電子の世界で「同時」は作れません
人が思う「同時」と、電子の世界の「同時」は全く違います。
同時と思って設計(設定)しても、電子の世界では全く同時ではない事を認識しなければいけません。
電子の時間感覚は、人間を超越しています。
人は、1ms(1/1000秒)ずれても差など感じません。同時と感じます。
しかし、電子にとって1msは十分に長い時間です。
つまり容易にその時間を認識する事ができます。
1ns(ナノ秒)=1/1,000,000,000秒でも感知するのですから。
じゃんけんロボットは、必ず人間に勝つ事ができます。
原理は簡単で、「後出し」しているだけです。約1msの後出しらしいです。
カメラで相手の「手」を確認してから、瞬時に勝つ「手」を出すのです。
人間同士のじゃんけんで後出ししたら、間違いなく気づきますが、
電子(メカトロ)の世界の後出しは極短時間の後出しなので、気づかないのです。
この電子の感覚を理解していない為に、不都合を発生させる場合があります。
一例は、予期せぬグリッチ(ヒゲ)です。
これは意図しないパルス信号のようなものです。
例えば、2入力のAND回路で、 (入力A):0→1、(入力B):1→0で信号が変化したとします。入力信号は同期が取れていて、同じタイミングで0→1(1→0)に反転する機構になっているとします。
この場合の出力は理論的には0→0となるはずです。即ち0のまま変化無しです。
しかし、実際は入力A、Bの信号が完全に同期が取れる事はないです。配線長の違いなどで遅延が発生するからです。もし、入力Bの1から0に移行するタイミングが少しでも遅れれば、入力AとBが両方とも1となる瞬間が発生します。
その時の出力ロジックは1になってしまうわけです。
つまり、ずっと0のままが正しい出力に対して、一瞬だけ1が出てしまうのです。
これは、いかに同期のタイミングがシビアかを意味しています。
こうなる原因は、回路遅延の他にも「活線挿抜」があります。
活線挿抜とは、電源や信号をいれっぱなしでコネクタの抜き差しをする事です。
コネクタの各端子は、抜き差しの時に全端子が同時に接触・開放するわけではありません。僅かであっても時間差が発生します。即ち同期のズレが発生するのです。
ですので、抜き差しの時は必ず、電源・信号はOFFにしてから行わなければいけません。