anis

22yo/poetry/散文

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最近の記事

8

8と書かれた黒い球が落ちている地面に這いつくばって その球を手に取り思い切り投げてみた その球は美しい曲線を描きながらその先で 走ってくる男の額に直撃した 男は倒れ、赤黒い血を流した その血の水脈の先でまた8と書かれた黒球は転がった ある時は緑のマットの上でポケットに流れ込んだはずの それは今アスファルトの上を転がり 男の傍にとどまっている 行き場のなくした祝祭の後の 我々のように そして君たちのように ある限られた幸福のために

    • 流れる血と石鹸

      流れる血を石鹸で洗おう 人の肌を削りその内部を肉が裂ける 血が噴き出して止まらなくなる色を 石鹸で洗おう しみてしまうのは仕方がない 君の血を石鹸で洗おう 白い泡に血が混じって 桃色のような花になる 流れる血を石鹸で洗おう 誰も知らない 悲しみのための産声に

      • ホテルno.1

        ホテルの一室には単なるデスクが置かれていてそこへ花が生けられている 石鹸の匂いが充満している 白いシーツが間延びし、退屈なホテルを映し出している そこに流れ込む一人の女がいて それはまるで流砂に飲まれる丸石のようで ずっとなまめかしく ずっと無機質な 寝姿 ラジオから鳴る声は部屋の壁中を響かせ、女はそれを聴いているのか   聴いていないのか、どちらでもいいけど そのまま生温かく、間延びした、退屈なままで、女の脚の指先の爪から  生えだす 一輪の花  真っ白で

        • 乾いた太陽

          血の流れる湖それは太陽です 太陽、それは乾いた命です 例えば、愛や恋やの不毛さを説くような単純な物語ではなく それはモチーフとしての乾き 乾いた石鹸の香り 何を求めても飽和している 太陽それは 君です 愛の無い 君です 音の無い世界にいるすべての僕らの 単なるモチーフとしての 望まれる、希求される、愛される そんな君です

          単なるレイトショーの終わりに

          久しぶりに街に出ていた。信号機を待つ人たちの群れの中には美しい身なりの女や奇抜な服を着たユース、GUCCIのTシャツを着た外国人らがいて、彼らは皆幸福そうに見えた。男はイヤホンから流れる音楽を退屈に感じていて、その曲を今にも止めようとしている。そしてイヤホンを外す、映画館の中に入る。 映画館はそれほど人が多くなかった。目当ての映画はもう始まっていて、男はその半券を持って劇場に入るが、人影はそれほど見えず、Gー7の席に座る。両隣に人はいない。男は誰もいない映画館の誰も観ないよ

          単なるレイトショーの終わりに

          nnn444

          誰も知らないあの子の言葉と笑い方にいち早く気づくのは誰だろう。僕たちの世界の何かを憎んでいる彼女のことを知らずに笑う僕たちに、彼女を笑わせることなんてきっと。それでもいいから僕は、彼女の中にあるそのような温もりに似た麗しさに、ただただ愛を感じていたいだけなのか。彼女が何も言わないならそれでいいしむしろそうあって欲しい。仲良くなりたくなんてなく、ただ生温かい波に揺れていたいだけなんだろう。蕩けていたいだけ。ふやけていたいだけ。無理せず笑う人は笑うし、憎む人は憎んでいるのだけれど

          恋愛のような詩

          買ったばかりの靴が 汚れてしまった時に それを洗い流してくれたのは  無茶苦茶に何かを壊したくなって 手あたり次第のものを否定しまくって 愛せない くだらないと言ってしまった時に 温かな光を浴びせるようにして 愛してくれたのは  眠った顔を見て まぬけな顔だなと思いながらも 少しばかり愛おしく思って 喜ばせて 楽しませてあげたいと 思えたのは 花束を贈りたいのは 艶やかな赤色の口紅を買ってあげたいのは 大事にすることが大事にしていないという逆説のようなものを認知して 少

          恋愛のような詩

          無題

          あほが何か言ってるのか 賢いのが何か言ってるのか 僕にはわからない あほも賢いも同じようなことを言っていて そして同じようなことをして怒ったり、わめいたりしていて よくわからない わかりやすくておもしろいものをくれよ 僕はあほなんだ 例えば像を結んで それを結び続けようとするのならば 否定すべきものも生まれる そうこうしていくうちにきっと こうあらねばならないとなってしまって つまらないことや くだらないものを 観なくなって しまうのかもしれない 像を結ぶことを一度やめてし

