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【目黒区総合庁舎】「なんか未来」60年代に思いを馳せる
先日、写真褒めスペでお世話になっている皆さんとフォトウォークに参加した。普段、X上で交流しているフォトグラファーの方々と一緒に撮影できる貴重な機会となった。 神寺さん、企画いただきありがとうございます!
ルートは、中目黒駅からにんにきさんの個展会場までの約2km。道中で目黒区役所を訪れることになった。案内人は10p10fp展発起人でおなじみ、建築愛好家のおさむさん。
それにしても、区の庁舎がそんなにすごいのだろうか?正直なところ、建物の外観など特に気にすることなく、薄暗い蛍光灯の下で淡々と書類を提出しに行く場所というイメージしかない。一体どんな区役所なのだろうか。僕自身、建築は全く明るくないもののなんとなく好き。楽しみだった。
中目黒駅から商店街の雑踏を歩いてゆく。通行人が気にも留めないところからもフォトジェニックなポイントを見出す。褒めスペの素晴らしいポストはこのようにして作られているのだ。その様子を見て不思議に思ったのか、オバチャンに「何か撮ってるの?」と尋ねられた。
(カメラ持ってみると分かるぜ、オバチャン)
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路地、雑居ビル、家…
「目黒銀座」商店街を歩く。お高いイメージのある中目黒だったが、再開発の波に洗われてしまうことなく人々の生活が染み付いた雰囲気だった。
えっちらおっちらと写真を撮りながら区役所に辿り着いた。決して転入の手続きをしに来た訳ではない。庁舎を拝みに来たのだ。さて、どんなもんよ…
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「うぅお…立派だなぁ…」
村野東吾という有名な建築家が手がけたものだという。しかし、区役所にしては公共施設っぽさのない外観に思えた。それもそのはず、もともと千代田生命という生命保険会社の本社ビルとして建てられたそうだ。
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「いや、区役所ってレベルじゃねぇだろ」
こんなエントランス、令和の時代だったら「コスト削減」という名のケチプレイで間違いなく省略される。
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「ここ!アール(R)に注目してみてください。」
おさむさんから目黒区役所の観察ポイントが共有される。確かに、曲線に取り憑かれていたかと思うくらい、角という角が削られている。そう、階段までもが…。
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なんかこうぐるんぐるん回りたい気分なんだよな
「これ絶対現場大変でしたよね」と、当時の建設に関わった人たちを思う声も飛び出した。何より50年以上もこの状態を維持できているのが素晴らしい。
部材にはおそらく特注品もあるだろう。経年での取り替えや修理のことを考えるだけでゾッとする。汎用品の代用なんてきっと出来ない。
おさむさん「しかもこれ、上から吊ってるんです」
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「アアア!?浮いてやがる!?」
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「『なんか未来』だなぁ」
(どこまでも語彙力が無い自分に悲しくなる。)
「なんか未来」だし、ワクワクする、そんな建築だった。
このワクワクは「古いものは尊い」という懐古趣味に代表される価値観によるものか。ふと、大学のゼミでのひとコマを思い出した。
「先生!60〜70年代の頃、これからも世界はどんどん伸びてゆく感覚ってどんなものだったんですか?」
友人が60年代生まれの教授にこう問いかけた。天に向かって伸びる東京タワー、年々整備されるインフラ、オリンピック、万博、しまいには月にも行っちゃうぜみたいな時代。このような世界がとめどなく「進んでいく」感覚は、残念ながら今の僕らは持ち合わせていない。「幸せ」が飽和して頭打ちとなり、もはやどこを削るかという時代。そして、隙間と隙間を埋めるように無理矢理「新しさ」を見出していく時代。(あと、シンプルに金が無ぇんだよ。)
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過去の「栄光」を引き合いに出しては今を嘆く、最低な行為なのは分かっている。しかし、目黒区総合庁舎の帯びた強烈な「なんか未来」は今の時代に作り出せないものだ。きっと技術はあるはずなのに。
ただし、価値は時と共に変化する。陰鬱な時代に生きる野暮ったい僕自身も、時間が経てば何らかの尊さを帯びているかもしれない。令和への評価は、未来の懐古厨に任せたいと思う。「なんか未来」に相当する言葉を添えてくれるだろう。
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少々感傷的に綴ったが、フォトウォークをしている最中は「うぉスゲェ」を連発する安定の語彙力の無さで驚いていた。
自分の知らない領域へ誘(いざな)ってくれる人たちには感謝しかない。素晴らしいコミュニティに出会えたことを本当に嬉しく感じている。
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素敵な出会いに乾杯🍻
P.S. にんにきさんさんの個展、素敵でした。後日投稿したいと思います。