船井電機の破産解説②資金流出は300億円どころではないんじゃないでしょうか編

どうも、こんにちは!

今回は船井電機の破産に関して書いていこうと思います。

船井電機が破産するまでの流れは以下の通りです。
①2021年5月:秀和(出版事業など)が船井電機をTOB(買収)し、船井電機は上場廃止へ
②2023年4月:船井電機が脱毛サロンのミュゼプラチナム買収
③2024年3月:ミュゼプラチナム売却
      ミュゼプラチナム関連の資金援助や、連帯保証などもあり資金繰りが悪化
④2024年10月:破産、従業員全員解雇

前回は①の部分で買収スキームが今回の件を分かりにくくしていると思いましたので、その部分に触れましたのでまずはそちらをご覧ください。

船井電機が買収前に保有していた350億円ほどの現預金が3年ほどでゼロになったと話題でしたから、実はそれはちょっと語弊があるよという事を前回は解説しました。

そして、今回はその買収以降の流れについて触れていき、実際の資金流出は300億円どころじゃないかもしれないという件について書いていこうと思います。

「買収前の350億円の現金が~」は語弊だけど、トータルの額で見るとそれどころじゃないかもねって話です。

それでは、書いていこうと思うのですが早速謝罪です!
前回の記事は間違っていたかもしれません。

前回の内容の結論だけ言うと、秀和の船井電機買収にはLBOと自己株買いが活用されていて、それによって買収時点でLBOの150億円、大株主である創業者の息子さんからの自己株買いの100億円で計250億円ほど、船井電機は資金を失っていたという事でした。

なので、買収前の350億円ほどの現預金が全部無くなったと報道されているけど、実質100億円でちょっと語弊があるよねって話だった訳です。

この買収スキームだった事は間違っていないのですが、どうやら創業者の息子さんが船井電機の資産に100億円ほどの抵当権を設定しているとの情報があるようです。

という事は自己株買いの、100億円ほどの資金は支払われていなかった可能性があるという事です。

おそらくですが「100億円の資金を一気に支払ったのでは資金繰りが苦しくなる・今後の成長投資が出来ない」などの理由で、事実上の分割払いに合意してもらっていたと考えられます。(自己株買いの後に息子が船井電機に100億円を貸し付けている事にしていたと考えられます)

この辺は確かな情報が分からないので、何とも言えませんが買収で失っていた資金は250億円ではなく150億円だった可能性もあるという事で、前回の記事が間違っていたかもしれません。

買収時点から強い意図があったのかもしれませんし、多角化路線を進めようとしていたようですから、そのために本当に会社に資金を残しておきたかったという事もありえます。
この辺は推測にしかなりませんから、これ以上は触れませんが今後の報道には注目です。

さて、それでは続いて買収以降の流れに触れていきましょう。

この買収以降、新オーナー側が進めていたのは多角化路線でした。

今は削除されている記事が多数でタイトルが分かるだけで内容まで見られるものはありませんでしたが、複数のインタビューや講演のような事を行っており、多角化経営に触れています。

破産後の報道を見てみると、船井電機は多数の関連会社に貸し付けを行っている一方で、その多数の会社が財務的な問題を抱えており回収が難しいと報道されています。
船井電機の資金を活用し、数多くの買収や資金援助を行い多角化を進めていた事が考えられます。

ちなみに、ホールディングス化し船井電機ホールディングスを作って多数の会社を保有していたようです。

それ以外にも買収後の2022年3月にもアメリカのインク関連の事業に4億円以上の投資や電動アシスト付き自転車などへも投資を行っていた事は間違いなく、積極的な投資を続けていたという事は分かります。

そんな、積極投資・多角化の中で出てきたのがミュゼプラチナムの買収です。

社名がややこしいのですが、2022年12月に船井電機の子会社のミュゼプラチナムシステムズ合同会社という会社が借り入れをしており、それに対して船井電機が33億円の債務保証をしていた事が報道されています。

ミュゼプラチナムシステムズ合同会社は多角化の中で、ミュゼプラチナムの買収のために作られた船井電機の子会社で、そこが船井電機が債務保証して借入をしていたよという話です。