          センチメンタリスムの耽美的破滅性

          堕落していく 破滅していくことを 美しいと言った 煙草を吸っている女の無気力な目とそれを挟む指に乗るネイルの煌めく粒が どちらも光を束にして集め 白く揺れた 潤いながら 艶やいで濡れた 逃げていく男を追うことや 愛されていない者を愛そうとすることや 建前を本音に聞き違えて愛されているふりをしていることを  良しとしている人々 あるいは 脈々とした水流の中の その死を孕んだ激流に飲まれることを 美しいとしたり 哀し気な音楽を聴いて そういうもので心や過去を塗りつぶしてみよう

          センチメンタリスムの耽美的破滅性

          無題

          ずっと何かを探している。 誰かと話をしていても 気に入った服を着ても ずっと何かを探している。 そうやって これだ とか これじゃない とかを一通りやりながら どうにかこうにかその”何か”に形を変えて押し込めるけれども それは明確に”何か”ではないとき いったい 何をやっていたのかと思う 私たちは 今日も そうやって生きている

          SHUKUSAI 的 SHUKUHAI

          ワインボトルの底 深緑色の中に 深く深く赤い果実酒 確かあれは 酷く蒸し暑かった夏の日のホテルの一室 祝祭的祝杯をあげるために コンビニで買った安いだけの葡萄酒 別に何かを求めていたわけでもないのに 杯を合わせて音が鳴る 乾いた音が そうやって生きて 蟲のようにもがいて 醜くとも みすぼらしくとも 君と買ったワインボトル 深く深い緑 あの日君はよく笑った 乾いて突き抜けた声で

          SHUKUSAI 的 SHUKUHAI

          女性の詩

          すらりと伸びた腕を挙げた その脇に毛を生やしているのは 白く肉付きの良い脚から生えた脛毛のコントラスト よく映えるのは からだの優しい丸み しっとりとした湿度 然るべき重み 締まる足首の先で さらに曲線 さらに先 深い赤  マニキュアを塗りたくった指指の間から少し向こうが見えたのは 水が塗られたような艶やかな鼻筋と頬とが 淡い輪郭をつくり 対照的にまで くっきりとした縁取りの瞳は 輝かしく そして煌めかしいまでに 美しい あなた

          女性の詩

          音楽の詩

          あの馬鹿みたいにかっこいい音楽が耳に入るとき 僕らは手を挙げてそれを迎え入れた 思い思いの形に飛び跳ね 訳の分からない言葉を叫んでいた それが例えば 誰かの一日を救うとき 誰かの夜を救うとき 音楽は音楽となって私たちの 体に流れ 血となって巡り 脚や腕や首筋をも奮わせ そうして僕たちを揺らす。 強く揺らす 音楽は人の命を救わない 音楽で救われる命はない 音楽は人を殺す 音楽は子どもを生む 太陽のヴァギナ 月の光のペニス そして その間の あの見たことも無いような色の空から 音

          音楽の詩

          夏の夜の詩

          眠りに落ちる時 雨蛙の声と知らない虫の声とが遠くから聞こえてくる 畳の感触が伝わるほどに 薄い布団を引いていて 乾いた草の 匂いが伝わる 夜風が ベランダの網戸から穏やかに流れてきて 火照る体を撫でていく 夜がひっそりと息をしている 夜が深く夜気を吸い込んでいて それを音も出さずに吐き出しているような 夜全体が 大きく空を包みながら 膨張しては、収縮して 夜は夏の夜

          夏の夜の詩

          墓参りの詩

          あれほどあくせくと いろいろなことに動き回った僕たちが 死んだあとに たったこれっぽっちの石にしか 残らないでいることが 悔しいのか悔しくないのか わかりません 立派な石だけでも残っていることが奇跡なのか いかにも貧相な石塔を見ると 真新しい石の下で眠る人たちは まだいくらか嬉しいのだろうか とも思う 最中と柑橘系の果物の切り身だけが 墓石の前に置かれていると 死んでいく前にはもっと 沢山のものを食べていたのにと 思う 小さなコップに一杯の水がなみなみに 注がれているその

          墓参りの詩

          新幹線の詩

          西から東へ 大阪から東京へ行くのに こんなにも フランクに 流動的に 列車に乗って 揺られることは 幸福 白い アイロンのかけられた ワイシャツを着た人たちが あくせくと真面目な顔つきで 使命的な具合で 歩いていく 後ろにはアタッシュケース 朝 駅前のパン屋で 買った ミルクパンとソーセージパンを 座席について食べたら もう景色は流れ出していて 退屈な旅の始まり

          新幹線の詩