。
こちらは中間運転台。
風切りと車輪の音が、轟々(ごうごう)とこだまする。
このタイプのステッカーも一昔前のもの。
トンネルを抜けると...
「やっと雪見れた。」
実は、ここまでの行程で雪景色を見ていなかった我々、
ようやく、「非日常」を実感し始めた。
この日高山脈の区間は雪景色とトンネルが交互に続く。
新得の駅が近づくと、次第に雲が切れ始めた。
眼下に十勝の大地が見える。
日高より東はカラッと晴れていた。
座席を、グリーン車に移動する。
浦幌を過ぎたあたりで、車窓右に太平洋が広がる。
黒々とした生臭そうな海。
海はこうでなくっちゃ。
次は、湿原の中を走る。
お分かりいただけただろうか。
先程から、山道に雪道、砂地や湿地などの軟弱地盤を走行しているのだ。
「おおぞら」の走る区間は、かなり癖のある環境の連続だ。
「キハ283」は、この環境下で高速走行を求められた。
その結果、変速機や台車にさまざまな仕掛けが盛り込まれた。
列車は、もうじき終着の釧路に着く。
到着。
そうそう、この列車には振り子装置も搭載している。
カーブの際に車体を傾斜させる仕組みである。
「キハ283」は、走行区間の特殊な環境と時代の要求が生んだ車両である。
しかし、彼らもそれほど先は長くない。
後継車両が登場したのである。
「キハ283」以上にエコノミー志向が強く、方向性が確立された、「優秀な」弟分。
効率良い輸送を目指す「交通機関・鉄道」としては正解だけど、私はキハ283の方が心が躍る。
鉄道の話をし過ぎた。
厚岸(あっけし)で食べた牡蠣丼の写真でもどうぞ。
久々に海産物を食べたもので、興奮してしまった。
それにしても本数が少ない。
しかも、乗客のほとんどは観光客で、「地域住民の足」の要素は薄い。
ビールを飲みながら、列車に乗り込む。
無人の原野
Tは「陸続きの海」と表現した。
「もうすぐ最果てに着く」という予感がひしひしと、感じられる。
落ち着き持った高揚感が、じわじわと、湧いてくる。
16時、終着の根室駅に到着した。
日没。
日本最東端の終着駅、
これまで訪れたどの駅よりも「最果ての予感」が強く感じられた。
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【おまけ】
今回の旅のお供のカメラは、祖父からもらったキヤノネットと、先月購入したEOSRPである。
白黒写真はキヤノネット、天然色写真はRPで撮ったんだなぁ〜と思ってほしい。