ことばから知る、縄文人・弥生人の感覚
日本人はどこから来たのか、そのルーツはどこにあるのかという問いは、DNAのハプロタイプによってほぼ解明されました。しかし、日本語のルーツは、依然、謎のままなのです。表音文字としての漢字が入ってくる前から、文字のない時代から、縄文~弥生に起源を持つ、「やまとことば」が存在してきました。中国や近隣のアジア地域にも、日本語のような音節言語(イ・ン・グ・リッ・シュと音節ごとに区切って発音する)が見当たらないことでもそのルーツは謎とされてきました。
Amazonで、「日本語 成り立ち」「日本語 ルーツ」と検索しても、「漢字の意味」などを表した書籍が並ぶだけで、やまとことばに触れてあるものは皆無に等しいのです。そんな中で見つけました!小林哲著『日本語の起源』という本です。やまとことばの単語を機械学習にかけることで、セマンティックと呼ばれる意味内容に分類することに成功したというのです。(AIも生成AIとかだけじゃなく、こういうのに使ってほしい)
おもしろいなと思ったのは著者の小林さんが言語学者ではなく、エンジニアだということです。オノマトペと呼ばれる日本語独特の擬態表現(フワフワ、ワクワクなど)がありますが、江戸時代以降の言語学者の研究によって、それらは感情表現とされ、それが定説化していました。しかし、今回の発見によって、感情表現ではなく、意味のある文章表現であることが分かったのです。例えば、フワフワなら、「フ」(踏む)+「ワ」(溝・割れ目)、で溝板を踏み抜き、一瞬、空中を浮遊する状態を表します。フラフラは、もっと分かりやすいと思います。「フ」(踏む)+「ラ」(空間、空気)、で、千鳥足で歩く様を表します。
では、四季についてはどうでしょう。どんな意味を持っていたのか調べてみました。
ハル=境界線+循環=一年の始まり
ナツ=鳴る+刺す=セミが鳴いて蚊に刺される季節
アキ=赤く染まる+木々
フユ=押しつぶされそうになる+見通しが悪い=雪が積もる様、吹雪く様
樹木が紅葉する様を見て、秋の訪れを知るなんて、ロマンティックですね。
これが2000年や、3000年前の日本人の感覚です。
あとは、身体を表す言葉から、当時の食糧事情も分かってきました。
カラダ=苦しい+空間+らせん状の(内臓)=空腹を訴えてくる場所
オナカ=大きな+音+苦しさ=おなかが空いて、ぐうぐう鳴る様
飽食の時代に暮らす私たちからしたら、ちょっと切なくなってきますね。
人間の本質を突いたような言葉もあります。
ムカシ=脈動+困難+広がり=ときめきを失った人
あなたの会社にもいませんでしょうか、昔の武勇伝ばかりを語る人。今、現在、ときめきを失っているのですね。
本に載っていた例から、語句を全部エクセルに打ち込んだものを添付しておきます。よかったら、ご自身でも試してみてください。他にもいっぱい面白いものが出てきそうです。少し、連想を働かす必要のあるものもありますが、そこは、縄文人・弥生人になったつもりで、言葉の質感を感じ取りながら、意味を探ってみてください。
と限りなく続いていくのです。