【Episode1】私と西成との出会い
「西成はコインパーキングに車泊めているだけでも、窓ガラスが割られるような恐ろしい街だよ」
これは、小学4年生頃、書道の賞を取ってその表彰式のため天王寺に訪れた帰り、新世界に寄った時に母から言われた言葉だ。
天王寺から歩いて10分すると、かの有名な観光地”新世界”がある。
そこから線路をまたぐと、いわゆる西成だ。
新世界のドン・キホーテ前、右側の線路を超えると西成(撮影:2018年)
10歳の私は好奇心で、線路の向こう側へ興味を持ってずっと見つめていた。
2002年当時は、西成方面に近づくにつれ、浮浪者と思える人が路上生活をしていた。線路を渡らずとも異様な雰囲気に包まれていることは、幼心でも感じ取れた。
「ここからは危ないから行っちゃダメ」
心配性な母が私の手を取って、そさくさと電車に乗った。
―それから、15年が経過。大学を卒業し私は渋谷の一般企業でOLをしていた。
大贅沢はできないけど毎月安定して支払われる給与、穏やかな上司、好きなお酒を楽しめるぐらいの時間の余裕、ちょうど良い距離感で仲良くしてくれる東京の友達もいる。
何も文句の付けようがない、日常生活を送っていた。
そんな私だったが、運命の出会いが訪れた。
その当時の家からほど近い、三軒茶屋のヴィレッジヴァンガードにふらり立ち寄った。(現在は閉店されているようです)
通称ヴィレヴァンは、雑貨屋だと勘違いされがちだが実は本屋だ。
普通の本屋では取り揃えてない、かなりレアジャンルの本と出会える。
この本はホームレスのメッカ西成をはじめ、”ドヤ街”などにいるホームレスを、著者が14年間取材した軌跡が漫画にて描かれている。
ホームレスといえば「貧困」などの、悲しい部分だけが取り上げられがちですが、ホームレスの実態を「キャラクター」として、不謹慎なまでに描写していた。特に、通称”日本で唯一のスラム”と言われていた西成という街に興味を惹かれた。
ホームレスになった経緯は十人十色、貧困、失恋、裏切り、犯罪など。
普段、何ら普通の生活している一般人であれば絶対に触れることのできない逸話だらけで、どっぷり引き込まれてしまった。
いつしか、私は「ここに行ってみたい」と思うようになっていた。
少しでもあなたの心に響いたら嬉しいです🌼