拝啓、屁をこいたジジイへ
バスに乗っている。3列席の長距離運行バスだ。
まず乗ったときから違和感を覚えた。
(あれ、ジジイが多すぎる…)
平日だからなのかもしれない。圧倒的にジジイが多い。おばさんはかなり少なくてジジイがとにかく多い。
私が予約した座席は3列の真ん中、本当は窓側がよかったけれど、ギリギリに予約した関係でここしか空いてなかった。
15番の席、どう見ても物が沢山置かれている。カバンとか大量の食い物が入ったレジ袋とか、上着とかとにかく色々。
予約していた席の左右には二人のジジイ。人の予約した座席に勝手に物を置きがちなのはジジイあるあるだということは知っているが、どっちのジジイが置いたのかまではわからない。
「あ、あのーここー」、と、少しわざとらしく声を張りながら出してみる、と、右側のジジイが、「ああ?ここ?」と、怪訝そうな顔をする。するな。
物をどけてもらって、「あい、あい」とジジイが言うから思わず、「ありがとうございます!」、と、言った。なんで感謝しちゃったんだろう。
席に座ると、まだ私が真ん中の席に座ったことに納得がいかないのか、「真ん中に予約するなんてどうして?」、と、話しかけてくる。
「真ん中しか空いてなかったんすよ!!」
声のボリュームを間違えた。
「ああ、そうですか。」急に敬語になるジジイ、終わる会話、たぶんこれは私が悪い。
話を終えると、左からチュパチュパと音が聞こえてきた。チュパ爺だ。
チュパ爺は朝から缶ビールを飲んでいて、時々ふわあ〜〜〜ん、と、大きなあくびをしていた。
バスが目的地に到着する間際になると、むわわ〜〜〜ん、と、初めて聞く欠伸をしていた。
話しているのを聞いていると、方言から関西人っぽかった。バスで移動するのも大変だろうな、と、思っていると急にチュパ爺がビデオカメラを取り出して外の風景を撮影し始めた。
それなら何も気にならないんだけど、逆側の景色も撮りたかったみたいで、身を乗り出して私の顔面付近にカメラをのばしたりしてきた。これもまあ観光客なら仕方ない。
問題は屁なんだよな。
ブリって聞こえちゃってるし、屁をこいちゃったってデカい声で連れのジジイに報告してるし、ちゃんと臭い。
こくのはいいけど、すかしてくれよな。気になって仕方がない。
ただ、ビールを飲んでた割にはゲップは一度もしなかった。ゲップと屁ってジジイの欲張りセットって思ってたから意外すぎて、考えを改めようと思った。
でも密室で音を出して屁をするのはよしてくれよな。