そして、このミュゼプラチナムシステムズ合同会社を通じて、株式会社ミュゼプラチナムの買収が2023年4月24日に行われました。

その後のミュゼプラチナムの経営に対して、船井電機から多額の資金援助などがあった報道されていますが、具体的にどのようなものがあったかは分かりませんでした。

確実なのは、ミュゼプラチナムは「サイバーバズ社」のアフィリエイト広告に対する代金未納分が22億円ほどある事で、それに対して船井電機ホールディングスが連帯保証している事です。

2024年8月~1月分が未払いだとしていますので、ミュゼプラチナムは買収直後から資金繰りに困っていた事が考えられ、資金援助が必要だったというのは推測できます。

また、サイバーバズ社はミュゼプラチナムとのアフィリエイト広告の取引開始が2023年4月からだとしており、船井電機の買収以降に取引が始まっていた事が分かります。

脱毛など美容関連の事業は広告が重要な事業です、となるとサイバーバズ以前の取引先もいたはずで、何らかの理由でそちらとは取引を終了しているという事です。

ここからは推測となりますが、以前の取引先にも未払いがあって取引継続が難しい状況だった事が考えられます。

広告会社との取引が難しくなる中で、船井電機の信用力を使うために、船井電機にミュゼプラチナムを買収させ、連帯保証して取引を始めた可能性があるという事です。

また、ミュゼプラチナムは広告費は未払いでも、広告をかけて事業は継続していたわけですから、その事業継続によってお金は入ってきていたわけです。

となると、その資金が以前の広告会社への支払いなどに充てられていた事が考えられます。

新規の広告会社との取引を初め、その事業の中で得た資金は以前の債務に支払う事で、ミュゼプラチナム自身が支払う必要のある債務を減らしていっていた可能性があるという事ですね。

つまり、ミュゼプラチナムが抱えていた広告会社などに対する債務などをなくすために、買収させた船井電機の信用や債務保証を活用していた事が考えられるという話です。

そして、そういった負債が軽くなったためか、ミュゼプラチナムは2024年3月には売却され、その後のミュゼプラチナムは会社分割などを繰り返しているようです。

連帯保証があるとはえ、ミュゼプラチナムも債務の支払いが必要なので会社分割などを通じて事業継続を出来る、切り離した企業を作っていた事が考えられます。

ミュゼプラチナムの事業継続のために、船井電機の信用力や資金を活用するための買収だった可能性があるという事ですね。

続いてミュゼプラチナムの売却以後にも触れていきましょう。

推測も増えてしまうので詳しくは触れませんが、2024年4月期以降は役員の多くも入れ替わり、多様な人が入ってきたと言われています。

その結果、テレビ事業などを行っていた船井電機単体の財務状況を見てみると、2024年9月末時点で、ほぼほぼ流動資産が無く、資産の大半は価値のないとされる関係会社株式や回収不能とされる貸付金ばかりとなっています。

大半の資産が切り売りされてしまったと考えられます。

通常の事業活動をしていた買収前の財務状況を見てみると、製品や原料などが計160億円以上あり、買掛金や未払い金といった負債が計190億円以上あります。

これが船井電機が事業を継続するための自然な財務状況だという事です。

それが、破産間近では原料などが計20億円ほどと激減した一方で、買掛金や未払い金といった負債は、買収前よりは減少していますが160億円ほどあります。

つまり、通常通り事業活動を行うために仕入れを行っていたはずですが、その仕入れた原料なども現金化され資金流出していった可能性があるという事です。

2024年4月以降では、倒産に向けて資産が切り売りされていた可能性があるという事です。

グループ間で相当の資金移動をしていたようですし、連帯保証などもあり、全体像の把握は出来ませんが、こういった資産の切り売りなども含めると実際の資金流出は300億円どころではないと考えられます。

東京商工リサーチによると、実質負債は800億円とされておりその全体像は分かりません。
この辺は今後の報道に注目です。

という事で2回に分けて書きましたがそれをざっくりまとめると
①買収前の350億円の資金流出というのは、買収スキームの影響が大きすぎるので語弊を生みやすい。
②買収後の資金流出は、資産の切り売りや債務保証まで含めると300億円どころではない可能性がある。

こんな感じなので、2段階に分けないとニュースが分かりにくいと思い今回は分けて解説をしてみました!

ちなみに、多額の広告費の未払いの影響を受けたサイバーバズ社の純資産は22.6億円→3.2億円へと激減しています。

船井電機の連帯保証があったとはいえ、信用力の低い新規の企業と多額の取引をしてしまう危険性が分かりますから、この辺は自分の事業でも気を付けたいところです。

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